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処刑場編
121 光と闇の魔法使い(セシル視点→ヴィクトリア視点)
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注)欠損表現あり
***
「駄目だ! 次に打ち込まれる攻撃で心臓を貫かれて兄さんは死ぬ! 兄さん!」
長兄ジュリアスの残されていたもう片方の目が抉られた直後、セシルのそばにいた次兄シリウスが青褪めた顔でそう叫んだ。
シリウスは『未来視』の力を発現させたばかりだ。『未来視』でジュリアスが死ぬ瞬間の絵を視たらしい。
セシルは焦った。ジュリアスは絶対に死なせたくなかった。
目や腕がなくたって、この先に光属性の魔法使いが現れれば、元に戻すことができる。だが、死んでしまったら、もうどうにもならない。
(死者を蘇らせる禁断魔法はあることにはあるけど、それを使用した場合の被害を考えると…………)
たとえリィが悲しんだとしても、その魔法だけは絶対に使ってはいけないとセシルは思っていた。
(何とかしたい、何とかしなきゃ)
中に入れる突破口になりそうなのは、魔力の受け渡しのためにジュリアスが作った、闇の壁の一部に出現しているあの渦巻きくらいだ。
しかし、そこを通れるのは魔力のような形を持たないものだけで、自分の身体がそれを通り抜けて中に入るのは無理だ。
闇の中ではシドがジュリアスを追い詰めて精神を揺さぶるための言葉を吐いている。不安を煽るようなやり口がまるで悪魔みたいだとセシルは思った。
精神力を強く持っているはずのジュリアスでも、シドの言葉に動揺を禁じ得ないでいる。獣人にとって番は最大の急所だった。
「兄さん! シドの言葉に惑わされるな! フィーの愛を信じろ!」
隣でシリウスがジュリアスに向かって叫んでいる。
次兄シリウスが説得しても、ジュリアスは戦いをやめなかった。しかし、ジュリアスが愛してやまないもう一人がこの場に現れれば、或いは――――
セシルがそう考えた時だった。
セシルが頭に思い浮かべたまさにその人物が、父アークと共にこの処刑場に現れた。
「――――ジュリアス!!」
長い灰色の髪を持つジュリアスの恋人フィオナが、闇の中にいるジュリアスに向かって叫んだ。
(間に合うか、頼む! 届け!)
セシルはフィオナとアークが先程までしていたやり取りを、自らの強力すぎる『過去視』の力で視た。
そして、そのままの情景を、闇の渦巻きを通してジュリアスに『視せた』。
『――――たとえジュリアスの正体が獣人であっても、私はジュリアスを愛しています。この思いは、どんなことが起こっても、絶対に変わりません』
******
シドがジュリアスの心臓に向かって剣を突き刺そうとする。ヴィクトリアがもう駄目かと思ったその刹那、突然、暗闇に包まれていた視界に光が現れた。
それはジュリアスが治癒魔法を使った時に現れた柔らかな光に似ていたが、そばにいたシドやヴィクトリアの姿までも包み込む巨大すぎる光だった。
暗闇の中にいたせいで目が慣れず、眩しすぎると感じたヴィクトリアは目を閉じた。
シドもジュリアスから発せられる光がこれまでとは質が違うと感じたのか、途中で攻撃を止めて飛び退り、距離を取った。
光が収まって再び辺りが暗闇に覆われた時、ヴィクトリアは嗅覚でジュリアスの失われた両腕が元に戻っていることに気付いた。
(おそらく、両目も…………)
――――闇魔法、暗黒の穴……
ジュリアスが何事かを呟いた直後、これまでとは比べ物にならない数の、巨大すぎる圧縮された空気の塊が、四方八方に出現した。
***
「駄目だ! 次に打ち込まれる攻撃で心臓を貫かれて兄さんは死ぬ! 兄さん!」
長兄ジュリアスの残されていたもう片方の目が抉られた直後、セシルのそばにいた次兄シリウスが青褪めた顔でそう叫んだ。
シリウスは『未来視』の力を発現させたばかりだ。『未来視』でジュリアスが死ぬ瞬間の絵を視たらしい。
セシルは焦った。ジュリアスは絶対に死なせたくなかった。
目や腕がなくたって、この先に光属性の魔法使いが現れれば、元に戻すことができる。だが、死んでしまったら、もうどうにもならない。
(死者を蘇らせる禁断魔法はあることにはあるけど、それを使用した場合の被害を考えると…………)
たとえリィが悲しんだとしても、その魔法だけは絶対に使ってはいけないとセシルは思っていた。
(何とかしたい、何とかしなきゃ)
中に入れる突破口になりそうなのは、魔力の受け渡しのためにジュリアスが作った、闇の壁の一部に出現しているあの渦巻きくらいだ。
しかし、そこを通れるのは魔力のような形を持たないものだけで、自分の身体がそれを通り抜けて中に入るのは無理だ。
闇の中ではシドがジュリアスを追い詰めて精神を揺さぶるための言葉を吐いている。不安を煽るようなやり口がまるで悪魔みたいだとセシルは思った。
精神力を強く持っているはずのジュリアスでも、シドの言葉に動揺を禁じ得ないでいる。獣人にとって番は最大の急所だった。
「兄さん! シドの言葉に惑わされるな! フィーの愛を信じろ!」
隣でシリウスがジュリアスに向かって叫んでいる。
次兄シリウスが説得しても、ジュリアスは戦いをやめなかった。しかし、ジュリアスが愛してやまないもう一人がこの場に現れれば、或いは――――
セシルがそう考えた時だった。
セシルが頭に思い浮かべたまさにその人物が、父アークと共にこの処刑場に現れた。
「――――ジュリアス!!」
長い灰色の髪を持つジュリアスの恋人フィオナが、闇の中にいるジュリアスに向かって叫んだ。
(間に合うか、頼む! 届け!)
セシルはフィオナとアークが先程までしていたやり取りを、自らの強力すぎる『過去視』の力で視た。
そして、そのままの情景を、闇の渦巻きを通してジュリアスに『視せた』。
『――――たとえジュリアスの正体が獣人であっても、私はジュリアスを愛しています。この思いは、どんなことが起こっても、絶対に変わりません』
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シドがジュリアスの心臓に向かって剣を突き刺そうとする。ヴィクトリアがもう駄目かと思ったその刹那、突然、暗闇に包まれていた視界に光が現れた。
それはジュリアスが治癒魔法を使った時に現れた柔らかな光に似ていたが、そばにいたシドやヴィクトリアの姿までも包み込む巨大すぎる光だった。
暗闇の中にいたせいで目が慣れず、眩しすぎると感じたヴィクトリアは目を閉じた。
シドもジュリアスから発せられる光がこれまでとは質が違うと感じたのか、途中で攻撃を止めて飛び退り、距離を取った。
光が収まって再び辺りが暗闇に覆われた時、ヴィクトリアは嗅覚でジュリアスの失われた両腕が元に戻っていることに気付いた。
(おそらく、両目も…………)
――――闇魔法、暗黒の穴……
ジュリアスが何事かを呟いた直後、これまでとは比べ物にならない数の、巨大すぎる圧縮された空気の塊が、四方八方に出現した。
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