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学園3年目

クリスマス前のひと働き

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「…すいません、僕っ」
床に膝をついて頭を下げるミゼさん。
「いやいや、正気に戻れて何より」
ベッドに正座している俺。
「全くだ、戻らねば死罪にするところだったぞ」
物騒なことを言う殿下。
「「何の罪で!?」」
当然のツッコミをするイドラ君とジュリさん。

ミゼさんは正気に戻った。
普通の洗脳のほうも、ショックで抜けたみたい。

「…僕、この仕事してるけど、童貞で。
 ジュリはタチもしてたのに、僕はネコばかりだったから…何だかずっと負けた気分だったんです」
「つまり童貞を拗らせたという事だな」
「身も蓋もない言い方!!」

すると、ジュリさんがとんでもないことを言い出した。

「何だ、そんなの早く言えよ!今晩ヤっとく?」
「えええ!?」
「いいの…?ジュリ…」
「いいよ。お前の童貞、俺に寄越せ」

なんじゃこの男前はー!!

「ジュリ…僕、その、下手かもしれないけど」
「童貞なんてそんなもんだろ、気にすんな」
「…ジュリ…」

ジュリさんにしなだれかかるミゼさん。
もう完全に2人の世界…。

俺たちはそっと部屋を辞した。

***

「スーパー攻様の閨係はスーパー受様だった…」
「何を言ってるんだお前は」
「あ、いやいや独り言です。
 …それよりこの後の調査ですけど」

この話の発信源はジュリさんなんだけど、あの様子じゃちょっと聞けないよな。

「どこの店の事だか分からないんじゃなあ…」
俺のつぶやきに支配人さんが反応した。
「特にどこの店ってわけじゃなく、そういうお店もあるんだよ…っていう私の話を覚えてたみたいで」
「はい?」

支配人さんの話によると、ジュリさんがここに来た最初の頃に「本気を出させようと」そういう話をしたそうで…

「この店のNo.1は必ず学園に派遣されるので、そうしたらこの街の窮状を訴えることも出来る、って…
 単純に焚きつけてしまいました」

支配人さんはしょんぼりと反省している。

「うーん…でも全くの嘘でもないんでしょう?」
「それは、ですが…その、付き合いというか…経営してる組織同士の色々がですね」
「あ~…ね」

ん~、難しいな。
でもこの街の衛生をほっとくわけにもいかないし…

「はっ!」
「ん?何か作戦があるのか?」

そうだ、俺はすっかり自分の使命を忘れていた。

「スライムと風呂、そして…サウナ」
「……は?」
「要は衛生管理ができて且つ儲かる業態の提案」

全員が「なんのこっちゃ」という顔をする。

俺は支配人さんに聞いた。
「このへんのお店の経営者の方が一同に会するってことはないんですか?」
「あ…えっと、無くは、無いです…新年会っていう名目で、情報交換などを…」
なんだ、そんな都合のいいものがあるんじゃん。
「じゃあそれに合わせてリサーチしましょう。
 ただ俺たちがホイホイ来るわけにもいかないんで、詳しい情報はアイリス商会から買う…しかないかな」
そういうと、イドラ君が驚いた声を出す。
「えっ、うち、お金貰えるの!?金出せって話じゃ無くて?」
「そんな、旨味もないのに金出せって…そんなんただのタカリじゃん。
 あ、でもお安くしてくれる?
 出来れば、俺のホバー台車とホバーボードの取り分内で収めて貰えると」
「うん、分かった…努力する」

おお、やったぜ。

「ルース、調査はどうする?」
「えー、街全体の様子を視察しつつ、気になる店には立ち入る感じで…。
 あ、支配人さん!
 周辺のお店に人を遣って『国から視察が来てる、抜き打ちで調査もあるかも』って伝えて貰えますか」
「ええ!?いいんですか?」
「駄目って言ってもするでしょ?
 その代わり、何でかって聞かれたら「貴族からタレコミがあったらしい」って言っといてください。
 それならこの店が真っ先に抜き打ち調査に合うことにも違和感無いし、犯人探しも過熱しないかと」

俺がそこまで話すと、殿下が呻くように言った。
「…ここで「貴族」を使う、か」
「そりゃ使いますよ!
 貴族側も自分たちに正義感があることをアピールできますし、なんてことはないでしょ…まあ、勝手にどこの家かの推測が始まるでしょうけど」
「噂はこっちで操作すればいいということだな」
「ですです」

というわけで何となく作戦は決まったな。

「じゃあ、俺と殿下は10分後にここを出るんで…イドラ君、どうする?」
「一緒に行くよ。この街の連中とやり合える家なんてうちぐらいだからね」
「お~、頼もしい」

さー、お仕事お仕事!
クリスマスパーティーまでには間に合わせよう!
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