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学園1年目

四人目なわけない

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授業やカリキュラムの説明が終わり、今日は終了。

お隣の国の王子様から
「両国の親睦を深める為に昼食会をしませんか」
と素敵なご提案を頂き、エルグラン王子とアルファード殿下を学園のレストランに連れて行った。
ここは給仕さんも執事さんも近衛の人も来てくれるから大丈夫!

俺はようやく自由になった。

…あいつにYESと言わせるのに疲れた…。

あいつ、
「今日は都合がつかない」
とか言いやがってよ…
エルグラン王子は悲しそうな顔するしよ…
だから
「両国の友好な関係作りはこういうとこからコツコツとやらなきゃだめなんだろ?子どもの時、俺にそう教えたのは殿下じゃねーか。ああエルグラン殿下、都合は私が付けてまいりますからご心配なく」
って、何とか宥めたんだけど、今度は「都合などつけなくていい」とか何とかゴネやがって、ほんとどうにかしてくれよ。

お前、その子を攻略しなきゃならないんだぜ?
思い出が何なのか分からないから、とにかくお誘いには全部乗っとけっつーの。

俺だって、相手がエルグラン王子ならきっぱり諦めもつくわ。

向こうは王子。
うちは伯爵家、しかも俺、十二男。
身分が違いすぎるだろ?



というわけで、俺も何か食いに行こ~っと。
ふんふふーん…食堂で1番安い飯は…あれだ!
ホットドッグ!飲み物は…水だな。タダだし。
いつ呼び出されるかわかんねーし、さっさとその辺で食っちまおう。

いただきまーす!

ぱく。
もぐもぐ。
………。
「なんじゃこりゃあぁ!」
ソーセージがボイルされてねえ!パンもトーストされてねえ!全部が冷てえ!……つまりイマイチ。

でも、こんなときは…!

「ちょっとファイヤー」パチパチ…こんがり。

ふふん、この「ちょっとシリーズ」こそ、俺が編み出した裏ワザの1つなのさ!

前世で読んだ小説にあった「生活魔法」。
それを再現しようと苦節3ヶ月!…意外と早い?
でも大きくするより小さくするほうが大変でさ…
「ちょっと、ちょっとでいいのよ、ね?」
って、魔力をすこーしだけ使うの。
水道からほそーく水を出すみたいな?
よーし、焼けたぞ。
それでは改めて…いただきまーす!

「君!」
「むぐ?」

何だよ、飯食ってる時に…。
見ると、年上の学生が走り寄ってくる。

「さっきの魔法!もう一度見せてよ!ここにもホットドッグがあるからさ、これで」
「……」

なるほど、こいつも貧乏学生か。
いいぜ、貧乏同士、仲良くしようじゃないか。

「ちょっとファイヤー」パチパチ…こんがり。
「おお、すごい……!
 魔法にこんな使い道があったとは……!」
「へへ、ありがとうございます!
 俺、ルース・ユーフォルビア、1年生。
 お兄さんは?」
「あ、ああ、僕はヘザー・グロリオサ。
 魔法科の5年生だよ」
「魔法科!じゃあ、リリー君が作った新しい魔法のこと…ご存知ないですか?」

すると、お兄さんは悔しそうに言った。

「いやあ、あれは…すごいけど、実用性がね…。
 2つの属性を掛け合わせるなんて、普通はできないからね…大体の人は、属性を1つしか持てないから」
「そうなんですか!?」
「そうだね、魔法科でも2つの属性を使える人は少ないんだ。だから…選ばれた者がより選ばれた者になるための魔法、に、なっちゃうよな…」

やばい、俺、6個使えるわ。
隠しとこ…

「……残念ですね」
「その中でも、火と水を一緒に使えるなんて、なかなかいないよ。火と水は反対に位置するからね」
「そうですよね、火と水を覚えるのは難しいですよね」

