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学園3年目
とんでもない贈り物
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「というわけで、宜しく頼む」
「ええ、なるべく早く…草案が出来次第、またクリビアさんを通じてご連絡します」
冒険者ギルドとの会談は多岐にわたり、
①最近のダンジョン管理と運営の諸問題
②魔生物学の講師の育成
③「盾」専用魔道具の開発と実用化
④属性付与魔法の指導員の育成
⑤神殿の誘致
⑥冒険者を辞めた人への職業斡旋
等々…。
急遽関係しそうな人々を呼んできてあれやこれやと話し込んだ。
結構色んな問題を抱えているもんだな~なんて言ってられない。
特に①。
ぶっちゃけて言うと「管理も運営もギルドに丸投げしているのにちゃっかり税金だけは頂こうとする貴族をどうにかしてもらいたい」ってことで、なんと困った奴らの実名入り陳情書を貰ってしまった。
これには次期国王と前国王が大激怒。
「一度全部回ってみんといかんのう…こういうときに王家お抱えの冒険者なんぞおれば良いのじゃが」
というので、前世だとSランク冒険者が国からの依頼でどうこう…って小説で読んだな~と思ってそれとなく聞いてみたら、ランク付け自体ないそうで。
「仕事の難易度を見分けるのも本人の実力のうち…ということで、そのようなことは行っていません」
とのこと。
いや、そこまで厳しくしなくても!
何せ「有名な冒険者」になるためには魔物の大発生で活躍するか大きな魔獣を討伐するかしかない。
魔物の大発生は起きない方がありがたいしそうそう起きる事でもないので、そうなると魔獣討伐一択。
人生逆転を賭けて挑戦して死亡…というのはよくあることだそうで、統括さんも
「魔獣に餌をやっているようなものだからな…
変えられるものなら変えたほうが良かろう」
と言うしで、言い出しっぺの俺が草案を纏めて今度提案することになったのだ。
また仕事増えちゃったな…ま、いっか。
試験も無いしね。
「さて、次は娼館の支配人さんと元締めの人か」
「そうっすね、別のお部屋でお待ちっす」
アレクさんの不自然な敬語も「~っす」で落ち着いたらしい。
「合間のおやつ…食べたかったっす」
「まあ、今度の新年会に呼んで欲しいっていうだけですし、それほど長くはならないと思うから…」
「本当ですか?」
あ、疑ってるな?
***
「じゃあ新年会でまた」
「ええ、それまでに新業態の件を…」
「分かった、それとなく情報を流しておく」
「宜しくお願いします」
結局色街関係のほうも、
①一部貴族の目に余る行いについて
②公衆衛生について
③医療へのアクセスの悪さ
④病気に対する基礎知識について
⑤娼夫引退後の生活について
等々の問題が提起され、当然俺のほうからも「サウナや風呂と一体化したサービスで不潔な客を減らす」という提案もしたためになかなかのボリュームになり、急遽参加者の中から行政学の教授やら衛生学の教授、医療関係に詳しい人などを呼び出して会議に。
なんとうちの色街、「本番行為」以外のサービスが皆無という絶望ぶり。
本番無しでお安くヌいてくれるだけのサービスだって需要があると思うんだけど…。
それにジャンル、というか、例えば「SMクラブ」だとか「デブ専」とか「老け専」とかがないのだ。それじゃ男の子たちだってどの店で働けばいいのか分かんないし、客も困る…という話をすると意外と乗り気で。
「確かに、客が求めるものがある程度絞り込めていたほうがこっちも助かる」
だそうだ。
うちは不本意ながらそっちの世界でも有名なので、「ユーフォルビアに伝わる性技」だと言えば食いつきも良いだろうとのこと。サービス指導の件は、うちの庭師と執事に聞いてみよう…毎日外でアンアンしてるんだから大丈夫だろ、多分。
「結局、もう夕方になっちゃいましたね」
「仕方ないよ…一部貴族が全部悪い」
そう、結局①が一番時間食うんだよ。
俺には言いやすいからかもしれないけど、もうちっちゃなことから大きなことまでびっしり書面に起こしてきたのを渡されたのにはびっくりした…しかもこれまた実名入りで。
「これ…がっつり弱み握っちゃってません?」
「どえらいクリスマスプレゼントっすね」
「…この書面は、そのまま王家で預かろう」
「こりゃまた…素晴らしい名簿じゃのう」
次期国王と前国王が同じ顔でニヤリ…と笑う。
隔世遺伝ってやつかしら?
「とりあえず、うちの執事と庭師に手紙出しとかないと…」
「当然だ、お前が直接指導することは許さん」
「そんな!当たり前じゃないですか!!」
そもそも経験が無いのに出来ない…
というセリフは、心にギュムっとしまい込む。
冗談にならないことは言わない主義だし。
俺は殿下の不機嫌を直すために言った。
「俺の身体は殿下の所有物ですから、ね」
「は、何を言っているんだ?ルース」
あ、あれ?なんでご機嫌が直らな…
「身体以外も全部俺のものだ」「ふぇ」
むちゅっ…ちゅうぅ…ちゅぅ…
「んんーーー!!」
結局こういう事になるんかい!!
