174 / 586
学園3年目
クリスマス前のひと働き
しおりを挟む
「…すいません、僕っ」
床に膝をついて頭を下げるミゼさん。
「いやいや、正気に戻れて何より」
ベッドに正座している俺。
「全くだ、戻らねば死罪にするところだったぞ」
物騒なことを言う殿下。
「「何の罪で!?」」
当然のツッコミをするイドラ君とジュリさん。
ミゼさんは正気に戻った。
普通の洗脳のほうも、ショックで抜けたみたい。
「…僕、この仕事してるけど、童貞で。
ジュリはタチもしてたのに、僕はネコばかりだったから…何だかずっと負けた気分だったんです」
「つまり童貞を拗らせたという事だな」
「身も蓋もない言い方!!」
すると、ジュリさんがとんでもないことを言い出した。
「何だ、そんなの早く言えよ!今晩ヤっとく?」
「えええ!?」
「いいの…?ジュリ…」
「いいよ。お前の童貞、俺に寄越せ」
なんじゃこの男前はー!!
「ジュリ…僕、その、下手かもしれないけど」
「童貞なんてそんなもんだろ、気にすんな」
「…ジュリ…」
ジュリさんにしなだれかかるミゼさん。
もう完全に2人の世界…。
俺たちはそっと部屋を辞した。
***
「スーパー攻様の閨係はスーパー受様だった…」
「何を言ってるんだお前は」
「あ、いやいや独り言です。
…それよりこの後の調査ですけど」
この話の発信源はジュリさんなんだけど、あの様子じゃちょっと聞けないよな。
「どこの店の事だか分からないんじゃなあ…」
俺のつぶやきに支配人さんが反応した。
「特にどこの店ってわけじゃなく、そういうお店もあるんだよ…っていう私の話を覚えてたみたいで」
「はい?」
支配人さんの話によると、ジュリさんがここに来た最初の頃に「本気を出させようと」そういう話をしたそうで…
「この店のNo.1は必ず学園に派遣されるので、そうしたらこの街の窮状を訴えることも出来る、って…
単純に焚きつけてしまいました」
支配人さんはしょんぼりと反省している。
「うーん…でも全くの嘘でもないんでしょう?」
「それは、ですが…その、付き合いというか…経営してる組織同士の色々がですね」
「あ~…ね」
ん~、難しいな。
でもこの街の衛生をほっとくわけにもいかないし…
「はっ!」
「ん?何か作戦があるのか?」
そうだ、俺はすっかり自分の使命を忘れていた。
「スライムと風呂、そして…サウナ」
「……は?」
「要は衛生管理ができて且つ儲かる業態の提案」
全員が「なんのこっちゃ」という顔をする。
俺は支配人さんに聞いた。
「このへんのお店の経営者の方が一同に会するってことはないんですか?」
「あ…えっと、無くは、無いです…新年会っていう名目で、情報交換などを…」
なんだ、そんな都合のいいものがあるんじゃん。
「じゃあそれに合わせてリサーチしましょう。
ただ俺たちがホイホイ来るわけにもいかないんで、詳しい情報はアイリス商会から買う…しかないかな」
そういうと、イドラ君が驚いた声を出す。
「えっ、うち、お金貰えるの!?金出せって話じゃ無くて?」
「そんな、旨味もないのに金出せって…そんなんただのタカリじゃん。
あ、でもお安くしてくれる?
出来れば、俺のホバー台車とホバーボードの取り分内で収めて貰えると」
「うん、分かった…努力する」
おお、やったぜ。
「ルース、調査はどうする?」
「えー、街全体の様子を視察しつつ、気になる店には立ち入る感じで…。
あ、支配人さん!
周辺のお店に人を遣って『国から視察が来てる、抜き打ちで調査もあるかも』って伝えて貰えますか」
「ええ!?いいんですか?」
「駄目って言ってもするでしょ?
その代わり、何でかって聞かれたら「貴族からタレコミがあったらしい」って言っといてください。
それならこの店が真っ先に抜き打ち調査に合うことにも違和感無いし、犯人探しも過熱しないかと」
俺がそこまで話すと、殿下が呻くように言った。
「…ここで「貴族」を使う、か」
「そりゃ使いますよ!
貴族側も自分たちに正義感があることをアピールできますし、なんてことはないでしょ…まあ、勝手にどこの家かの推測が始まるでしょうけど」
「噂はこっちで操作すればいいということだな」
「ですです」
というわけで何となく作戦は決まったな。
「じゃあ、俺と殿下は10分後にここを出るんで…イドラ君、どうする?」
「一緒に行くよ。この街の連中とやり合える家なんてうちぐらいだからね」
「お~、頼もしい」
さー、お仕事お仕事!
クリスマスパーティーまでには間に合わせよう!
