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アルベールハッピーエンド あなたと生きる道
13 金と銀の天使
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妊娠中の性交注意(詳細なし)
出産の内容あり
***
アルベールが里には帰りたくないと言ったことと、ヴィクトリアもマグノリアに魔法を教わりたかったこともあって、山の中で思いを通わせ合った後、二人はロータスたちの家に身を寄せることにした。
既にヴィクトリアを受け入れていた一家は、アルベールのことも受け入れてくれた。ヴィクトリアの妊娠が確定し、悪阻で苦しむようになったヴィクトリアを、アルベールは幼い頃のように、真綿で包むように大切にしてくれた。
アルベールは積年の思いが成就し、ヴィクトリアと番になれたことで情緒が安定したらしく、攻撃性は鳴りを潜め、まるで人が変わったかのように優しくなった。
アルベールはヴィクトリアの身の回り世話を文字通り全部行いながら、ロータスに師事して医術を学ぶようになった。
アルベールはヴィクトリアと胎の子供と共に、里の外で生きていくことが希望のようだった。ロータスたち一家と同じように、ヴィクトリアの魔法で人間に擬態しつつ、「医師をしながらどこかの僻地で暮らしたい」とアルベールが言ったので、ヴィクトリアもそれを了承した。
ただ、『過去視』で見た時に、かなり幼い頃の話ではあるが、アルベールはロータスに激しく嫉妬していたので、師匠と弟子という関係性になる二人が、ちゃんとやっていけるのか少し心配だった。
しかし蓋を開けてみれば完全に杞憂で、ヴィクトリアが調子の良い時に階下に様子を見に行けば、アルベールとロータスの二人が仲良く談笑している場面を多く見かけた。
「ロイさん? 嫌いじゃないよ」
ある時、アルベールにロータスのことを何気なく聞いてみた所、そんな返事が返ってきた。
「何ていうか、リュージュに似てるよね」
アルベールは番になってから、リュージュの名前はあまり口にしたがらなかったので、ヴィクトリアはアルベールが自分からリュージュの名を出してきたことに驚いた。
「そうね…… 笑い方とか良く似てるかも」
リュージュとは一日だけ付き合ってすぐに別れてしまったが、一応元彼なので、アルベールが嫌な気持ちになるのではないかと、リュージュの話題は意識的に避けていた。
けれど今、リュージュに関することを発言するヴィクトリアを見ても、アルベールは愛しいものに向ける視線は変わらないままで、微笑んでいる。
番になって最初の頃に、アルベールは「里に帰りたくないのはリュージュと同じ場所でヴィーと暮らすのが嫌だから」と言っていた。けれどアルベールの心情はその頃からは少し変化しているようで、自分たちの絆は何があっても壊れないと確信しているようだった。
それはヴィクトリアも同じ気持ちだった。始まりこそ寝込みを襲われて番になったが、今はアルベールに何をされてもいいくらい、彼のすべてを愛している。
ヴィクトリアは、予定日よりも一ヶ月ほど早く女児を出産した。
早産ぎみになってしまったのは、たぶん安定期になってからもう大丈夫だろうと始めた、夜の営みのせいかもしれないと思って、ヴィクトリアは後々かなり反省した。
アルベールは色々と考えながら回数や触れ合い方を加減していたようだが、ヴィクトリアの方が蛇が欲しくてねだってしまい、気付いたら予定より早く陣痛が来ていた。
ヴィクトリアの身体はあまり出産に向いていないらしく、本当は帝王切開で産む予定だった。
「俺ならできる」と自信満々なアルベールが執刀して取り上げる予定で、傷痕も治療魔法で何とかする手筈だったが、「今なら下から産めるかも」というマグノリアの一言により、ヴィクトリアは自然分娩で出産した。
始めての出産はすごく痛かったけど、アルベールがずっとそばに付いて励ましてくれたし、三人で幸せになるのだと思えば乗り越えることができた。
「ヴィー、お疲れ様。ほら、俺たちの天使だよ。小さくてすごく可愛いね」
アルベールは柔らかく微笑みながら、腕にとても小さな赤ん坊を抱えていた。アルベールは布に包まれたその赤子を、寝台にいるヴィクトリアの横に寝かせてくれた。
「本当に天使だわ……」
ヴィクトリアは幸せ全開で感嘆しながら我が子を見つめた。小さくてとっても愛らしい宝物のようなその子は、つぶらな瞳でヴィクトリアを見ていた。その目はアルベールに似た金色で、髪の毛はヴィクトリアに似た銀髪だった。
「顔はヴィーの赤ちゃんの頃にそっくりだよ。きっとすごい美人になる。変な虫が付かないように気をつけないと」
