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学園3年目

3学期ですよ!

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3学期。

殿下と俺が15歳になるまであと1ヶ月ほど。
つまり婚約発表まであと1ヶ月ほどである。

俺と殿下は誕生日が2月で、殿下は14日、俺は16日と大変近いのだ。きっと、かつて当て馬として生まれてきた名残だろうな…と思う。

残念ながら、世間的には当て馬になるどころか穴馬になったり悪役令息になったりとキャラ設定がグズグズになっているのだが…。

今日はトレッドさんが今まで発行された「婚約者ダービー」関連の記事が載った雑誌をしこたま集めて持ってきてくれたので、みんなに内容ごとに分ける作業を手伝ってもらっている。


エルさまがある雑誌を手に言う。
「ええ~、未だにこういう記事があるんですか?
 もー、私がアルファード殿下とクリスマスに愛を交わした…なんて捏造記事、誰が書くんだか」

それに対してトレッドさんがフォローする。
「書かされてるパターンもありますからね~」

ジョンさんは嘆かわしいとため息をつく。
「エルをローズ王家へ輿入れさせるために多額の資金が動いたと聞いていますから、今更引き下がれない方がいらっしゃるんでしょうねぇ」

ワルド先輩は世の中に意味のないものあったわ…
と前置きして呆れた声で言う。
「これ今年の秋の?俺とルディが新キャラ登場みたいになってんだけどこれ何?どういうこと?」

ケンタウレア先生も納得はいかないが…
と前置きしてから言った。
「学園の外で殿下と一言でもしゃべったらこうなるんじゃないか?…ほら」

去年の巨大サンドワーム退治の後に出た雑誌に、カイト君とルディ君が目を丸くして驚く。
「ええーーーー!ケンタウレア師が!?」
「えっ、でもでも、えー!?」
ケンタウレア先生は悲しそうに呟く。
「やつら既婚者でもお構いなしでな…これのせいで未だに伴侶ハニーが冷たいんだ……」
「「ハニー」」

ハニー…ハニーか…
ちょう似合わないな。

「でもやっぱり俺を悪く書く記事は多いですね。
 特に最近は『淫蕩~とか淫乱~とか言っとけばいいんだ!』みたいな開き直りが酷くないです?
 お、『ルース・ユーフォルビアの遍歴は異常!咥え込んだ男は100人以上!?』だって…これは若干オリジナリティー出してきてるな…ラップみたい」

すると、カート君が心配そうに聞いてくれた。
「あの、ルースさん、…大丈夫ですか?」
「あー、あのときは本当…初めての事でパニックになっちゃって、ごめんね…心配かけて」

あれ以来俺も妙に図太くなって、多少のことじゃ動じなくなったというか…

「周りが平常運転だからかなぁ…市場でも普通だし、学園でも普通だし、研究者の方々とはむしろ最近お付き合いの幅が拡がってるし…」

すると、何かの用事で砦へきたはずが作業に巻き込まれてるデューイ君が言った。
「音楽でも作曲家と曲は切り離して評価するのが普通ですし、研究者の方も成果と研究者を切り離して評価してるんじゃないですかね?」

するとイドラ君も言った。
「借金~とか貧乏~とか守銭奴~とかいう記事が、うちが後ろに付いたって情報が流れたとたん消えたからさ、信憑性が薄れたのかもねー。
 ほら、俺のこのインタビュー記事!ここにちらっとね、ルースとの関係を匂わせといたんだ。
 これ以降、経済事情関連の記事がほぼ出なくなってると思うんだけど…」

するとおやつに釣られてやってきたソラン先輩がその記事を声に出して読む。
「えっどれどれ?『彼とは良好な関係を続けていきたいと思っています』…って、これだけ?」
「ええ、これだけ残ってれば後は業界内で一気に拡がるんで…切り落とした部分がね」
「ヒェッ」

イドラ君、メディアまで操るとは…
アイリス商会、安泰すぎるな。

トレッドさんが言った。
「新聞は、ルースを落とすんじゃなくて他を持ち上げる手法が使われてるな」
「確かに、俺の名前が出た記事がほぼ無いですね」
「ルースの認知度だけを下げて人気を無くそうって作戦だな。…多分。それにこれなら正式発表があった後でも波風が立たなくて済むし。…と思う。うん」
「そうなんですねぇ」

ヘザー先輩が言った。
「かたや雑誌の方は、ジャンルにもよりますけど…こういう破廉恥なものは特にめちゃくちゃですね」
「ルースが次々に童貞を食いまくる小説が連載されちゃってるやつあるくらいだからなぁ…」
「はあーーー!?」

これは一度話をしに行かねばなりませんな!

憤る俺を見て殿下はクスリと笑い、言った。

「さて、一旦の分類は終わったか…
 いちいち反論するのも面倒だが仕方あるまい。
 談話とはそういうものだからな」

婚約発表談話が発表されるまで、あと1ヶ月。

「過去最長になりそうじゃのぉ」

おじいちゃん先生が他人事のように言った。
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