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茶会
喧嘩
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「王妃様のお茶会に呼ばれたのは私なのに、あなたから断るなんてそんな失礼なことないわ」
「じゃあ、君から断りの手紙を送ればいい」
「嫌よ。もう行くって決めたもの」
シエラは、自分の主張が間違っているとは思えなかった。逆に今まで、公爵夫人として公の場に滅多に姿を見せない方が問題だったのだ。自分の人見知りと、表情の乏しさがあまりにひどいために社交界での評判が下がることを危惧していたが、今回は王妃様に断りを入れる方が失礼にあたり、評判が落ちる可能性が高い。社交界での評判というものは、あながち馬鹿に出来たものではないのだ。極端な例だが、社交界での評判が著しく落ちれば、国王の信頼をも失い、最悪の場合は地位を失うことだってある。グレイは国王夫妻ととても仲睦まじくしているから、よほどのことが無い限り地位を失うことはないが、シエラの評判が著しく下がれば、周囲の貴族達は国王夫妻の信頼を勝ち得ているグレイの評判を意図的に落としてやろうと画策するかもしれない。悲しきかな。社交界とは一見華やかそうに見えてそのような場なのだ。
「私が行くなと言っているのに?」
グレイはぞっとするほど冷たい声を放った。本気で怒っているのだと、シエラには分かった。それでも、シエラは頷かない。
「ちゃんとした理由を話してくれないと嫌よ」
「……」
押し黙るグレイに対して、シエラは溜息を吐く。
「行くことが公爵家のためにならないのなら、行かない。でも今回は違うもの」
きっぱりと言ってのけたシエラをグレイは苦々しそうに見つめた。しばし睨み合いのような時間が続く。それでもシエラは意見を変えなかった。
「……はあ、分かったよ。好きにすればいい」
折れたのはグレイだった。彼は立ち上がり、不機嫌に食堂を去っていく。
(なによ。私は間違ったことなんて1つも言っていないわ)
寂しい気持ちになる。少し強く言い過ぎてしまったかもしれない。王妃様の茶会に参加していいかと聞いたのは自分だ。グレイがきちんと理由を言って、それに納得できたら、どれだけ王妃様に失礼でも、断りをいれることだって視野に入れていたのに。
(私の愛想がないから?だから……公の場に出したくないのかしら)
グレイは優しいから、それを口に出したくないだけだろうか。けれど、優しいというには今日の態度は変だった。それについてはとても気になったが、グレイが「好きにすればいい」と言った以上、シエラは自分の意思に従って準備することにした。
(返事を書かなくちゃ……)
シエラはさっそく手紙をしたためる。
茶会にはアマリアもいる。だから何も心配はいらない。祖父が礼儀についてはうるさかったため、乏しい表情を補って余りある知識と教養は身に着けてきた。それをいよいよ発揮する時がきたのだ。何の気負いをする必要はない。
シエラは萎れてしまいそうな心を叱咤して、手紙を綴るペンに力を込めた。
「じゃあ、君から断りの手紙を送ればいい」
「嫌よ。もう行くって決めたもの」
シエラは、自分の主張が間違っているとは思えなかった。逆に今まで、公爵夫人として公の場に滅多に姿を見せない方が問題だったのだ。自分の人見知りと、表情の乏しさがあまりにひどいために社交界での評判が下がることを危惧していたが、今回は王妃様に断りを入れる方が失礼にあたり、評判が落ちる可能性が高い。社交界での評判というものは、あながち馬鹿に出来たものではないのだ。極端な例だが、社交界での評判が著しく落ちれば、国王の信頼をも失い、最悪の場合は地位を失うことだってある。グレイは国王夫妻ととても仲睦まじくしているから、よほどのことが無い限り地位を失うことはないが、シエラの評判が著しく下がれば、周囲の貴族達は国王夫妻の信頼を勝ち得ているグレイの評判を意図的に落としてやろうと画策するかもしれない。悲しきかな。社交界とは一見華やかそうに見えてそのような場なのだ。
「私が行くなと言っているのに?」
グレイはぞっとするほど冷たい声を放った。本気で怒っているのだと、シエラには分かった。それでも、シエラは頷かない。
「ちゃんとした理由を話してくれないと嫌よ」
「……」
押し黙るグレイに対して、シエラは溜息を吐く。
「行くことが公爵家のためにならないのなら、行かない。でも今回は違うもの」
きっぱりと言ってのけたシエラをグレイは苦々しそうに見つめた。しばし睨み合いのような時間が続く。それでもシエラは意見を変えなかった。
「……はあ、分かったよ。好きにすればいい」
折れたのはグレイだった。彼は立ち上がり、不機嫌に食堂を去っていく。
(なによ。私は間違ったことなんて1つも言っていないわ)
寂しい気持ちになる。少し強く言い過ぎてしまったかもしれない。王妃様の茶会に参加していいかと聞いたのは自分だ。グレイがきちんと理由を言って、それに納得できたら、どれだけ王妃様に失礼でも、断りをいれることだって視野に入れていたのに。
(私の愛想がないから?だから……公の場に出したくないのかしら)
グレイは優しいから、それを口に出したくないだけだろうか。けれど、優しいというには今日の態度は変だった。それについてはとても気になったが、グレイが「好きにすればいい」と言った以上、シエラは自分の意思に従って準備することにした。
(返事を書かなくちゃ……)
シエラはさっそく手紙をしたためる。
茶会にはアマリアもいる。だから何も心配はいらない。祖父が礼儀についてはうるさかったため、乏しい表情を補って余りある知識と教養は身に着けてきた。それをいよいよ発揮する時がきたのだ。何の気負いをする必要はない。
シエラは萎れてしまいそうな心を叱咤して、手紙を綴るペンに力を込めた。
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