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39 光る君 衣配り
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年も暮れ玉鬘が嫁いだ事で、六条院も落ち着きを取り戻してきた。
今は髭黒の大将がこちらに通っているが、来年大将の邸の改築が終わったら引き移る予定だ。
熱烈な玉鬘推しのファン連中は大層残念がっていたが、中でも帥宮は蛍兵部卿やら蛍宮やら呼ばれて今だにからかわれている。
可愛そうだと思っていたが、本人はまんざらでも無い様子。
蛍呼びが気に入ったらしい。
えっ?
これからも、いちファンとして推し活も続ける?
モブキャラの意地がある?
はあ~そう。
何でも好きにしてくれ・・・
こっちはもう暮れの準備で忙しいんだ。
紫の上は染織や衣装仕立てのセンスもよく毎年皆に衣を配るのが通例だが、それぞれに似合う衣装を新年に着てもらおう、と、今回は自分が選ぶことにした。
同じ六条院にいても別の御殿に住んでいるから、今だに明石君と紫の上は会ったことがない。
見立ても難しいだろうからな。
紫の上の元にいるちい姫にも明石君は会いたいだろうが、流石に入道の娘。
思慮深く、自分が会いに行ったらちい姫を混乱させて、紫の上にも気を使わせてしまう、と、自ら自重している。
ちい姫が受領の家柄と言われないよう気を使いながらひっそりと過ごしている彼女に、紫の上は、ちい姫に覚えたばかりの字で手紙を書かせていた。
思慮深い生みの親と優しい育ての親に囲まれて、ちい姫は幸せだ。
紫の上の元に赴くと、色とりどりの衣装が山程並べられている。
まず紫の上には華やかな赤系を選ぶ。
この時代、季節や身分などで衣装にも禁色があった。
赤や紫など、特定の色は勅許がないと着ることができないが、この私に許されない色はない。
特権はどんどん使わなきゃね。
彼女に選んだのは葡萄色の小袿に紅梅表、濃い紅梅の重ねで、普通の人では衣装に埋もれてしまいそうな華やかな色使いだが、彼女の美貌なら衣装負けせず着こなすだろう。
ちい姫には桜の細長に薄紅色の重ね。
かわいいなあ!
早く着ている姿が見たい!
花散里には薄い藍色につやのある紫の練重ね。
派手ではないがスッキリとした印象だ。
キチンと邸内を整えて爽やかに住みなしている彼女にふさわしい。
玉鬘には鮮やかな赤の小袿に、若い娘らしく山吹の細長を添えて。
来年には居なくなっちゃうのか。
さみしいな。
二条院の末摘花には柳の織物に唐草模様の上品な表着。
本人とあまりにもかけ離れたイメージに、周りの女房から忍び笑いが漏れる。
ハイセンスで優雅な色使い、到底似合いそうにないが、組み合わせのセンスを学んで欲しいものだ。
毎年悩まされているが、今年も到底着れそうにもないヒドイ衣装を私に送りつけてくるつもりかなあ、、。
そもそも夫の衣装は正妻が準備するもので、末摘花が送りつけて来るのは筋違いの感があるが、あの女人は何処か一拍ズレた所がある。
しかし常陸宮家の姫ともなればぞんざいに扱うわけにもいかず、紫の上も苦笑しながらおおらかに見守ってくれている。
ま、しゃーないか。
年に一度の事だ。
ガマンガマン。
明石君には鳥や蝶の柄を織り込んだ唐風の白い小袿に、濃い紫の重、高貴で格式のある装いを選んだ。
紫の上が感心している。
会った事無いけどこれが似合う女人なら相当だと分かってるんだな。
その他出家された女人達にも鈍色の法衣や落ち着いた色の衣装を揃えて送ることにした。
今年は色々な出来事があった。侍従となっていた夕霧も、近々近衛中将となる旨決まった様だし、直房にももうシカトされずに済むしな。
年が明けたら内裏での各儀式をこの六条院でも行なおうか。
唐船を池に浮かべて楽を奏でたり、香合わせなんか楽しそうだ。
良い年になりますように、、、
今は髭黒の大将がこちらに通っているが、来年大将の邸の改築が終わったら引き移る予定だ。
熱烈な玉鬘推しのファン連中は大層残念がっていたが、中でも帥宮は蛍兵部卿やら蛍宮やら呼ばれて今だにからかわれている。
可愛そうだと思っていたが、本人はまんざらでも無い様子。
蛍呼びが気に入ったらしい。
えっ?
