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学園3年目
【閑話休題】生徒会だって必死である
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夕方になり、生徒会メンバーはそれぞれ寮へ帰る。
アルファード殿下以外のメンバーは1号棟…
高級家具付き風呂トイレ別2LDKが10部屋。
従者用の部屋は別に用意され、寮を管理するのは一流の執事である。
ちなみに12号棟は風呂トイレ共用のワンルーム。
1号棟の従者用部屋より質素な造り…。
およそ王侯貴族の住まう場所でないことは確かだ。
その1号棟の談話室に、殿下以外の生徒会メンバーが集まって話をしている。
「今日の講堂の件をどう捉えるか…だね」
ラミー・フリージア会長が優雅に紅茶を飲みながら言った。
「彼を使い、王家が神殿を味方につけようと画策している…としか…。
ですが残念ながら、今の神殿は寄付の額によって態度を変えるもの。
嘆かわしいことですが…陛下たちは信じたくないのかもしれませんね」
トーリ・バイオレット副会長も心配そうに言う。
「そうですね、どうやらあの新任の神官長は、自分の立場を理解しない愚鈍…
それをつかまされている時点でお察しになられると良いのですが」
アウディ・プリムラ会計がやれやれ、といった様子で言う。
コーラス・エルム書記もニコニコと笑う。
「仕方がありません、王家も血を絶やしたくないと必死なのでしょう」
フリージア会長が紅茶のカップを皿に戻して言う。
「だがあの家の血など入れたらどうなるか!
王国始まって以来の醜聞をまき散らす事になる。
問題はもちろんそれだけでは無いが…
その事も踏まえて、お考えを改めて頂かねば」
プリムラ会計が賛同する。
「ええ、そうですとも。
そもそも、ユーフォルビアを正妻にしてはならない…と、由緒ある家の間では暗黙の了解です。
側室だとしても不倫などされたら大問題…。
だのにそれを正室にするだなんて!」
この4人の公爵子息には共通の記憶がある。
ユーフォルビアの子達が他国の王室へ嫁ぐ事が決まってから、急に「あれはお前の兄弟だから仲良くしろ」と父たちから命じられた事だ。
なぜユーフォルビアに弟がいるのかと聞けば、向こうが強引に誘ってきた、そもそもあそこの家は淫蕩な家系で、代々男をとっかえひっかえ…云々。
産ませる側の言い訳は大体どこも同じ。
徹底的に向こうが悪い、自分は被害者なのだと子どもに言い聞かせるものだ。
そして彼らはそれを信じた。
自分の親が不誠実なことをしている、とは思いたくなかったからだ。
そしてまた、
ミカ・シャムロック侯爵子息、
フィーデ・テナチュール侯爵子爵、
2人の総務も上の4人に賛同する。
「ええ、父からも聞かされております。
産ませろ、されど娶るな…と」
「あそこの血が家に入ったことが知れると、面倒事ばかり起きる。
だから当主になった折に、祝いとして一夜の夢を見せてやるだけにしなさい…と」
6人が6人とも、家から「殿下とルース・ユーフォルビアを引き離せ」と言われている。
後に続く言葉はそれぞれ異なるものの、まずは2人の仲を引き裂くところまでは協力しよう、と話した。
とはいえ、手を汚すような真似はしたくない。
できれば穏便に事を運びたい…と思っていた。
だが…。
シャムロック、テナチュール総務が口々に言う。
「アルファード様とアレの仲はもはや学園でも有名。その上、市井においても認知が広まっているようで、困ったものです」
「ああ、魔石工学の平民どもですか…」
「それでも、王家とユーフォルビアを引き離さない理由にはなりませんがね」
あちらが説得されないのなら、
いっそ監禁するのもやむを得まい。
不穏当だが、彼らが考えることは概ねこういうことだ。そして誰でも考えつくことでもある。
実際に、すでに動いている家もある。
ただ、成功したことは一度もない。
それが焦りを生んでいた。
総務の2人がまた口を開く。
「少なくとも、ユーフォルビアを王家が独占するのは問題です」
「そうです、アレに子どもを産ませねば、血筋が危険に曝される家がいくつあるか…」
書記が言った。
「どういうおつもりで正室にしようというのか、確かめねばなりませんね?」
会計が言った。
「そうですね、王家が自分可愛さに、国家を支えてきた我々を切り捨てようとしているなら…反抗する理由にもなりますし、賛同する家も増えるでしょうから」
つまり、それは「そういう噂を上流階級で流す」ということだ。
王家の後ろ盾も揃ってきた。
内戦に突入すれば、戦力は向こうのほうが圧倒的に上だ。
書記は言った。
「我々の手は、荒事には向きませんね」
副会長は返した。
「当然です、策を与えるのが役目ですから」
会長は総務の2人に言った。
「もし、彼のほうが駄目なら…殿下に「働きかけ」をして貰えるかい?」
シャムロック総務は微笑んで言った。
「もちろんです」
王家の暴走を止める…
そういう大義名分を持って、
我々公爵家は団結しているのだ…
表向きはそういうことになっている。
各家の思惑は、複雑に絡まりあう。
本音の部分で一致しているかどうかは…
もちろん、定かではない。
アルファード殿下以外のメンバーは1号棟…
高級家具付き風呂トイレ別2LDKが10部屋。
従者用の部屋は別に用意され、寮を管理するのは一流の執事である。
ちなみに12号棟は風呂トイレ共用のワンルーム。
1号棟の従者用部屋より質素な造り…。
およそ王侯貴族の住まう場所でないことは確かだ。
その1号棟の談話室に、殿下以外の生徒会メンバーが集まって話をしている。
「今日の講堂の件をどう捉えるか…だね」
ラミー・フリージア会長が優雅に紅茶を飲みながら言った。
「彼を使い、王家が神殿を味方につけようと画策している…としか…。
ですが残念ながら、今の神殿は寄付の額によって態度を変えるもの。
嘆かわしいことですが…陛下たちは信じたくないのかもしれませんね」
トーリ・バイオレット副会長も心配そうに言う。
「そうですね、どうやらあの新任の神官長は、自分の立場を理解しない愚鈍…
それをつかまされている時点でお察しになられると良いのですが」
アウディ・プリムラ会計がやれやれ、といった様子で言う。
コーラス・エルム書記もニコニコと笑う。
「仕方がありません、王家も血を絶やしたくないと必死なのでしょう」
フリージア会長が紅茶のカップを皿に戻して言う。
「だがあの家の血など入れたらどうなるか!
