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学園2年目
ダンジョン再生計画3.衝撃の展開
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「これ、マップな、あるだけ持ってきた」
「すごっ!何年分ですか!?」
「32年分だ、俺が担当になる前の前の…えー、遡れるだけ持ってきた。
俺が15年前に引き継いだ時にはそれほど厳重に管理されてなかったもんでな、曖昧なところも多いんだが…当時の引き継ぎ資料もある」
「膨大だな…」
「前任者の方は?」
「教師を辞めて旅に出た。
あの方は教師には向かん…人に教えることもそうだが、一処に留まるのも嫌いだったから」
ケンタウレア先生が昔を懐かしむ顔をした。
尊敬してた人とかかな…「方」って言ったし。
まあ、それは今はおいといて…
「じゃあ、話を聞くのは無理そうですね」
「…そうだな」
「とにかく、マップを見比べましょう」
「ああ、では一層から始めるか」
----------
マップを見比べたり新聞を調べたり話し合いしたりして、いつの間にか1週間が経った。
俺たちがまずやることにしたのは、
・10層から外へ出る穴を塞いでいる石を退かす
・32年前のマップを元に、無くなった分かれ道の入り口を調査する
・調査のための照明の設置
の3つだ。
石のことはともかく、実はダンジョンの分かれ道の減少は18年前から起きているようだ。
特に一層は元々、32年前は細いのから太いのまで16本もあったらしい。
それが15年前には、細い道が消えて8本になり…
現在は5本まで減ったようだ。
こうなると、もしかしたら自然現象なんじゃないかという疑いが出てきて…じゃあ自然現象なのかそうじゃないのかを調べましょう、となったのだ。
そして、照明の確保は…。
「持って来たよ!ルース!」
「ガーベラ先輩!?トレッドさん!?」
「みんなで作ったんだ、使ってよ」
「えっ…な、なんで?」
「先生から話を聞いてさ、お前の役に立つんならって、みんなではりきって作ったんだ。
足りなきゃバンバンつくるから、言えよ?」
俺のために?
…そんな、なんで…。
「あ…ありがとう、ございます…」
みんな、優しすぎるよ。
涙が出てきちゃうじゃない…
「みんな『早く戻ってこいよ』ってさ」
「……はい」
「魔石工学の先生も、さっさと戻ってきて魔石合成の話を聞かせろって言ってた」
「…はい」
俺は涙をこらえて返事をする。
するとなぜか、
ガーベラ先輩は少し緊張した顔で言った。
「それとさ、ルース…ちょっと肩、触るよ」
「?」
「疲労回復」ふわふわ…ぽかぽか…
「!?」
肩が軽くなった…!!
「まだ、カートほど上手くないんだけどな」
「出来たんですか、疲労回復の魔法…!」
「うん、あのことがあってから、ヘザー先輩がカートの光属性を開放して…そっからすぐ」
「良かった!」
それから、とトレッドさんが前置きして、あの記事のことを教えてくれた。
「きな臭い話で悪いんだが…。
どうやらあの記事、俺の友人が書いたもんじゃないらしいんだ」
「えっ?」
「印刷の段階のどこかで差し替えられたみたいで…
発行まで誰も気が付かなかったって言うんだよ。
だからな、今、印刷屋を調べてる」
「…そうなんですか」
「次期国王の伴侶の座を狙うやつなんていくらでもいるからな…な、ガーベラ様」
トレッドさんから話を振られたガーベラ先輩は、神妙な顔で俺に言った。
「あのな、ルース。
実は俺も…取り調べの範囲に入ってるんだ。
俺…お前に属性開放してもらっただろ?
その前…ルースの事、意味もなく嫌いだったというか、恨んでたっていうか…お前のせいで何もかも上手くいかないって思ってたというか…何だろうな、今考えると異常なんだ…」
「異常…?」
「ぶっちゃけて言うけどさ、そもそも魔石工学取ったのって、単純に魔道具に興味があったってのと、うちの稼業だからっていう理由なんだよな。それなのに、何故か「家が没落しかけてるから仕方なく」って思い込んでて…まあ、そこまで金のある家でもないのは確かなんだけど、苦しいってほどじゃないし。
だけど「金が無い」「没落する」って…とにかくそう思い込んでしまって、追い詰められてて。
バイトしてる理由だって、元々は馬が好きだからで…金が無いからじゃなかったはずなんだ」
「ど、どういうことですか!?」
トレッドさんが答えてくれた。
「こいつ、洗脳されてたんじゃないかって」
「洗脳!?」
「一番簡単なのは、闇魔法だそうだ」
「…え?」
「ただ、闇属性ってのは確かに珍しいけど、そこまで人数が少ないわけじゃないから、それだけで疑いをかけて調べるってのは現実的じゃないんだってよ。
それに、他にも洗脳する方法はあるし…というわけで、ちょっと面倒なことになりそうでな。
だから、みんなは『早く戻ってこいよ』って言ってるけど、お前、もうちょっとここにいた方がいいかもしれん…とまあ、そういうことだから、な」
トレッドさんはガーベラ先輩と顔を見合わせてから、ニヤリと笑って言った。
「カレンデュラ卿の部屋に、校長の研究室を移動させることになった」
……は?
俺の疑問符をよそに、ガーベラ先輩は興奮気味に話し始めた。
「俺もあの研究室に出入りしていいって言ってもらえたんだ!『お試し期間じゃ』って、校長先生が!ずっとどうやって入ろうかあんなに考えてたってのに!「魔道具で生活魔法をどこまで再現できるか」研究したいって言ったら、入れてくれるって!」
「えっ、そうなんですか!?」
そんなに入りたかったのか…
おじいちゃん先生、嬉しかっただろうな。
ガーベラ先輩は続けた。
「ただ、生活魔法はルースの領分だから、研究室には必ずルースと一緒に来るようにって」
…ちょっと待て。
「とりあえず、今から一緒に行こうよ!引っ越しのお手伝いしなくちゃいけないんだ!」
「いやいやいやいや」
おじいちゃん、意外と策士だな!?
「すごっ!何年分ですか!?」
「32年分だ、俺が担当になる前の前の…えー、遡れるだけ持ってきた。
俺が15年前に引き継いだ時にはそれほど厳重に管理されてなかったもんでな、曖昧なところも多いんだが…当時の引き継ぎ資料もある」
「膨大だな…」
「前任者の方は?」
「教師を辞めて旅に出た。
あの方は教師には向かん…人に教えることもそうだが、一処に留まるのも嫌いだったから」
ケンタウレア先生が昔を懐かしむ顔をした。
尊敬してた人とかかな…「方」って言ったし。
まあ、それは今はおいといて…
「じゃあ、話を聞くのは無理そうですね」
「…そうだな」
「とにかく、マップを見比べましょう」
「ああ、では一層から始めるか」
----------
マップを見比べたり新聞を調べたり話し合いしたりして、いつの間にか1週間が経った。
俺たちがまずやることにしたのは、
・10層から外へ出る穴を塞いでいる石を退かす
・32年前のマップを元に、無くなった分かれ道の入り口を調査する
・調査のための照明の設置
の3つだ。
石のことはともかく、実はダンジョンの分かれ道の減少は18年前から起きているようだ。
特に一層は元々、32年前は細いのから太いのまで16本もあったらしい。
それが15年前には、細い道が消えて8本になり…
現在は5本まで減ったようだ。
こうなると、もしかしたら自然現象なんじゃないかという疑いが出てきて…じゃあ自然現象なのかそうじゃないのかを調べましょう、となったのだ。
そして、照明の確保は…。
「持って来たよ!ルース!」
「ガーベラ先輩!?トレッドさん!?」
「みんなで作ったんだ、使ってよ」
「えっ…な、なんで?」
「先生から話を聞いてさ、お前の役に立つんならって、みんなではりきって作ったんだ。
足りなきゃバンバンつくるから、言えよ?」
俺のために?