これからも、いちファンとして推し活も続ける?
モブキャラの意地がある?
はあ~そう。
何でも好きにしてくれ・・・
こっちはもう暮れの準備で忙しいんだ。
紫の上は染織や衣装仕立てのセンスもよく毎年皆に衣を配るのが通例だが、それぞれに似合う衣装を新年に着てもらおう、と、今回は自分が選ぶことにした。
同じ六条院にいても別の御殿に住んでいるから、今だに明石君と紫の上は会ったことがない。
見立ても難しいだろうからな。
紫の上の元にいるちい姫にも明石君は会いたいだろうが、流石に入道の娘。
思慮深く、自分が会いに行ったらちい姫を混乱させて、紫の上にも気を使わせてしまう、と、自ら自重している。
ちい姫が受領の家柄と言われないよう気を使いながらひっそりと過ごしている彼女に、紫の上は、ちい姫に覚えたばかりの字で手紙を書かせていた。
思慮深い生みの親と優しい育ての親に囲まれて、ちい姫は幸せだ。
紫の上の元に赴くと、色とりどりの衣装が山程並べられている。
まず紫の上には華やかな赤系を選ぶ。
この時代、季節や身分などで衣装にも禁色があった。
赤や紫など、特定の色は勅許がないと着ることができないが、この私に許されない色はない。
特権はどんどん使わなきゃね。
彼女に選んだのは葡萄色の小袿に紅梅表、濃い紅梅の重ねで、普通の人では衣装に埋もれてしまいそうな華やかな色使いだが、彼女の美貌なら衣装負けせず着こなすだろう。
ちい姫には桜の細長に薄紅色の重ね。
かわいいなあ!
早く着ている姿が見たい!
花散里には薄い藍色につやのある紫の練重ね。
派手ではないがスッキリとした印象だ。
キチンと邸内を整えて爽やかに住みなしている彼女にふさわしい。
玉鬘には鮮やかな赤の小袿に、若い娘らしく山吹の細長を添えて。
来年には居なくなっちゃうのか。
さみしいな。
二条院の末摘花には柳の織物に唐草模様の上品な表着。
本人とあまりにもかけ離れたイメージに、周りの女房から忍び笑いが漏れる。
ハイセンスで優雅な色使い、到底似合いそうにないが、組み合わせのセンスを学んで欲しいものだ。
毎年悩まされているが、今年も到底着れそうにもないヒドイ衣装を私に送りつけてくるつもりかなあ、、。
そもそも夫の衣装は正妻が準備するもので、末摘花が送りつけて来るのは筋違いの感があるが、あの女人は何処か一拍ズレた所がある。
しかし常陸宮家の姫ともなればぞんざいに扱うわけにもいかず、紫の上も苦笑しながらおおらかに見守ってくれている。
ま、しゃーないか。
年に一度の事だ。
ガマンガマン。
明石君には鳥や蝶の柄を織り込んだ唐風の白い小袿に、濃い紫の重、高貴で格式のある装いを選んだ。
紫の上が感心している。
会った事無いけどこれが似合う女人なら相当だと分かってるんだな。
その他出家された女人達にも鈍色の法衣や落ち着いた色の衣装を揃えて送ることにした。
今年は色々な出来事があった。侍従となっていた夕霧も、近々近衛中将となる旨決まった様だし、直房にももうシカトされずに済むしな。
年が明けたら内裏での各儀式をこの六条院でも行なおうか。
唐船を池に浮かべて楽を奏でたり、香合わせなんか楽しそうだ。
良い年になりますように、、、
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