王国始まって以来の醜聞をまき散らす事になる。
問題はもちろんそれだけでは無いが…
その事も踏まえて、お考えを改めて頂かねば」
プリムラ会計が賛同する。
「ええ、そうですとも。
そもそも、ユーフォルビアを正妻にしてはならない…と、由緒ある家の間では暗黙の了解です。
側室だとしても不倫などされたら大問題…。
だのにそれを正室にするだなんて!」
この4人の公爵子息には共通の記憶がある。
ユーフォルビアの子達が他国の王室へ嫁ぐ事が決まってから、急に「あれはお前の兄弟だから仲良くしろ」と父たちから命じられた事だ。
なぜユーフォルビアに弟がいるのかと聞けば、向こうが強引に誘ってきた、そもそもあそこの家は淫蕩な家系で、代々男をとっかえひっかえ…云々。
産ませる側の言い訳は大体どこも同じ。
徹底的に向こうが悪い、自分は被害者なのだと子どもに言い聞かせるものだ。
そして彼らはそれを信じた。
自分の親が不誠実なことをしている、とは思いたくなかったからだ。
そしてまた、
ミカ・シャムロック侯爵子息、
フィーデ・テナチュール侯爵子爵、
2人の総務も上の4人に賛同する。
「ええ、父からも聞かされております。
産ませろ、されど娶るな…と」
「あそこの血が家に入ったことが知れると、面倒事ばかり起きる。
だから当主になった折に、祝いとして一夜の夢を見せてやるだけにしなさい…と」
6人が6人とも、家から「殿下とルース・ユーフォルビアを引き離せ」と言われている。
後に続く言葉はそれぞれ異なるものの、まずは2人の仲を引き裂くところまでは協力しよう、と話した。
とはいえ、手を汚すような真似はしたくない。
できれば穏便に事を運びたい…と思っていた。
だが…。
シャムロック、テナチュール総務が口々に言う。
「アルファード様とアレの仲はもはや学園でも有名。その上、市井においても認知が広まっているようで、困ったものです」
「ああ、魔石工学の平民どもですか…」
「それでも、王家とユーフォルビアを引き離さない理由にはなりませんがね」
あちらが説得されないのなら、
いっそ監禁するのもやむを得まい。
不穏当だが、彼らが考えることは概ねこういうことだ。そして誰でも考えつくことでもある。
実際に、すでに動いている家もある。
ただ、成功したことは一度もない。
それが焦りを生んでいた。
総務の2人がまた口を開く。
「少なくとも、ユーフォルビアを王家が独占するのは問題です」
「そうです、アレに子どもを産ませねば、血筋が危険に曝される家がいくつあるか…」
書記が言った。
「どういうおつもりで正室にしようというのか、確かめねばなりませんね?」
会計が言った。
「そうですね、王家が自分可愛さに、国家を支えてきた我々を切り捨てようとしているなら…反抗する理由にもなりますし、賛同する家も増えるでしょうから」
つまり、それは「そういう噂を上流階級で流す」ということだ。
王家の後ろ盾も揃ってきた。
内戦に突入すれば、戦力は向こうのほうが圧倒的に上だ。
書記は言った。
「我々の手は、荒事には向きませんね」
副会長は返した。
「当然です、策を与えるのが役目ですから」
会長は総務の2人に言った。
「もし、彼のほうが駄目なら…殿下に「働きかけ」をして貰えるかい?」
シャムロック総務は微笑んで言った。
「もちろんです」
王家の暴走を止める…
そういう大義名分を持って、
我々公爵家は団結しているのだ…
表向きはそういうことになっている。
各家の思惑は、複雑に絡まりあう。
本音の部分で一致しているかどうかは…
もちろん、定かではない。
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