人前は嫌だってあれほど…
馬鹿っ。
「ええ、なるべく早く…草案が出来次第、またクリビアさんを通じてご連絡します」
冒険者ギルドとの会談は多岐にわたり、
①最近のダンジョン管理と運営の諸問題
②魔生物学の講師の育成
③「盾」専用魔道具の開発と実用化
④属性付与魔法の指導員の育成
⑤神殿の誘致
⑥冒険者を辞めた人への職業斡旋
等々…。
急遽関係しそうな人々を呼んできてあれやこれやと話し込んだ。
結構色んな問題を抱えているもんだな~なんて言ってられない。
特に①。
ぶっちゃけて言うと「管理も運営もギルドに丸投げしているのにちゃっかり税金だけは頂こうとする貴族をどうにかしてもらいたい」ってことで、なんと困った奴らの実名入り陳情書を貰ってしまった。
これには次期国王と前国王が大激怒。
「一度全部回ってみんといかんのう…こういうときに王家お抱えの冒険者なんぞおれば良いのじゃが」
というので、前世だとSランク冒険者が国からの依頼でどうこう…って小説で読んだな~と思ってそれとなく聞いてみたら、ランク付け自体ないそうで。
「仕事の難易度を見分けるのも本人の実力のうち…ということで、そのようなことは行っていません」
とのこと。
いや、そこまで厳しくしなくても!
何せ「有名な冒険者」になるためには魔物の大発生で活躍するか大きな魔獣を討伐するかしかない。
魔物の大発生は起きない方がありがたいしそうそう起きる事でもないので、そうなると魔獣討伐一択。
人生逆転を賭けて挑戦して死亡…というのはよくあることだそうで、統括さんも
「魔獣に餌をやっているようなものだからな…
変えられるものなら変えたほうが良かろう」
と言うしで、言い出しっぺの俺が草案を纏めて今度提案することになったのだ。
また仕事増えちゃったな…ま、いっか。
試験も無いしね。
「さて、次は娼館の支配人さんと元締めの人か」
「そうっすね、別のお部屋でお待ちっす」
アレクさんの不自然な敬語も「~っす」で落ち着いたらしい。
「合間のおやつ…食べたかったっす」
「まあ、今度の新年会に呼んで欲しいっていうだけですし、それほど長くはならないと思うから…」
「本当ですか?」
あ、疑ってるな?
***
「じゃあ新年会でまた」
「ええ、それまでに新業態の件を…」
「分かった、それとなく情報を流しておく」
「宜しくお願いします」
結局色街関係のほうも、
①一部貴族の目に余る行いについて
②公衆衛生について
③医療へのアクセスの悪さ
④病気に対する基礎知識について
⑤娼夫引退後の生活について
等々の問題が提起され、当然俺のほうからも「サウナや風呂と一体化したサービスで不潔な客を減らす」という提案もしたためになかなかのボリュームになり、急遽参加者の中から行政学の教授やら衛生学の教授、医療関係に詳しい人などを呼び出して会議に。
なんとうちの色街、「本番行為」以外のサービスが皆無という絶望ぶり。
本番無しでお安くヌいてくれるだけのサービスだって需要があると思うんだけど…。
それにジャンル、というか、例えば「SMクラブ」だとか「デブ専」とか「老け専」とかがないのだ。それじゃ男の子たちだってどの店で働けばいいのか分かんないし、客も困る…という話をすると意外と乗り気で。
「確かに、客が求めるものがある程度絞り込めていたほうがこっちも助かる」
だそうだ。
うちは不本意ながらそっちの世界でも有名なので、「ユーフォルビアに伝わる性技」だと言えば食いつきも良いだろうとのこと。サービス指導の件は、うちの庭師と執事に聞いてみよう…毎日外でアンアンしてるんだから大丈夫だろ、多分。
「結局、もう夕方になっちゃいましたね」
「仕方ないよ…一部貴族が全部悪い」
そう、結局①が一番時間食うんだよ。
俺には言いやすいからかもしれないけど、もうちっちゃなことから大きなことまでびっしり書面に起こしてきたのを渡されたのにはびっくりした…しかもこれまた実名入りで。
「これ…がっつり弱み握っちゃってません?」
「どえらいクリスマスプレゼントっすね」
「…この書面は、そのまま王家で預かろう」
「こりゃまた…素晴らしい名簿じゃのう」
次期国王と前国王が同じ顔でニヤリ…と笑う。
隔世遺伝ってやつかしら?
「とりあえず、うちの執事と庭師に手紙出しとかないと…」
「当然だ、お前が直接指導することは許さん」
「そんな!当たり前じゃないですか!!」
そもそも経験が無いのに出来ない…
というセリフは、心にギュムっとしまい込む。
冗談にならないことは言わない主義だし。
俺は殿下の不機嫌を直すために言った。
「俺の身体は殿下の所有物ですから、ね」
「は、何を言っているんだ?ルース」
あ、あれ?なんでご機嫌が直らな…
「身体以外も全部俺のものだ」「ふぇ」
むちゅっ…ちゅうぅ…ちゅぅ…
「んんーーー!!」
結局こういう事になるんかい!!
人前は嫌だってあれほど…
馬鹿っ。
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