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学園3年目

腹の立つミミズの話 ~アルファード視点~

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ルースとノースのやつがシャラパール語でこそこそやっている。
気に入らんので中に割って入ると、2人は神妙な顔つきで俺とお祖父様に言った。

「実は、大変なことが起きるかもしれなくて…」

大変なこと?
なんだそれは。

「サンドワームがシャラパールでもローズでも増えてるみたいなんです」
「何だって?」
「説明する、シャラパール最近、乾燥してる。畑、水ない、育たない、だから食料ない、争う」
「その乾燥の原因が、サンドワームじゃないかって話で…」

2人が言うには、こうだ。

サンドワームは大きければ大きいほど、多くの水を必要とする。
砂漠地帯で水を得るなら地下深くになるから、より見つけづらくなる。
すると生存確率が上がり、より大きく成長する。

「学園のやつより大きいやつ…というと、もはや想像がつきません。
 それともう一つ…大きいやつがいるだけでなくて、比較的良く見られるサイズ…1~3m程度のものが大発生している可能性です」
「大きいの一匹、小さいのたくさん、効果一緒。乾燥する…畑、だめになる」

なるほど、そっちの線もあるのか…。
それならこの前のように、おびき寄せて叩くしかあるまい。
国として何かできる事があれば良いのだが…。

「サンドワームの好きな餌が何か、は分からないですが…」
「大きな魔物、人間たべる。大きなサンドワームも、人間食べる思う…。
 今、争う起きてる、人死ぬ…それ食べてる?もしかして。
 …魔獣の大発生と同じになるのじゃない?」
「何じゃと!?」

そんな馬鹿な!
魔物の大発生は何が要因なのかまだ分かっていないんだ、魔獣の大発生と一緒にはできん…とは、思うが…
そういう場合もある、としたら…

「つまり、あの化け物ミミズが大発生するというのか?」
「…今までの記録には、大発生の時に群れが単一の魔物で占められている事例はありません」
「全然、つかない、想像。サンドワームだけ増える、おかしい」
「サンドワームの卵や小さな個体は、乾燥地帯の魔物の生態系を支えているそうです…スライムと同じく。
 それが沢山増えると言うことは、それを食べている魔物も増える…エルグラン王子の説とも共通しています」
「どこかで、魔物、増えてる。
 もしかして、隠れてる…」
「そう、大きなサンドワームが掘った穴の中…とかで」

…ということは、つまり…

「もしかしたら、超巨大サンドワームがいて、その上1~3m級も増加しているんじゃないかと」
「そう、恐ろしい、サンドワームの穴、ゴブリンの巣穴なる」
「暗き森の遺跡でも、道の端に開いた穴からゴブリンが出てきました。あの穴がサンドワームの物かはわかりません。ただ、あの時…ヘヴィさんが正体の分からない黒焦げの何かを持ってたの、覚えてますか?」
「ああ、そう言えば」
「あれがサンドワームだったら…?」
「……!!」

まさか!?
あれがそう繋がるというのか?

「実は、もう一つ、恐ろしい可能性についても考えたんです」
「何だそれは」
「ここ最近ローズ王国内で見つかっているサンドワームは、誰かに飼育されていたんじゃないかと…」
「何だって!?」
「その誰か、が、人間なら…まだいいんですけど」
「まだいい?」

まだいい、とはどういうことだ?
それは最悪の事態のような気がするが…

「最悪なのは、ゴブリンが飼育している場合…です」
「ゴブリンが?そんなことをするのか?」
「分からない、けどあいつら頭いい、武器作って戦う、道具使って魔獣捕まえる。
 村、乗っ取る、増える、人間と戦争する、聞いたことある」

俺も記録として見たことはある。
確かその戦いで活躍したのが「英雄」では無かったか?

「…ゴブリンって、人間に良く似てませんか?
 属性がまちまちで、魔法を使うのもいれば武器をつかうのもいる」
「そう言われると…そうかもしれんがの…」

ルースは真剣な顔で訴える。
この可能性を少しでも考えるべきだ、ということだろう。
国家の安全の為ならば、用心しすぎるということは無い。
少なくとも想定しておくことはできるだろう、荒唐無稽と言うものはいるかもしれないが。

さらにルースは続けた。

「でも、ゴブリンは人間と違って、捕まえて尋問することができません。
 そもそも言葉が通じな…い、です、よね…?」

「どうした?」

ルースが何か思いついたようだ。
これの思いつきは馬鹿にできん。
黙って続きを待つ。
ルースが口を開く。

「通じたら、何か、変わる…?
 試す価値は…あるかもしれません、ちょっとサンダーアーム…」
「なるほど!」
「試す価値はありそうだな…!」
「ではゴブリンを捕獲せねばならんということか…これは難題じゃな」
「…いい罠、ネリネ教授に聞いてみる」

どうやら少しは光明もあるようだ。
それに賭けてみるのもいいかもしれんな。



ルースの言うことが杞憂で終わればいい。
だがこいつの「嫌な予感」は大体当たる。
それこそ「思いつき」と同じように。

国家を、世界を脅かす可能性が…
この地下に眠っているのかも、しれない。


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