血塗られた桃太郎

ushiraku

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桃太郎

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 それから、しばらくの時が経ちました。

 村中の家を全て訪ねましたが、赤ん坊のことを知っている家庭はありませんでした。

 おじいさんとおばあさんは、赤ん坊を自分の子供として育てることにしました。
 
 桃から出てきたことと、桃のようにまんまるとした見た目をかけ、二人はこの子のことを『桃太郎』と名付けました。



 ある日、桃太郎は二人に言いました。

「じっちゃん、ばっちゃん。鬼ヶ島に悪い鬼が住んでると聞いたんやけども」
「だ、誰から聞いたとや?」
「隣の家の、金太郎や」

 この頃、悪い鬼が村の近くに来て悪さをするという事件が流行していました。
 大人たちは子供に黙っていましたが、なかなかどうして。噂というものは完全には黙秘できないものです。

「……そう、じゃな。実は最近鬼が来てな。農作物を奪っていったり、若い女子に襲いかかったりする事件が後を絶たんのじゃ」
「わたしたちも警戒はしてるんやけども、なかなか難しいねぇ」

 おじいさんとおばあさんは困った顔で、そう言いました。

「そっか。簡単な話じゃん。おれが鬼狩ってくるよ。おばあさん、きび団子作って!」
「いやいやいや!今の話聞いとったか? 鬼はとてつもなく恐ろしいものじゃ。殺されるぞ」

 おじいさんは慌てながらも、桃太郎に注意を促しました。

「じっちゃんさ、確かに危険はあると思うけど。でも、誰かが退治せんと、いつかは村が全滅するぜ?」
「……」

 桃太郎の正論に、おじいさんとおばあさんは言葉が出ませんでした。



 結局、桃太郎の言う通りに、おばあさんはきび団子を作りました。

「じゃ、行ってくるわ。鬼退治が終わったら、また三人で楽しく暮らそ!」

 桃太郎はおばあさんからきび団子を受け取り、腰の袋に入れました。

「道中、気をつけてな。くれぐれも、無理だけはしないでおくれ」

 おじいさんとおばあさんの見送りを背に、桃太郎は鬼ヶ島に向けて旅立ちました。
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