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学園4年目

三学期、早々

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「ガーベラ先輩、分からないとこあったら聞いてくださいね?」
「う、うん…頑張る!」

先輩は、休んでいた間の俺のノートと教科書を並べてにらめっこしている。
「需要と供給…」えっそこから?

前途多難さに頭を抱えていると、経済系授業の救世主が現れた。

「あ、ルース、ガーベラ先輩!
 政経初級と経営学入門の過去問持ってきたよ~」
「あ、ありがとうイドラ君!!」
「助かった~!これで何とかなるかも」
「まあこれくらいはね…。
 ルース、殿下が第一砦へ来いってさ。
 ガーベラ先輩に教えるのは俺が代わるよ」
「ん、分かった」

何だろう、何かあったのかな…。

***

第一砦へ行くと、そこには殿下とダンジョン再生計画チームのみんなが揃っていた。

「ルース、シャラパールから緊急の知らせだ」
「えっ、どういう内容です?」
「巨大ミミズの件…どうやら集落に被害が出たらしいんだ」
「えっ!?」

殿下に手渡された手紙を読む。
それによると…

「集落の人間が、消えた…?」
「争った形跡が無いそうだ。そのかわりに地面にはいくつも穴が開いていて、そこから吸い込まれたのだろうと推測されている」

地上に穴を開けて、餌を取る…?

「そうだ、もはや砂漠の外へ出ようとしている」
「…砂漠の雨を待てないんだ、多分」
「どういうことですか…?」
「人を襲うってことは、餌が足りないってことだよ。
 中サイズのサンドワームを駆除しすぎたせいじゃないか…って、言ってる人もいるみたいだけど」

ソラン先輩の言葉が猛烈な不安と後悔になって俺に叩きつけられる。
俺のせい、かも、しれない…?
目の前が暗くなって視界が狭まる。

「…バランスが、狂った…と…」
「まあ、現地の人が言うにはね?
 共食いしてたんじゃないかってことなんだけど」

だけどその言葉にカイト君が反応する。

「う~ん、それにしちゃ数が多すぎるぜ」
「そうなんだよね…共食いしてるんなら中サイズなんて駆除しなくても減ってるはずだからねえ。
 それに、潰したぶんキラーアントやサンドスパイダーの卵なんかは増えてるはずだから…
 本当は多分、別の理由なんだよね」

…別の、理由?
えっ、どういうこと?

「この集落の位置を見ると…」
「うむ、アルテミシアの方ということになるな」
「…単に海を避けてるだけなんじゃ…?」

俺の不安はまだ晴れない。
だけど今度はケンタウレア先生が言う。

「確かにそうかもしれん…だがな、シャラパール地域とアルテミシア地域の間には山岳地帯が拡がっている」
「ああ、4帝国時代の国境、ですね」
「そうだ。地質学の話になるが、あそこには硬い岩盤があって、高名な土魔法使いでもトンネルが掘れんそうだ」
「そう…なんですか」
「魔法発祥の地であるアルテミシアの魔法使いが出来んのなら、相当硬いんだろう…それでもそっちを目指すというなら、目的はアレじゃないか?」

ケンタウレア先生の言葉に、ソラン先輩が頷く。

「そう、魔力溜まりです。
 アルテミシアの魔石はほぼ魔生物由来、というくらい種類も数も多いそうです」
「餌の宝庫だな」
「それを目指して穴を掘る、と…?
 あいつならやるかもしれない、ってことですか」
「うん、体が大きくなりすぎて生命を維持するための魔力すら不足しはじめてるんだ、多分」

ディー兄がぽつりと言う。
「だから、人を喰う、のか…?」

山岳地帯のふもとには雪解け水が湧きだしているオアシスがいくつもあって、シャラパール地域で最も人口が多い。
ウィン兄が言う。
「岩盤の手前には水も餌もたっぷり、ってことか…」

そして殿下が俺の目を見て、言う。

「この書簡によれば、一帯に兵士を派遣して昼夜問わず見張っているそうだ。サンドワームの出現を押さえる魔道具はもちろん、墜落防止用の魔道具を転用し対策に当てながら、な」
「あ…そうか、あれ、強力な風魔法が仕込まれてるから…!」

俺、役に立つ魔道具も同時に送っていたんだ。
その言葉に少し救われた気がした。

「王宮にも知らせが入っている。
 近衛騎士団数名と、近衛魔法師団からを派遣することになった」
「魔法師団から一個師団…」
「お前が考えている通りだ」

つまり、魔王ヘヴィさんが出る、と。

「最終手段は「何もかも焼き払う」だ」
「…せめて、砂漠の真ん中なら、安心できたんですがね…」

なんてこった。
作戦を何重にも張らなきゃ間に合わない!

「すでに属性魔法研究室長5名は出立した。
 ガーベラとイドラは今回置いて行く。
 ガーベラはノースの希望で、イドラはアイリス家の希望で、だ」
「…一人っ子ですもんね、イドラ君」

そうか、死ぬかもしれないんだもんな。
良かった…ユーフォルビアの知を引き継いどいて。

ハーブの事は、薬学の2人に。
性関連は、庭師トリエステと執事リチャードに。
お菓子のレシピは神官長に…

「あっ」
「どうした」
「もしかして、ルディ君とデューイ君も来ます?」
「…ああ」
「当然、おじいちゃん先生も来ますよね」
「もちろんだ」

歌、演奏、そして…膨大な魔力!!

「まだ、おじいちゃんいますよね?」
「いるな」
「武術棟、行ってきます!」

そうだ、あれがもし成功すれば…!
走れ、俺!!
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