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アルベールハッピーエンド あなたと生きる道
8 絶対に許さない
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ヴィクトリアは、とりあえず馬車を降りると、川辺にいるはずの馬を見に行った。ヴィクトリアは転移魔法が使えないと思い込んでいたので、「寝ているアルベールをどうしよう問題」はあるが、とにかく逃げるためには馬が必要だと思った。
川辺に辿り着くと馬はまだそこにいた。それから、たき火の跡と、そばの地面に刺さったままの魚串焼きが視界に入った。
(私はどうしてあの時、急に眠ってしまったのかしら……)
ヴィクトリアは、もしかしたらアルベールが何かしたんじゃないかと疑い、現場の残り香を嗅ごうとしたが、魚と香草の焼けた匂いに邪魔されて上手く探れなかった。
嗅覚で探るのは諦めたが、それでも不思議に思って考え込んでいると、いきなり、頭の中に現在目の前にある光景とは全く別の絵が浮かんできた。
それは今の憎たらしい感じとは違って、もっとずっと可愛らしい子供のアルベールが、自宅で本を読んでいる様子だった。
ヴィクトリアはこれは何かの魔法のようだと驚きつつ、本好きの彼女は子供のアルベールが何を読んでいるか気になり、絵の中で広げられている本の中身を注視した。
そこには「麻酔草」の文字があり、麻酔草の写真と共に詳しい解説が載っていた。
次いで、絵が切り替わり、大人になった今のアルベールが山の中を歩き回っている図が浮かんできた。
絵の中のアルベールはふと歩みを止め、足元にあった草――本に載っていた写真にそっくりな草――を採取すると、口元にニヤッと悪そうな笑みを浮かべていた――――
「……何よ、これ…………」
ヴィクトリアは図らずも『過去視』を発動させていたわけだが、それによって、自分が急に寝てしまったのではなくて、アルベールに嵌められたのだと知った。
「信じられない!」
アルベールは処刑場でレインを「卑怯」だと言っていたが、ヴィクトリアにしてみればアルベールこそがとんでもない卑劣漢だった。
ヴィクトリアはアルベールに対して怒りしか湧かなかったし、大切にされていないと猛烈に感じてしまって、悲しかった。
そして現在ヴィクトリアは、かなり離れた場所から『遠視の魔法』を使って、アルベールの乗る馬車を見守っていた。
アルベールの行為にはムカムカしていたが、ヴィクトリアはいきなり使えるようになった『過去視』によって、かつて自分が子供の頃に魔法書を読んでいた時の絵を見ることができた。
ヴィクトリアは忘れかけていた魔法書の内容を全て読んだ。『解毒魔法』についての記載も読み込み、『遠視の魔法』を含む他の魔法も使えるようになった。
それから『転移魔法』についての記述も熟読し、試しに使ってみたら成功した。処刑場で転移魔法が使えなかったのは、『転移魔法封じの魔法』を使われていたからだと理解した。
ヴィクトリアは転移魔法でアルベールから逃げるつもりだった。
会得した『解毒魔法』をアルベールにかけておいたので、このあとアルベールが一人になってしまっても、倒れることはないはずだ。
ただし、「服を着せる魔法」みたいな記述はなかったので、アルベールは未だに全裸だし寝ている。
寝込みを人間たちに襲われて死なれてしまったら後味が悪いので、ヴィクトリアはアルベールが起きるまでは見守ろうと思っていた。
アルベールが一人でも逃げられるように、馬はちゃんと馬車に繋いで戻してある。
ヴィクトリアはアルベールとここで「別れる」つもりだった。
アルベールと番になったことは、正直半信半疑である。
(何かの理由でアルとは本当の番になっていないのかもしれない。もしくは、私が獣人として欠陥があるのかも……)
レインへの『番の呪い』にかかった後は、『番の呪い』であっても、レインへの愛情が湧き出る泉のように溢れてきて幸福感を味わったというのに、現在、アルベールに対するそのような感情はほぼ感じない。
むしろ、今は自分を罠に嵌めて強姦してきたアルベールに対しての憎々しさの方が強い。
番ができたらきっと幸せになれるはずと思っていたのに、想像していた感じとはだいぶ違っていた。
ただ、ヴィクトリアは自分のレインに対する『番の呪い』については、アルベールに抱かれたことで解けたのではないかと分析していた。
今、レインに対しては恋心よりも、レインに殺されかかったことへの落胆と、何も償えなかったという罪悪感の方が強い。
アルベールと関係する前までは確かにあったレインへの好意は消えてしまった気がした。
ヴィクトリアはアルベールから離れた後はマグノリアを頼ろうと思っていた。『真眼』持ちの彼女ならば、ヴィクトリアの今の状態を正確に見抜いてくれるはずだと思った。
そして、もしもやっぱりアルベールと番になっていたとしても、番関係を無効にできるような魔法は何かないかと、マグノリアに相談するつもりだった。
