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学園4年目

夏休み ※微

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授業に昼食会(という名の討論会)に部活と、忙しく過ごしているうちに1学期は終了。
終業式が終わるやいなや殿下に俵担ぎスタイルで運ばれて、いつもの馬車へ放り込まれた。
すでに御者の近衛さん2人はスタンバイ済み。
いつの間に呼んだんだろう…もしかしてこの人たちも影さんなのかなあ。

「出せ」

殿下が馬車に片足をかけながら言い、すぐに馬車は動き出した。
まるで逃亡劇だ。

「殿下、急に、何で」
「デューイ達のことはモローに頼んである。楽器の運搬もあるからな」
「あ、いや、その」
「薬学にはディーが連絡を入れた。
 部屋にある荷物は影に頼んである」
「…でんか?」
「少し遠回りで帰る。王宮に着くのは1週間後だ」

そう言うと、殿下はいつものように馬車の座席をフルフラットに変える。
驚いてひっくり返っている俺の上にそっと圧し掛かり、耳元で囁く。

「1週間、お前は俺だけのものだ」
「…うん」
「だから、この1週間は俺のことだけ考えろ」
「…うん」

肯定以外の返事なんて聞く気が無い殿下と、頷く以外に思いつかない俺。

自然と合わされる唇。
外されるシャツのボタン。
ベルトのバックルがかちゃかちゃいう音。
熱い吐息と、甘いうめき声、それから…

「愛してる、ルース」
「うん、おれも…アルのこと、好き」

愛を確かめ合う言葉。
お互いがお互いの成分を補おうとしているんだ。
いつもするように、アルは俺の乳首を口に含んだ。
もう一方にも指先が触れて、円を描く。

「あ、は…ぅ、アル…、ゆっくり、して…」
「…どうして?」
「できるだけ、ながく、アルのこと、かんじてたい…から…」
「分かった」

優しい、緩やかな触りっこがいい。
イったりイかされたりだけが、愛しあう方法じゃないから。

「ん…、ね、アル…」
「うん、どうした?ルース」
「あいしてる」
「俺もだ」

キスも、軽めのをたくさんがいい。
いつも濃厚なのばかりじゃ疲れちゃうから。

***

「…着いたぞ、ルース」ちゅっ。
「う…ん…あ、ほんとだ、おみせ…」

殿下の声とキスで目を覚ます。
馬車はいつの間にか殿下の部屋はなれの前に着いていた。
イチャイチャしてる間に寝落ちしてたらしい…急いで服を整える。

この一週間、俺と殿下は王都周辺の街でデートをして、馬車移動して、またデートして…を繰り返した。
宿は取らずに車中泊だ。風呂が恋しい。

「…頭から異臭がする…」
「ふむ、清拭だけでは限界があるか…もう少し工夫がいるな」
「大自然の中なら、桶とタオルがあれば何とかなりますけどね」

湯は魔法で何とか出来るから、体を擦って湯を掛けるのは出来る…

「あっ」
「どうした?」
「組立式シャワールームは?
 四方を布で囲って、下にすのこ引いて、お湯を出せる魔道具…で、シャワーヘッド…」
「なかなかのアイデアだな」
「ただ、街中だと結局場所が無いか…。銭湯やサウナがあればなぁ」

なんて話をしながら、馬車を出ると…

「お、ようやく来よったな」
「待ってたっすよ師匠」
「「お待ちしておりました殿下」」
「お帰りなさいませ、わが君」
「「「お帰りなさいマセ、ワガキミ」」」
「その、私のわが君は、エルだけなので…」
「もう!ジョンったら!」

そこには魔法馬鹿4人+ジョンさん、アレクさん・ウィン兄・ディー兄の側近3人衆、イドラ君とソラン先輩が。

「殿下が王宮に戻られるのに、側室が外でウロウロするのも問題かと思いましてね」
「エルが行くなら共にどこへでも行くのが務めですから」
「あと、ジョンさんも側室ですしね」
「ごめんねルース君、黙ってて…僕、カートと一緒に側室になって後宮に入れてもらうことにしたんだ」
「ぼ、僕はだね、枠のあるうちに、実績を作ろうって…イドラ君が」
「だって…無駄遣いプリムラ公爵の口利きに金を払うの、どう考えても損しか無くない?」

もー、またいつものアレだな…?
もう慣れてきたけど。

「後宮はホテルじゃないんですから…」
「仕方なかろう、そこがこの離れに一番近いんじゃもん」

つまり今年の夏の学外研修は、

「王都だけでなく、王宮の中まで開放頂いて、実地で国政を学べるとは…!ありがとうございます!」
「はっ?!テナチュールさまっ!?」
「ルースさん、僕の事は「フィーデ」と」
「いやいやいやいやいや」

ちょっと待って!!
こんなニューカマー、予想しとらんで!?

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