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学園3年目

冬休み前のひととき

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怒涛の夏休みから怒涛の2学期を経て怒涛の学会が終わり、今は怒涛の「魔法の無詠唱発動練習用魔道具」製作…各教授への早めのクリスマスプレゼントになりそうだ。

今年は試験も受けなくて済むし、3学期は多少楽ができるといいんだけどな。

クリスマスパーティーの計画はなぜかアレクさんが引き受けてくれて、今年は第一砦の前でガーデンパーティーにするんだとか…だもんで、また何本か木を切り倒してテーブルを作成したり、滑り台を作ったり、バーベキューコーナーを作ったり…。
魔法総合組が張り切って色々やってる。

「先生はキッシュとピザの用意をお願いします」
「そうそう、クリビアさんとこのおチビちゃんたち、キッシュ美味しかったって言ってたし…」
「あと、お土産の焼き菓子!去年はタイワンカステラだったので、今年は他のものがいいです!」
エルさま、ヘザー先輩、カート君が口々に言う。

えー、お土産はともかく、キッシュとピザも?
そんなこと言って、バーベキューに夢中になる未来しか見えないんですけど。
まあ数作らなくていいと思えば楽ちんか…。

なんて考えてると、イドラ君からとんでもない情報が飛び出す。
「ただ、神殿は「タイワンカステラ」の情報を掴んだうえに興味を示しているそうだけど」
「おチビたちの保育園からか?
 まあ秘密にしとけとも言ってないもんな~」

イヤっ、コワイ!
子どもの話題にまで手を出して…いや、ちゃんとお話を聞いてあげるのは良い事なんだけど。
…良い事なんだけど!!

俺はアレクさんに確認する。
「…セント神官長、呼ばないですよね?」
「ええ、向こうから突撃してこない限りは」
「う~~~ん困った」

いっそ立てこもってやろうかしら…
なんせここ砦だしな。

そうそう、建築家の先生に2つの砦を見て貰った結果、意外なことに建築基準を満たしているらしい。
特に第1砦は2階建てだから心配だったんだけど…
まあ、おじいちゃん先生によると「2階の床やら天井の作り方が分からなんだからそこは大工を頼んだんじゃ」という話だし、建築家の先生も「王族の方がお泊りになる場所なら」としっかり見てくれていたし、安心だな。

何だか久々にのんびりした時間だな…
みんなの作業を見ながら1人ぼんやりしていると、突然後ろからお声が掛かる。

「ルー、どうしたのぼーっとして」
「あ、ディー兄、どうしたの?」
「今日は馬車で殿下と出るって言ってただろ?
 ほら、イドラも」
「えー、俺、必要なんですか?」

そうだ、今日はジュリさんのところへ行くんだった。

じゃあ今日の御者台はウィン兄か…。
なんだか最近、ウィン兄とディー兄も殿下の側近ぽくなってきたなあ。
ま、本当に側近になったとしても、実力は折紙付きだし、実家は辺境伯だし、文句なしの人選だよな。
ただ、何でそうなったのかが分からないけど。

ディー兄に促されて砦から一番近い門へ行く。
そこにはもう一台の古びた馬車が止まっていて、中には殿下が座っていた。

「すいません、遅くなって…」
「構わん、俺も今来たところだ」

何だかデートっぽいやりとりだなぁ…
行先は色街だけど。
俺とイドラ君が馬車に乗り込むと、馬車はカタコトと走り出す。

「今回は多少やることが多くてな…」

今日はシャムロック様の閨係の人…ミゼさんというらしい…に「闇飛ばし」をする日だ。
俺がバタバタしている間に、彼を元の娼館に呼び戻す算段を立てたり、彼が第1寮で使ってた部屋を捜索したり…と殿下が動いてくれて、本当に洗脳されているのか、ただ騙されているだけなんじゃないかって随分調べたみたいなんだけど、やっぱり様子が変だから見に来て欲しいんだって。

「ミゼさんに話を聞くだけじゃないんですか?」
「ああ、ジュリも何か思い出したそうでな。
 それでその話と引き換えに、質の悪い店で働かされている者たちを助けて欲しいそうだ」
「最後の一個がでかすぎる!!」

でもそういうお店が不潔だと、感染症とか性病とか流行しちゃうって俺の前世の記憶が言ってるし…放っといちゃ駄目なやつだよね、これ。

「ということは、その『質の悪い店』を調査に?」
「そういうことだ」

おいおい、これ今日中に帰れる案件じゃ無くない?

「ご宿泊…か…」

しかし、風俗なんてエロ動画由来の知識しかないぞ。
ほんま大丈夫か?俺…。

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