二人は女児に、「天使」の意味を持つ「アンジェ」という名前を付けた。
出産の内容あり
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アルベールが里には帰りたくないと言ったことと、ヴィクトリアもマグノリアに魔法を教わりたかったこともあって、山の中で思いを通わせ合った後、二人はロータスたちの家に身を寄せることにした。
既にヴィクトリアを受け入れていた一家は、アルベールのことも受け入れてくれた。ヴィクトリアの妊娠が確定し、悪阻で苦しむようになったヴィクトリアを、アルベールは幼い頃のように、真綿で包むように大切にしてくれた。
アルベールは積年の思いが成就し、ヴィクトリアと番になれたことで情緒が安定したらしく、攻撃性は鳴りを潜め、まるで人が変わったかのように優しくなった。
アルベールはヴィクトリアの身の回り世話を文字通り全部行いながら、ロータスに師事して医術を学ぶようになった。
アルベールはヴィクトリアと胎の子供と共に、里の外で生きていくことが希望のようだった。ロータスたち一家と同じように、ヴィクトリアの魔法で人間に擬態しつつ、「医師をしながらどこかの僻地で暮らしたい」とアルベールが言ったので、ヴィクトリアもそれを了承した。
ただ、『過去視』で見た時に、かなり幼い頃の話ではあるが、アルベールはロータスに激しく嫉妬していたので、師匠と弟子という関係性になる二人が、ちゃんとやっていけるのか少し心配だった。
しかし蓋を開けてみれば完全に杞憂で、ヴィクトリアが調子の良い時に階下に様子を見に行けば、アルベールとロータスの二人が仲良く談笑している場面を多く見かけた。
「ロイさん? 嫌いじゃないよ」
ある時、アルベールにロータスのことを何気なく聞いてみた所、そんな返事が返ってきた。
「何ていうか、リュージュに似てるよね」
アルベールは番になってから、リュージュの名前はあまり口にしたがらなかったので、ヴィクトリアはアルベールが自分からリュージュの名を出してきたことに驚いた。
「そうね…… 笑い方とか良く似てるかも」
リュージュとは一日だけ付き合ってすぐに別れてしまったが、一応元彼なので、アルベールが嫌な気持ちになるのではないかと、リュージュの話題は意識的に避けていた。
けれど今、リュージュに関することを発言するヴィクトリアを見ても、アルベールは愛しいものに向ける視線は変わらないままで、微笑んでいる。
番になって最初の頃に、アルベールは「里に帰りたくないのはリュージュと同じ場所でヴィーと暮らすのが嫌だから」と言っていた。けれどアルベールの心情はその頃からは少し変化しているようで、自分たちの絆は何があっても壊れないと確信しているようだった。
それはヴィクトリアも同じ気持ちだった。始まりこそ寝込みを襲われて番になったが、今はアルベールに何をされてもいいくらい、彼のすべてを愛している。
ヴィクトリアは、予定日よりも一ヶ月ほど早く女児を出産した。
早産ぎみになってしまったのは、たぶん安定期になってからもう大丈夫だろうと始めた、夜の営みのせいかもしれないと思って、ヴィクトリアは後々かなり反省した。
アルベールは色々と考えながら回数や触れ合い方を加減していたようだが、ヴィクトリアの方が蛇が欲しくてねだってしまい、気付いたら予定より早く陣痛が来ていた。
ヴィクトリアの身体はあまり出産に向いていないらしく、本当は帝王切開で産む予定だった。
「俺ならできる」と自信満々なアルベールが執刀して取り上げる予定で、傷痕も治療魔法で何とかする手筈だったが、「今なら下から産めるかも」というマグノリアの一言により、ヴィクトリアは自然分娩で出産した。
始めての出産はすごく痛かったけど、アルベールがずっとそばに付いて励ましてくれたし、三人で幸せになるのだと思えば乗り越えることができた。
「ヴィー、お疲れ様。ほら、俺たちの天使だよ。小さくてすごく可愛いね」
アルベールは柔らかく微笑みながら、腕にとても小さな赤ん坊を抱えていた。アルベールは布に包まれたその赤子を、寝台にいるヴィクトリアの横に寝かせてくれた。
「本当に天使だわ……」
ヴィクトリアは幸せ全開で感嘆しながら我が子を見つめた。小さくてとっても愛らしい宝物のようなその子は、つぶらな瞳でヴィクトリアを見ていた。その目はアルベールに似た金色で、髪の毛はヴィクトリアに似た銀髪だった。
「顔はヴィーの赤ちゃんの頃にそっくりだよ。きっとすごい美人になる。変な虫が付かないように気をつけないと」
二人は女児に、「天使」の意味を持つ「アンジェ」という名前を付けた。
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