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学園4年目

ゴーレムの呪文の秘密

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ネリネ教授は、やっぱり蒸気機関を知っていた。

「簡単に言いますと、蒸気の力でピストンを動かす装置で、魔石を掘る際に坑道に染み出てくる水を外へ逃がすポンプに利用されているそうです。魔力を使ってはいけない魔鉱石採掘場ならではの道具だと聞きました」

学外研修で鉱山に行ったときに見た装置の事を覚えていて、自然工学の先生に聞いたらしい。
部活の成果が出ていて良かった…。

「なるほど、自然工学の分野じゃったのか」
「そのピストンで魔石の魔力を全身に行きわたらせる…心臓が血液を送り出している感覚ですかね」

ピストン運動を回転運動に変えて歯車回して…って考えると複雑すぎて、とても呪文10個じゃ間に合わない。
ということはどちらかというと巨大ロボっていうより巨人っていうイメージのほうが近い気がする。

「呪文のほうはどうですか?」
「読み方は分かんだけど、イメージがな…」
「とりあえず楽譜に起こしましょう、1つずつ聞かせて貰えますか?」
「分かった、頼む」

ワルド先輩の詠唱と、それを聞きながらふんふん…と楽譜に落とし込んでいくデューイ君。
その作業を見守りつつ、俺たちは役割分担について考える。

「古代魔法でないといけないんだったら、俺とワルドとデューイでやる…ただ、蒸気機関ってもんのイメージが全然湧かないし、魔力量にも自信がない」
「蒸気機関の理解力で言うと、俺とルースと…だけ、か」
「魔力量だけで言うなら、火がヘヴィ、水がカート、土が…儂…じゃな…」

心底歌いたくないらしいおじいちゃん。
最後のほうは声が極小。

「伴奏のデューイ君と詠唱する3人を守る人が必要ですよね…特に土担当」
「そうだな、そこには風属性を揃えたほうがいい」
「でかいのいきなり出てきたらどうしますかね」
「抱えて逃げるしかなかろうな…またホバーか?」
「または気球から詠唱するか…。
 4人乗って、操縦士乗せて、か…
 いけそうな気もしますよね」

そんなこんなと話し合っていると、一通り詠唱は終わったらしい。

「曲のほうは任せてください」

デューイ君がそういってくれたので、俺たちはゴーレム作戦に関わりそうな人たちに声をかけ、蒸気機関のお勉強をすることにした。

***

楽譜が出来たのは夕飯近く。
早い、早すぎる…神童にも程がある。

「既存の曲の部分部分を繋ぎ合わせただけなんですけど」
「全然いいよ!晩御飯食べたらちょっとやってみよう!楽譜読める人で土と火…水はまあ、一曲だし聞いて覚えれば…何とかなるか」
「それなんですけど、ちょっと引っかかる事が…」
「うん?何なに」
「これ、三部合唱になってると思うんです」
「…は?」
「全部、3/4拍子の曲なので…10個とも同じって不思議だな…って。
 ただ3/4拍子の曲自体、珍しくはないので偶然かもしれないんですけど…」
「よんぶんのさんびょうし…」

あの地獄の特訓の日々が蘇る。
つまるところこれは…

「ワルツだな」

ですよねーーーー!!

「1・2・3、1・2・3、1・2・3…」

やーーー!!
無理ーーー!!!

「踊るわけじゃないですから…」
「無理無理無理無理」

国家レベルで「リズム感皆無」の裁定が下ってますからーー!

残念!!

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