上 下
41 / 586
学園2年目

センスが足りない!

しおりを挟む
雷属性をつける話は、とりあえず詳しいことが分かってから…と言うことになり、今日の放課後は魔法棟に行く事になった。
久しぶりに魔法バカ達に会うのが楽しみだ。

魔法棟に着くと、練習場に人だかりが出来ていた。
何だろう…と近づくと、その真ん中ではカレンデュラ先生がアレクさんに稽古をつけていた。
アレクさんはどうやら剣より拳派らしい。
手を包帯でぐるぐる巻きにして、ミット打ちをしているみたいだ。

「ほら!サンダーアーム切れてっぞ!」
「はい!サンダーアーム!」

こりゃすごい。パンチがあたる度に電撃が飛んで、格闘ゲーム見てるみたい…。
みんなが釘付けになるのもわかるな。

俺と殿下は見物人を邪魔しないように、おじいちゃんの研究室へ行った。

----------


研究室にはおじいちゃん先生1人だった。

「おー、よく来たのう!」
「お久しぶりです、先生!」
「お久しぶりです」

他の3バカ+ジョンさんは、別の用事で出ているらしい。
俺は早速、おじいちゃんに「魔力同調法」について聞いた。

「先生、アレクさんの時と、ジョンさん達の時で、何が違うと思いますか?」
「そうじゃのお…それについては、儂らも考えておったんじゃわい」

実は4人の中でも、色々意見があるらしい。

「アレクは、魔法が1つも使えん状態じゃった。
 魔力をうまく使えないから、魔力を感じることが難しい。だから、余計な神経を使った。
 この時、開放しようとしていたのは雷属性。
そこに電流が流れることで、魔力を感じる神経以外の神経を刺激してしまったのではないか…。
 ここまでは大体一緒じゃな」

「ほうほう」

「トルセンとジョンが水属性を開放してもらった時にどんな感じだったか話を聞いとったんじゃ。
 そしたら、多少は変化もあったらしい。
 ・やたら小便が出た
 ・汗をたくさんかいた
 ・体が温かくなった
 …この3点くらいだそうじゃ」

「何だかデトックスみたいですね」

「デトックス?は良くわからんが…続けるぞ?
 彼らも魔法は使えんかったが…そもそも、
・ジョン…家が貧しくて教育を受けてこなかった
・トルセン…家の方針で魔法より剣が優先
ということで、使おうとしたことが無いんじゃ。
 ただし、2人とも剣士じゃ」
「そうか、剣士は前衛ですもんね。
 色んな属性の魔法を受けた経験があるから…
 だから魔力の流れもイメージしやすかった、と」

うんうん、とおじいちゃんは頷いた。

「ここから、それぞれ考えが分かれる。
 カートは『魔法を何度も受けたことがあるか、魔法を何度も使ったことがあるか、どちらかの要件を満たせば、余計な神経を使わずに済むから属性開放のとき平常でいられるのでは』と」

「なるほど」

「エルグランは『魔法に対してきちんとイメージ出来ていれば、魔法に触れたことが無くても平常でいられるのでは』と」

「はあはあ、でもまあ2人とも似てますね」

「ヘザーは『元々使おうとしなかっただけで2人には水属性の資質があった、アレクは雷属性の資質が無かったのを無理やり引き出したのでああなった』じゃ」

「ヘザー先輩だけ大分違いますね…
 そういえば新しい属性を取りたいって言いませんもんね、そういう考え方だからか…」

うんうん、とおじいちゃんは頷いた。

「グロリオサ家は魔道士の家系のようで、火属性の使い手として有名でな、戦で前衛に出ることもあるぐらいの武闘派で、だから騎士爵を与えられた。
 それが、ヘザーはあのとおり…土属性で、性格も優しいし、とても前衛に出られるタイプではない。
 それで周りから「資質がない」と随分言われて育ったようで、火も雷も、自分に資質のない属性だと思い込んでおるんじゃろうなあ…2つとも、攻撃魔法のイメージが強いしの。
 …じゃが、最近は火属性も攻撃ばかりでないと思い始めとるようでな」

