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学園4年目

なぜうちに泊まる 2

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お迎えの馬車にお客人の皆様と乗り込んで王宮へ。
最低限の揺れと共に運ばれた先は…

「正門だな」
「正門ですね…」

つまりアンジャベル卿とクリビアさん一家、薬学のブレティラ教授と助手のシーマさんを正式な客人として王家がもてなすということだ。

ヤバい。

アンジャベル卿とクリビアさんは謁見の時のままの服だけど、俺はシャツにチノパンだし、子どもたちはすでにお着替えして普段着だ。
おまけに薬学の2人はうちに来てから風呂に入った形跡がない。

服装以前の問題である。

「ルース様、お帰りなさいませ」
「あ、只今戻りました」
「殿下がカフェテリアでお待ちです、このまま馬車でお進みください」
「ありがとうございます」

良かった、ここで降りなくて済む…

「アンジャベル様とクリビア様はこちらでお降りください」
「ああ、構わん」
「2人とも、ルースさんのいう事をちゃんと聞いて、良い子にするんだよ」
「「はい!」」

あっ、そういうことか。
理解した。

***

ブレティラ教授と助手さんを風呂へ直行させ、子どもたちを正装させ、俺も正装を整え、殿下と側近ズ(アレクさん・ウィン兄・ディー兄)と一緒に王宮の一番大きいダイニングルームへ向かう。

宮中晩餐会というやつだ。
表向きは「冒険者ギルドの重鎮を歓待する」ためのものだが、学園からやってきた皆に加えて「ちゃんとした陳情」を持ってきた貴族の方々も参加することになったために会場はぎゅうぎゅうだ。

俺は殿下の横でお行儀よく飯を食いながら、正面のおじいちゃん先生から今日やったことの話を聞く。

「砂漠で水魔法を使う際の魔力節約の方法についてなんじゃがな、モローの計算では『水の樽を運ぶ方がコストがかかる』と言うんじゃ」
「そうなんですか?風魔法で湿った空気をどこかから運ぶほうが楽?」
「そうですね、運ぶ水の量にもよりますけど、馬車2台以上使うとなると馬にかかるコストが大きくなりますので、魔法使いを派遣するほうが安上がりです」

あー、なるほど。
馬が飲む水は人間よりも多いから、その分の水もってなると馬車が余計に増えてっちゃう計算になるのか…
そういやこの世界、ラクダいないのかしら。

「まあ、どのくらいの水が空気中にあれば良いのかにもよるがの。
 儂らの見解としても、水の樽を運んで砂漠に撒いて蒸発を待つというのは時間以上に労力を使いそうじゃな、と」
「ああ、水を撒くのも魔法になるのか…。大きな鍋を用意してぐつぐつやるわけにもいかないし」

ただ、湿った空気だとどのくらい水が使えるかが分からないのが不安だよな…。

「水を直接魔力で操れないもんですかね」
「うん?」
「空気中の水分子に働きかけるんじゃなくて、液体の水を直接魔法で…何か方法無いですかね?
 それが出来ればミルクから水分だけを取り出して粉にしたりも出来そうじゃないですか。
 そしたらおっぱいが出なくて困ってる人たちの助けにもなるかな…って」
「…ほほう?」

イドラ君の目がキラリと光った。
俺はその隣にいるソラン先輩に聞いた。

「水辺にいる…アクアネス、でしたっけ?水と魔石で出来てる魔物、居ましたよね」
「うん、まあ水と魔石だけかと言われるとそうでは無いんだけどね」
「まあ細かい事はさておき、だったらアクアネスから採れる魔石で何とかなりませんかね」

するとその隣のビスカリア教授が言う。

「また魔石工学か?それとも古代?」
「何?呼んだ?」「呼びました?」

ネリネ教授とマグノリア教授が返事をする。
いやまだ何も呼んでいませんが?
すると猛烈な勢いでステーキを食べていたおじいちゃん先生が言った。

「今呼ぼうとしたところじゃ!すぐにサロンへ移動して話を…ルース、早う飯を終わらせんか」
「ええっ、さっきメインが来たとこなのに?」
「お祖父様、客人もおられるのですから、ルースを連れて行くのはなりません」
「むう…」

不服そうなおじいちゃん。
まったく、研究となったらどうしてこうもタガが外れちゃうんだろうな…
あっ、そういえば!

「殿下、朝と昼はともかく、俺の家に宿泊している方々の晩御飯だけでも王宮で何とかなりませんか」
「ん?何の話だ」
「それが…」

俺は殿下にアンジャベル卿やクリビア一家が「充実した会議」のため俺の家に宿泊することになった事と、増えたお客に対応する為にも俺も今日から実家へ宿泊(?)する事をお伝えした。
すると殿下は、

「ならば王宮から食材の融通と、料理人も含め数名を派遣しよう。
 俺もそちらへ泊れば問題なかろう」

と言った。
なぜ殿下が泊れば問題ないのかは分からないけど、問題は解決したようだ。

細かい事は後で考えよう…
今はステーキに集中だ!
やっぱ牛肉うめー!!

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