床に膝をついて頭を下げるミゼさん。
「いやいや、正気に戻れて何より」
ベッドに正座している俺。
「全くだ、戻らねば死罪にするところだったぞ」
物騒なことを言う殿下。
「「何の罪で!?」」
当然のツッコミをするイドラ君とジュリさん。
ミゼさんは正気に戻った。
普通の洗脳のほうも、ショックで抜けたみたい。
「…僕、この仕事してるけど、童貞で。
ジュリはタチもしてたのに、僕はネコばかりだったから…何だかずっと負けた気分だったんです」
「つまり童貞を拗らせたという事だな」
「身も蓋もない言い方!!」
すると、ジュリさんがとんでもないことを言い出した。
「何だ、そんなの早く言えよ!今晩ヤっとく?」
「えええ!?」
「いいの…?ジュリ…」
「いいよ。お前の童貞、俺に寄越せ」
なんじゃこの男前はー!!
「ジュリ…僕、その、下手かもしれないけど」
「童貞なんてそんなもんだろ、気にすんな」
「…ジュリ…」
ジュリさんにしなだれかかるミゼさん。
もう完全に2人の世界…。
俺たちはそっと部屋を辞した。
***
「スーパー攻様の閨係はスーパー受様だった…」
「何を言ってるんだお前は」
「あ、いやいや独り言です。
…それよりこの後の調査ですけど」
この話の発信源はジュリさんなんだけど、あの様子じゃちょっと聞けないよな。
「どこの店の事だか分からないんじゃなあ…」
俺のつぶやきに支配人さんが反応した。
「特にどこの店ってわけじゃなく、そういうお店もあるんだよ…っていう私の話を覚えてたみたいで」
「はい?」
支配人さんの話によると、ジュリさんがここに来た最初の頃に「本気を出させようと」そういう話をしたそうで…
「この店のNo.1は必ず学園に派遣されるので、そうしたらこの街の窮状を訴えることも出来る、って…
単純に焚きつけてしまいました」
支配人さんはしょんぼりと反省している。
「うーん…でも全くの嘘でもないんでしょう?」
「それは、ですが…その、付き合いというか…経営してる組織同士の色々がですね」
「あ~…ね」
ん~、難しいな。
でもこの街の衛生をほっとくわけにもいかないし…
「はっ!」
「ん?何か作戦があるのか?」
そうだ、俺はすっかり自分の使命を忘れていた。
「スライムと風呂、そして…サウナ」
「……は?」
「要は衛生管理ができて且つ儲かる業態の提案」
全員が「なんのこっちゃ」という顔をする。
俺は支配人さんに聞いた。
「このへんのお店の経営者の方が一同に会するってことはないんですか?」
「あ…えっと、無くは、無いです…新年会っていう名目で、情報交換などを…」
なんだ、そんな都合のいいものがあるんじゃん。
「じゃあそれに合わせてリサーチしましょう。
ただ俺たちがホイホイ来るわけにもいかないんで、詳しい情報はアイリス商会から買う…しかないかな」
そういうと、イドラ君が驚いた声を出す。
「えっ、うち、お金貰えるの!?金出せって話じゃ無くて?」
「そんな、旨味もないのに金出せって…そんなんただのタカリじゃん。
あ、でもお安くしてくれる?
出来れば、俺のホバー台車とホバーボードの取り分内で収めて貰えると」
「うん、分かった…努力する」
おお、やったぜ。
「ルース、調査はどうする?」
「えー、街全体の様子を視察しつつ、気になる店には立ち入る感じで…。
あ、支配人さん!
周辺のお店に人を遣って『国から視察が来てる、抜き打ちで調査もあるかも』って伝えて貰えますか」
「ええ!?いいんですか?」
「駄目って言ってもするでしょ?
その代わり、何でかって聞かれたら「貴族からタレコミがあったらしい」って言っといてください。
それならこの店が真っ先に抜き打ち調査に合うことにも違和感無いし、犯人探しも過熱しないかと」
俺がそこまで話すと、殿下が呻くように言った。
「…ここで「貴族」を使う、か」
「そりゃ使いますよ!
貴族側も自分たちに正義感があることをアピールできますし、なんてことはないでしょ…まあ、勝手にどこの家かの推測が始まるでしょうけど」
「噂はこっちで操作すればいいということだな」
「ですです」
というわけで何となく作戦は決まったな。
「じゃあ、俺と殿下は10分後にここを出るんで…イドラ君、どうする?」
「一緒に行くよ。この街の連中とやり合える家なんてうちぐらいだからね」
「お~、頼もしい」
さー、お仕事お仕事!
クリスマスパーティーまでには間に合わせよう!
19
お気に入りに追加
2,467
あなたにおすすめの小説
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!
たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった!
せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。
失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。
「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」
アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。
でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。
ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!?
完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ!
※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※
pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。
https://www.pixiv.net/artworks/105819552
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
偽物の番は溺愛に怯える
にわとりこ
BL
『ごめんね、君は偽物だったんだ』
最悪な記憶を最後に自らの命を絶ったはずのシェリクスは、全く同じ姿かたち境遇で生まれ変わりを遂げる。
まだ自分を《本物》だと思っている愛する人を前にシェリクスは───?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる