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学園2年目

「だめ」? 〜アルファード視点〜

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「好きになっちゃだめなの、ばかぁ…」

そういうとルースの意識が途切れる。
ぬるめの湯を張っておいたから、のぼせてはいないと思うが…。

ルースを横向きに抱えて風呂を出る。
今日は「アル」と呼ばなかったな…と余計なことを考えて、自分の頭を少し冷やす。

ルースの風呂上がりでいろづいた身体を、優しくタオルで拭いてやる。
濡れた黒髪から上半身を拭いて、下半身。
足先からふくらはぎ、腿…ときて、まだ踏み込まないと決めた領域に、少しだけ触れてみる。
下生えも薄く、何というか…ルースらしいソレを手のひらに乗せてみる。

「こんなところまで可愛らしいんだな…ふふ」

自分のものとは違って、まだ子どもみたいだ。
愛しくなって、柔らかく握ってみる。
足りなくて、腿の内側に所有の証を残してみる。
先へ進みたい気持ちを抑えてシーツでくるみ、そっと横を向かせ…背中から抱く。

「好きになっちゃだめなの…か」

確かに、そうかもしれない。
他の兄弟は全て国外へ出て行き、この国に残されたのはルース。
ならばルースが、次のユーフォルビア当主だろう。


  愛や恋など関係なく子を成す。

昨年の夏、ゼフから聞いて知った事だが、それがあの家の当主たるものの心得だそうだ。

請われるままに産む。
そうしなければ、自分のせいで兄弟たちに火の粉が降りかかる。それはやがて、兄弟が嫁いだ先をも不幸にするだろう。
ゼフの時は、伴侶が殺された済んだ。
ゼフの前には…家同士が争い、どこが滅ぶべきかと、内乱を招いた当主もいた。

特に、今度は嫁いだ先が全員王家ときている。

「戦争なんてことになったら、どうします?」

……
ユーフォルビア「伯爵」家の始まりはおよそ200年前。

この国を興した初代から数えて7代目の王は、時のユーフォルビア当主に僅かな領地と伯爵位を与えて伴侶にし、その男の弟に向かってこう言った。

「国家安寧の為に、股を開け。
 それをもって「伯爵」の地位を与える」

何とも醜悪な話だ。
それは爵位を与えて奴隷にしたのと同じこと。
我がローズ王家を、ユーフォルビア家が快く思わないのは当然だろう。



「ルースは、どんな相手とでも、請われるままに抱かれるようになるよう育てております。
 当人は気づかないでしょうが、産む側の男とて自分の事を抱くように仕向けられるでしょうね」

側室に入れる際は監禁できる部屋がいいですよ。
でないと殿下の子を1人生む前に、よその子を3人産むことになるでしょうから…ね。

その代わり、2人産ませたら返してください。
国家安寧の為に、あと7人は産んでやらないといけないんでしょう?うちも後取りがいりますしね。
自分で産んで分かったけれど、13人が限界で…
何?1人多いって?
それはご自分でお調べになっちゃどうです。

何ならその子に鞍替えして、その子とご結婚なさるのが一番ですよ…王家も王家に近しい方々も、家柄が何より大切なのでしょう?

「それにしてもあの子には困ったもんです。
 誰にも執着されないように、面白みのない人間でいるようにと育てるはずだったのに…ねえ」

クスクスと笑うゼフの顔は楽しげで…
わずかに狂気を感じさせた。

「まあ、こうなったからには仕方ない。
 家柄が低いからと妾のように扱われても、健気に孕める子どもを作ってやったのに…それを孕ませる側に回す馬鹿どものことなど知りません。
 殺し合いでも何でもすればいい」

ゼフは続けた。

「愛などなくても子は出来ます。
 やる事をやれば出来る、それがユーフォルビア。
 殿下がルースを愛する必要はありませんよ?
 あの子を愛せる人は、こちらで用意しますから」

国から不倫を推奨され、他人の子を何人も産んで、それでもあなたがいいと言ってくれる…
ロイみたいな人をね。


だから、俺は言った。

「俺は、ルースを正室に迎えることにした」

驚いた顔でゼフは言った。

「王家が正室の不倫を推奨すると?側室になれば、あの子を抱ける特典でもお付けになるので?」

「そんなことはさせん。
 だが…そうだな、そうやって噂を流し、馬鹿どもを集めて、俺が全員孕ませてやればいいんだろう?
 あの「神の怒り」とやらを避けるやり方は、産ませる方でも産む方でも、2人以上であれば構わない。
 それはユーフォルビアが証明している」

「…なるほど?面白いことを仰る」

「それをルースが許してくれるかは分からんがな」

「ああ、それなら問題ありません。
 ユーフォルビアが「産むだけの存在」になることは常ですし、何ならその分子どもに愛を注ぐようになるので便利だと評判でね」

「そう…だな。
 ゼフ、あなたで最後にする。
 ユーフォルビアが貴族の傲慢を背負う事は、
 もう必要ない」

俺はその時決めたのだ。

「あいつは俺だけのものにする。
 他人にやらなくて済むのなら、何でもしてやる」

……と。



今日はこのまま、抱いて寝よう。

何度でも教えてやる。
耳元で何度でも囁いてやる。


「安心して好きになれば良い…俺だけを」






ーーーーーーー
2023/06/01改稿
※整合性を取る為
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