「あら、いい傾向じゃないですか」

「何を他人事みたいに…きっかけはお前さんの「ちょっとファイヤー」じゃろうが」

「えー!あれー!?」

そういえば、すごい勢いで話しかけられたな。

「生活の中で火は欠かせんもんじゃ、ということが分かったんじゃな…去年の論文テーマ、覚えとるじゃろ?」

「たしか「生活の中で活かす魔法技術」…」 

「そうじゃ、魔獣を殺したり戦争で人を殺したりする魔法ばかり目立っておるが、そもそも戦争でもない限りは当たり一面火の海にする魔法なんぞ持っていてもどうしようもなかろう?
 グロリオサ家の悩みでもある「使い所が無くて魔力が鍛えられない」問題も解決できるとあって、ようやく家族からは1人前として扱われるようになったようじゃが…
 まあそれでも、昔から言われ続けた「資質がない」という言葉は抜けんのじゃろうな」

そういえば、自分だけしょぼいとか言ってたなあ。

「なかなか複雑なご家庭なんですね」
「魔力の大きい者の家は、大抵複雑な事情があったりするもんじゃからのぉ…
 カートの実家のリリー家にしてもそうじゃな」

ええっ、そうなの?

「じゃあ、うちはごく普通だから…俺の魔力量って、これ以上大きくならないんですかね?」
「お前さんの家も大概複雑じゃろ」
「いやいや、ちょっと他所様より子どもの数が多くて貧乏なだけで、普通に幸せな家庭ですよ」
「…そうか?」

すると、おじいちゃんの言葉を遮るように、
殿下が一言。

「で、結局のところ、属性開放時の副反応についての件は、結論は出ていないと?」
「そうじゃな、そもそも前段階で資質の有る無しがわかる手段が無いんじゃ試しようがないわい」
「ヘザーの説の検証ができんということですね」

そうだよな…この世界、よくある「スキル鑑定」とか「魔力測定」とかがないもんな。
ステータスウィンドウも開かないし。
どういうゲームだったんだろ…

「そういえば、俺ずっと「属性をつける」とか「取る」とかって言ってたんですけど、先生の「属性を開放する」って言葉、イメージぴったりですね」
「じゃろ?」

おじいちゃん先生のドヤ顔を見て、殿下が言った。

「じじいは普通だ。
 お前にそういう言葉のセンスがないだけだ」
「ええー!?ひどい!」

そんなことないですよね!とおじいちゃん先生の方を見たら、目をそらされた。



……うそやん?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷徹女王の中身はモノグサ少女でした ~魔女に呪われ国を奪われた私ですが、復讐とか面倒なのでのんびりセカンドライフを目指します~

日之影ソラ
ファンタジー
タイトル統一しました! 小説家になろうにて先行公開中 https://ncode.syosetu.com/n5925iz/ 残虐非道の鬼女王。若くして女王になったアリエルは、自国を導き反映させるため、あらゆる手段を尽くした。時に非道とも言える手段を使ったことから、一部の人間からは情の通じない王として恐れられている。しかし彼女のおかげで王国は繁栄し、王国の人々に支持されていた。 だが、そんな彼女の内心は、女王になんてなりたくなかったと嘆いている。前世では一般人だった彼女は、ぐーたらと自由に生きることが夢だった。そんな夢は叶わず、人々に求められるまま女王として振る舞う。 そんなある日、目が覚めると彼女は少女になっていた。 実の姉が魔女と結託し、アリエルを陥れようとしたのだ。女王の地位を奪われたアリエルは復讐を決意……なーんてするわけもなく! ちょうどいい機会だし、このままセカンドライフを送ろう! 彼女はむしろ喜んだ。

【完結】優しくしないで

にゃーつ
BL
幼少期からの虐待でボロボロになっていたところを武田組若頭に拾ってもらう千秋。 虐待や暴力により心を閉ざしてしまう。 そんな時に武田組で出会ったのは自分の生涯に大きく関わる1人の男の子。その男の子との出会いが千秋を大きく変える。千秋の心の傷を癒やし、千秋に笑顔を取り戻したその男の子は武田空。千秋を拾った武田組若頭の息子だった。 空への想いを自覚するも自分の過去や立場を考え悩む千秋、それとは対照的に自分の思いを曝け出し行動に起こす空。 そこで千秋が下した決断とは!? 年の差12歳 年下×年上 トラウマを抱えながらも必死に空を想う千秋、千秋のためなら周りがどうなってもいいって思うほどに千秋に執着する空。 ちーがいないと生きていけない。 空がいないと不安。 愛を知らなかった千秋が空から大きすぎる愛を注がれる話。 初作品です 完結しました。 2/9 BL 31位!!!!