アルベールはヴィクトリアの意志を完全無視して番になってきたのだから、こっちだって勝手に番をやめてやろうと思った。
そんなことを考えると、胸が締め付けられて涙がはらはらと流れてきてしまうのだが、ヴィクトリアはアルベールを絶対に許さないつもりだった。
川辺に辿り着くと馬はまだそこにいた。それから、たき火の跡と、そばの地面に刺さったままの魚串焼きが視界に入った。
(私はどうしてあの時、急に眠ってしまったのかしら……)
ヴィクトリアは、もしかしたらアルベールが何かしたんじゃないかと疑い、現場の残り香を嗅ごうとしたが、魚と香草の焼けた匂いに邪魔されて上手く探れなかった。
嗅覚で探るのは諦めたが、それでも不思議に思って考え込んでいると、いきなり、頭の中に現在目の前にある光景とは全く別の絵が浮かんできた。
それは今の憎たらしい感じとは違って、もっとずっと可愛らしい子供のアルベールが、自宅で本を読んでいる様子だった。
ヴィクトリアはこれは何かの魔法のようだと驚きつつ、本好きの彼女は子供のアルベールが何を読んでいるか気になり、絵の中で広げられている本の中身を注視した。
そこには「麻酔草」の文字があり、麻酔草の写真と共に詳しい解説が載っていた。
次いで、絵が切り替わり、大人になった今のアルベールが山の中を歩き回っている図が浮かんできた。
絵の中のアルベールはふと歩みを止め、足元にあった草――本に載っていた写真にそっくりな草――を採取すると、口元にニヤッと悪そうな笑みを浮かべていた――――
「……何よ、これ…………」
ヴィクトリアは図らずも『過去視』を発動させていたわけだが、それによって、自分が急に寝てしまったのではなくて、アルベールに嵌められたのだと知った。
「信じられない!」
アルベールは処刑場でレインを「卑怯」だと言っていたが、ヴィクトリアにしてみればアルベールこそがとんでもない卑劣漢だった。
ヴィクトリアはアルベールに対して怒りしか湧かなかったし、大切にされていないと猛烈に感じてしまって、悲しかった。
そして現在ヴィクトリアは、かなり離れた場所から『遠視の魔法』を使って、アルベールの乗る馬車を見守っていた。
アルベールの行為にはムカムカしていたが、ヴィクトリアはいきなり使えるようになった『過去視』によって、かつて自分が子供の頃に魔法書を読んでいた時の絵を見ることができた。
ヴィクトリアは忘れかけていた魔法書の内容を全て読んだ。『解毒魔法』についての記載も読み込み、『遠視の魔法』を含む他の魔法も使えるようになった。
それから『転移魔法』についての記述も熟読し、試しに使ってみたら成功した。処刑場で転移魔法が使えなかったのは、『転移魔法封じの魔法』を使われていたからだと理解した。
ヴィクトリアは転移魔法でアルベールから逃げるつもりだった。
会得した『解毒魔法』をアルベールにかけておいたので、このあとアルベールが一人になってしまっても、倒れることはないはずだ。
ただし、「服を着せる魔法」みたいな記述はなかったので、アルベールは未だに全裸だし寝ている。
寝込みを人間たちに襲われて死なれてしまったら後味が悪いので、ヴィクトリアはアルベールが起きるまでは見守ろうと思っていた。
アルベールが一人でも逃げられるように、馬はちゃんと馬車に繋いで戻してある。
ヴィクトリアはアルベールとここで「別れる」つもりだった。
アルベールと番になったことは、正直半信半疑である。
(何かの理由でアルとは本当の番になっていないのかもしれない。もしくは、私が獣人として欠陥があるのかも……)
レインへの『番の呪い』にかかった後は、『番の呪い』であっても、レインへの愛情が湧き出る泉のように溢れてきて幸福感を味わったというのに、現在、アルベールに対するそのような感情はほぼ感じない。
むしろ、今は自分を罠に嵌めて強姦してきたアルベールに対しての憎々しさの方が強い。
番ができたらきっと幸せになれるはずと思っていたのに、想像していた感じとはだいぶ違っていた。
ただ、ヴィクトリアは自分のレインに対する『番の呪い』については、アルベールに抱かれたことで解けたのではないかと分析していた。
今、レインに対しては恋心よりも、レインに殺されかかったことへの落胆と、何も償えなかったという罪悪感の方が強い。
アルベールと関係する前までは確かにあったレインへの好意は消えてしまった気がした。
ヴィクトリアはアルベールから離れた後はマグノリアを頼ろうと思っていた。『真眼』持ちの彼女ならば、ヴィクトリアの今の状態を正確に見抜いてくれるはずだと思った。
そして、もしもやっぱりアルベールと番になっていたとしても、番関係を無効にできるような魔法は何かないかと、マグノリアに相談するつもりだった。
アルベールはヴィクトリアの意志を完全無視して番になってきたのだから、こっちだって勝手に番をやめてやろうと思った。
そんなことを考えると、胸が締め付けられて涙がはらはらと流れてきてしまうのだが、ヴィクトリアはアルベールを絶対に許さないつもりだった。
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