リリー君の考えた魔法は、火と水を組み合わせて蒸気で爆発させる魔法らしい。
確かに、爆発させる魔法って、無かったなぁ。
蒸気…蒸気か。

「…蒸し料理に、使えないかなぁ」
「…!面白い事考えるね、君」
「将来冒険者になりたくて…野外で料理する時に使える魔法があったら、旅も楽しそうだなって」
「へー!それで「ちょっとファイヤー」なのか!」
「そうなんです!…水…水辺でキャンプするなら、火だけで何とかなるのかな?」
「なるほど?水をすぐに調達できればって事?」
「そうですそうです…、あっ、てことは……」
「あっ!そうか!2人、同じレベルの水魔法を使える人と火魔法を使える人がいれば…力を合わせて、できる!
 実用化可能だ!素晴らしい!
 ありがとう、僕、早速これを提案してみるよ!
 ルース君、ありがとう!」

ヘザー先輩は俺の手を握ってぶんぶんと振り、ありがとうをもう1回言って走って行った…先に…
殿下!?

「あたっ!」「うわっ!」

ぶつかってお互い転けた…
まさか、これって…イベント?
転校生と曲がり角でぶつかる的な?

いや、地味だろ!ねーわ!

「あ、ああ、すみません!君、大丈夫?」
「…お前、名前は?」
「えっ…」

おいおい、謎の威圧を放ってるぞあいつ…。
あれ止めないと血が流れるパターンじゃね?
俺は殿下に駆け寄り、右手を取って起こす。
ついでに先輩も両手を取って起こす。

「殿下、昼食会は終わられたのですか?」
「ああ」
「えっ…殿下?」
「ヘザー先輩、こちらはアルファード・ローズ殿下であらせられます。殿下、こちらはヘザー・グロリオサ先輩でいらっしゃいます」
「ヘザー・グロリオサ?」
「は、はい!魔法科5年、ヘザー・グロリオサと申します!父がお世話になっております!」
「ああ…魔法師団の者か」
「はい!」

すげー。
部下の名前、どこまで覚えてんだろ。
そーゆーとこはちゃんとしてんなー。

「…覚えた。行っていいぞ」
「はっ、大変失礼致しました」

今度こそ先輩は駆けていく。
リリー君の魔法、実用化できるといいな。
「ルース」
やべ、まだ怒ってる…俺は殿下に向き直る。

「…先程、友人関係は俺の許可を求めろと言った」
「はっ、申し訳ございません。
 アルファード殿下、ヘザー・グロリオサ先輩と友人になっても宜しいでしょうか?」

殿下は俺を睨めつけて…言った。

「不許可だ」
「なんでー!?」

お…横暴だ!承服しかねる!

「理由がわかりません!何でですか!?
 殿下だって、ヘザー先輩の身元をちゃんと分かってたじゃないですか!」
「許可する理由がない、だから不許可だ」

うーん参ったな、このままじゃ、友人がジョンさんだけになっちまうじゃないか…。

「殿下が覚えてるくらい優秀な方のご子息なんだから、安心して友人になれると思ったのに…」

小さな声で、ゴネてみる俺。

「何を言っている?俺は自分の下に付く者の名前は全員覚えているだけだ。優秀かどうかは関係ない」

えー!まじか!?

「そうなの!?
 やっぱすごいんだな、殿下って!」
「人の上に立つものとして当然の事だ」
「そんなことない、すごいよ!やっぱ殿下って、立派な王子様なんだな!!」
「ふん…」

あっ、機嫌直った。今だ!

「殿下、俺、殿下の部下のご子息の人品を確かめておきますので、友人になる許可をください」
「やらん」
「先輩と後輩の仲に留めておきますし…殿下の為にも、なりますから」
「……チッ」

結果、許可が出たのか出ないのかわからないけど、とりあえず丸く収まったからいいか…。

「そういえば昼食会はいかがでしたか?」
「つまらなかった」

そーゆーこと言うんじゃありません!
んもー!
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