駄菓子屋継いだらロリハーレム

樋川カイト
恋愛
「道楽で始めた駄菓子屋を継ぐ」という条件で祖父の遺産を相続した青年。 彼にとってその条件は、まさに夢の世界への片道切符だった。 次々にやってくる魅力的なロリっ子たちの誘惑に、ロリコンを隠して生きてきた青年は耐え切ることができるのだろうか?(できません) ※この物語はフィクションです。実在する地名・人物・団体とは一切関係ありません。 ※作中での行為を実際に行った場合、法律に違反してしまう可能性がありますのでご注意ください。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

ある公爵令嬢の生涯

ユウ
恋愛
伯爵令嬢のエステルには妹がいた。 妖精姫と呼ばれ両親からも愛され周りからも無条件に愛される。 婚約者までも妹に奪われ婚約者を譲るように言われてしまう。 そして最後には妹を陥れようとした罪で断罪されてしまうが… 気づくとエステルに転生していた。 再び前世繰り返すことになると思いきや。 エステルは家族を見限り自立を決意するのだが… *** タイトルを変更しました!

婚約破棄された公爵令嬢は、真実の愛を証明したい

香月文香
恋愛
「リリィ、僕は真実の愛を見つけたんだ!」 王太子エリックの婚約者であるリリアーナ・ミュラーは、舞踏会で婚約破棄される。エリックは男爵令嬢を愛してしまい、彼女以外考えられないというのだ。 リリアーナの脳裏をよぎったのは、十年前、借金のかたに商人に嫁いだ姉の言葉。 『リリィ、私は真実の愛を見つけたわ。どんなことがあったって大丈夫よ』 そう笑って消えた姉は、五年前、首なし死体となって娼館で見つかった。 真実の愛に浮かれる王太子と男爵令嬢を前に、リリアーナは決意する。 ——私はこの二人を利用する。 ありとあらゆる苦難を与え、そして、二人が愛によって結ばれるハッピーエンドを見届けてやる。 ——それこそが真実の愛の証明になるから。 これは、婚約破棄された公爵令嬢が真実の愛を見つけるお話。 ※6/15 20:37に一部改稿しました。

ヤンデレ気味の金髪碧眼ハーフの美少年に懐かれた結果、立派なヤンデレ美青年へと成長した彼に迫られ食べられたが早まったかもしれない件について。

宝楓カチカ🌹
BL
諸事情により預かった天使のような美貌を持つヤンデレ気味の金髪碧眼ハーフの美少年(6歳)に懐かれた平々凡々とした鈴木春人くん(14歳)が十数年後、身長187.3cmのヤンデレ科ヤンデレ属に属する立派なヤンデレ美青年へと成長したかつてのヤンデレ気味のハーフ美少年に迫られ食べられて早まったかなあなんて思ってしまうお話。 ※閲覧は自己責任でお願いします。ムーンライトノベルズ様にも掲載させて頂いております(タイトルは微妙に異なります)(文字数制限でタイトル入りきりませんでした) ※※R18シーンには*つけてます。

運命の選択が見えるのですが、どちらを選べば幸せになれますか? ~私の人生はバッドエンド率99.99%らしいです~

日之影ソラ
恋愛
第六王女として生を受けたアイリスには運命の選択肢が見える。選んだ選択肢で未来が大きく変わり、最悪の場合は死へ繋がってしまうのだが……彼女は何度も選択を間違え、死んではやり直してを繰り返していた。 女神様曰く、彼女の先祖が大罪を犯したせいで末代まで呪われてしまっているらしい。その呪いによって彼女の未来は、99.99%がバッドエンドに設定されていた。 婚約破棄、暗殺、病気、仲たがい。 あらゆる不幸が彼女を襲う。 果たしてアイリスは幸福な未来にたどり着けるのか? 選択肢を見る力を駆使して運命を切り開け!

処理中です...