当て馬にも、ワンチャンあってしかるべき！

学園3年目

焦る「反王家」 ～コーラス視点～

「すまんが、テナチュール家はユーフォルビアと王家の婚姻については中立とさせて頂く」
「我がフリージア家も同じく」

両家の当主は席を立ってこの場を去っていった。

ぽろぽろと派閥が崩れていく。
王家の派閥に恐れをなした臆病者ども！！

「エルム公、これ以上は無理です」
「そうですな、あちら側に冒険者ギルドまで付くとなったら…武力ではもう歯が立ちません」
「考えてみれば、王家に醜聞があったとて何の問題がありましょう」
「確かに、その時になってからでも王家の怠慢を糾弾するのは遅くないのでは…」

そんなわけにいくか。
お前たちが考える醜聞など実際には起こりようがないのだ。
ユーフォルビアが次々と男を変えて産むのは淫蕩の家系だから…なんて真っ赤な嘘なんだから。

「後宮に入ればユーフォルビアが子を産んでくれる」なんてのも嘘さ。
ルースを揺さぶってみて確信したね。
本当はアルファードの子を孕ませられるのに決まっている。
ユーフォルビアと同じぐらい「産める子ども」なんて、こっちの手に入りやしないんだ。

僕が考えた計画がどんどんおかしくなっていく。
ルースのせいだ、あいつが、あの茶会で…
「自分が正室に相応しいと思っていない」と言ってから風向きが変わった。

この国の為に、仕方なく婚姻を結ぶ。
この国の将来の為には正室になるしかない。
この婚姻は全てがこの国の為なのだ…などと、妄言を…

「良いのですか、それで」
「良いも何も、ここまで正当な理由があるのなら…」
「表向きの話に、騙されてはいませんか」

この国のために働いてきた我々が、この国からしてもらった事は何だ？
領地を頂いた？爵位を貰った？
そんなもの、この国の奴隷にさせられたのと同じ事だと何故分からないんだ。
領地を治めさせられたうえに税金まで取られて…。
もっと金を貰って、贅沢したっていいはずだ。
王家と同じぐらいの生活をしたって…。

「ですが、王家もそれほど贅沢をしているわけでは…」
「あのように大きな宮殿に住んで、後宮に30人もお気に入りを召し上げて、それが贅沢ではないと？」
「それは…確かに、そうですが」

全く、王家がどれだけ能無しかまだ分かってなかったなんて。
だったらこの力を使って、彼らの頭に刷り込んでやらなけりゃな。

「皆さんはまた王家に騙されるのですか？
　彼らはこの国の価値を下げる行いをしているというのに。

　大きな軍事力を持っていながら、それを活用することなく腐らせていることについては？
　我々のために用意されるはずの「苗床」たちを、勝手に国外へくれてやったことについては？
　我が国が多大な資金を供出して得た魔法研究の実績を、他国にばらまいていることについては？
　魔物や魔獣を根絶できない冒険者ギルドに対して家名までくれてやっていることについては？

　多額の国費が無駄に流れているのです。
　王家の事なかれ主義のせいで！

　他にもまだまだあります。
　寄付金の多寡で態度を変える神殿を野放しにしていること。
　魔石の採掘量を制限し我々の財源を締め付けていること。
　さらに最近は商売人どもの地位を引き上げようとしているとか…
　自分たちの派閥の資金を得るために、この国を奴らに売ろうと言うのです。
　皆様はまだ見ないふりをするおつもりですか、わが身可愛さに！」

内戦なしで王家の首を獲る。
この絶好の機会を作るために、今まで力を合わせてやってきたんじゃないか。
それを無にする？
それこそあり得ないね。

そういえば最近古代魔法が流行っているらしいじゃないか。
栄光のローザンヌ帝国時代の再来を予感させるいい兆候だ…これがルースと絡んでさえいなければ、な。