…そんな、なんで…。
「あ…ありがとう、ございます…」
みんな、優しすぎるよ。
涙が出てきちゃうじゃない…
「みんな『早く戻ってこいよ』ってさ」
「……はい」
「魔石工学の先生も、さっさと戻ってきて魔石合成の話を聞かせろって言ってた」
「…はい」
俺は涙をこらえて返事をする。
するとなぜか、
ガーベラ先輩は少し緊張した顔で言った。
「それとさ、ルース…ちょっと肩、触るよ」
「?」
「疲労回復」ふわふわ…ぽかぽか…
「!?」
肩が軽くなった…!!
「まだ、カートほど上手くないんだけどな」
「出来たんですか、疲労回復の魔法…!」
「うん、あのことがあってから、ヘザー先輩がカートの光属性を開放して…そっからすぐ」
「良かった!」
それから、とトレッドさんが前置きして、あの記事のことを教えてくれた。
「きな臭い話で悪いんだが…。
どうやらあの記事、俺の友人が書いたもんじゃないらしいんだ」
「えっ?」
「印刷の段階のどこかで差し替えられたみたいで…
発行まで誰も気が付かなかったって言うんだよ。
だからな、今、印刷屋を調べてる」
「…そうなんですか」
「次期国王の伴侶の座を狙うやつなんていくらでもいるからな…な、ガーベラ様」
トレッドさんから話を振られたガーベラ先輩は、神妙な顔で俺に言った。
「あのな、ルース。
実は俺も…取り調べの範囲に入ってるんだ。
俺…お前に属性開放してもらっただろ?
その前…ルースの事、意味もなく嫌いだったというか、恨んでたっていうか…お前のせいで何もかも上手くいかないって思ってたというか…何だろうな、今考えると異常なんだ…」
「異常…?」
「ぶっちゃけて言うけどさ、そもそも魔石工学取ったのって、単純に魔道具に興味があったってのと、うちの稼業だからっていう理由なんだよな。それなのに、何故か「家が没落しかけてるから仕方なく」って思い込んでて…まあ、そこまで金のある家でもないのは確かなんだけど、苦しいってほどじゃないし。
だけど「金が無い」「没落する」って…とにかくそう思い込んでしまって、追い詰められてて。
バイトしてる理由だって、元々は馬が好きだからで…金が無いからじゃなかったはずなんだ」
「ど、どういうことですか!?」
トレッドさんが答えてくれた。
「こいつ、洗脳されてたんじゃないかって」
「洗脳!?」
「一番簡単なのは、闇魔法だそうだ」
「…え?」
「ただ、闇属性ってのは確かに珍しいけど、そこまで人数が少ないわけじゃないから、それだけで疑いをかけて調べるってのは現実的じゃないんだってよ。
それに、他にも洗脳する方法はあるし…というわけで、ちょっと面倒なことになりそうでな。
だから、みんなは『早く戻ってこいよ』って言ってるけど、お前、もうちょっとここにいた方がいいかもしれん…とまあ、そういうことだから、な」
トレッドさんはガーベラ先輩と顔を見合わせてから、ニヤリと笑って言った。
「カレンデュラ卿の部屋に、校長の研究室を移動させることになった」
……は?
俺の疑問符をよそに、ガーベラ先輩は興奮気味に話し始めた。
「俺もあの研究室に出入りしていいって言ってもらえたんだ!『お試し期間じゃ』って、校長先生が!ずっとどうやって入ろうかあんなに考えてたってのに!「魔道具で生活魔法をどこまで再現できるか」研究したいって言ったら、入れてくれるって!」
「えっ、そうなんですか!?」
そんなに入りたかったのか…
おじいちゃん先生、嬉しかっただろうな。
ガーベラ先輩は続けた。
「ただ、生活魔法はルースの領分だから、研究室には必ずルースと一緒に来るようにって」
…ちょっと待て。
「とりあえず、今から一緒に行こうよ!引っ越しのお手伝いしなくちゃいけないんだ!」
「いやいやいやいや」
おじいちゃん、意外と策士だな!?
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