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学園4年目

簡単じゃない薬学

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何度目かの薬学の授業で、俺はついに教授に魔力回復薬の可能性について尋ねた。

「魔力が回復する薬…?」
「ええ、あれば助かるな~と思いまして…。
 そういう薬草って無いんですかね?」

ダンジョンに生えている薬草なんかは、魔力吸ってそうだけど…どうなんだろう。

「は~…魔力、魔力か…。
 現時点で魔力の抽出方法はありませんので、やるとすればそういう薬草を生で食べるとかになりますかね…」
「ということは、ダンジョンに自生する野草や薬草を食べてみれば分かるんですね」
「は?」

いざとなったら光属性上位魔法サンライトヒール(回復、毒消し)で何とかしよう。

「ってことで、気合い入れて光魔法の練習するかなあ…」

すると、薬学の教授と助手さんが声を荒らげた。

「まさか…自分の身体でお試しになると!?」
「はあ、そうですが」
「「絶対に駄目ですっ!!!」」

えー、何でよ?

・・・

薬草は、状態によっても薬効が変わるらしい。
乾燥させて粉にして飲むのが一般的だけど、生で油に漬けたり酒に漬けたりして成分を抽出したりもするし、生だと大抵強い殺菌作用がついてくるので、食中毒なんかだと生の薬草汁を処方するそうだ。

「だから畑があるんですね」
「ええ、緊急時に備えております」

なるほど、あそこは学園の薬箱みたいなもんなんだな。
うんうん…と1人納得する俺に、助手さんが面白い事を教えてくれた。

「そういえば、黒いマルムラソウはダンジョンにしか生えないんですよ」
「そうなんですか?」
「株を採取して畑に植え替えると、緑になるんです。
 それでも、頭痛に効くという薬効は同じでして…ここでも育てているんです」
「そうだったんですか!気づかなかったなあ…」

あっ、もしマルムラソウがそうなら…

「駄目ですよ!?絶対に食べちゃ駄目ですよ!!」
「じゃあ、茹でてスープにしたら…」
「やめてください!何で食べようとするんですか!?」
「だって、魔力回復…」
「「寝れば治ります!!」」

う~ん、まあ、そうなんだけど…

「あっ」
思い出した。
「もう!だから」
マグノリア教授の話。
「人間の肉を食べると魔力が回復するって」
「はあああ!?」
「ちょ、ルー!?何を言い出すの!!」
「師匠、正気か!?」

みんなが大騒ぎになる。
んもー、誰も食べるとは言ってないじゃん!

「歴史学か考古学…人肉食からの魔法だから、丁度どっちも噛んでる感じかな…。
 アルテミシア地域のホスタって国が魔法の発祥地って言われてるんですけど、そこにそういう儀式をしてた遺跡があるんですって」
「アルテミシア!?シャラパールの向こう側じゃないか!!」
「そうですけど…ホスタには6番目の兄が嫁いでますから、未知の国ってわけでもないですし」
「ユーフォルビアの人脈が広すぎる」

さっそく歴史か考古学かへ聞きに行ってみようという話になり、今日の授業は終了。
一応みんなに釘をさしておこう…カニバリストだと思われちゃかなわんからね。

「ほんで、食べてみたいのは人肉じゃなくて魔物の肉なんですけど」
「「「絶対に駄目!!!」」」

え~、何でよ!?
ダンジョンで食料無くなった時に便利やん!

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