光源氏の逆襲

東京ともりん

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33 光る君は内緒がお好き?

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豊後介が探った所、大夫の監はどうやら次男三男と結託して、強引に瑠璃姫を連れ去ろうと画策しているようだ。

いよいよ姫の身に危険が迫ってきたその夜、、
彼は密かに船を用意して、瑠璃姫と母親の乳母、姉の兵部君、侍女の三条や家臣数人と乗り込んだ。

大人数で移動するとなれば気付かれる可能性があるため、この地で縁付いた家族を残して別れを惜しみ、先行きの不安も抱えながらの逃避行だったが、真面目な長男豊後介は父の遺言通り、何とか瑠璃姫様をお守りしたい一心だったようだ。

瑠璃姫が位の高い貴族の娘らしいとまでは聞いていたが、直房の娘だってことは、父親の少弐が亡くなる前に明かしたんだそうな。


忠実な乳母と豊後介が瑠璃姫の身近にいた事が姫の幸運だった。


海賊に怯えながら危険な航海を経て何とか都にたどり着いたものの、当てにしていた知り合いはとうに居らず、今や内大臣となられた父親の元へいきなり娘でございと名乗り出ようとて、証拠もなく門前払いが関の山。

夏が過ぎる頃には生活も困窮し、家臣も散り散りになり始めた。

かくなる上は神仏にすがるしかないと思った豊後介は、まずは九州で信心していたお社と同系の岩清水八幡宮に参り、翌日長谷寺観音にお参りした。

そういや神と仏の両方にお参りするのが最近流行ってるもんな。

この長谷寺が、右近が毎年祈願に訪れていた寺だったんだ。


頼んでいた宿坊に右近達が到着すると、寺の手違いで別の一行を通してしまったらしい。
慌てて追い出そうとする寺の世話役を、気のいい右近が引き止め、幕で部屋を半分に仕切って使うことにしたんだと。

何とこの相部屋の一行が瑠璃姫達だったんだ。



右近が部屋で休んでいると、幕の向こうから声がする。
どうやら姫と呼ばれる方が慣れない歩きで足を痛めたらしく、皆で懐抱しているようだ。

お可哀想に。
何処からいらしたのかしら、などと思い、何気なし聞いていると、どうも聞き覚えのある声の様な気がする、、。
そのうち、豊後介や三条など覚えのある名前が呼ばれているあたりでハッと気がついた。

( 夕顔様の姫と姿を消していた乳母の一家では?!! )

思い切って幕の隙間から、何となく見知った顔の女房に三条、
と声をかけてみた。

すっかり田舎びて太っていた三条は、こんな所に知り合いなどいるわけがない。
お人違いでは?
などとけげんな様子だったが、豊後介が右近に気が付き大喜びの再会となったらしい。

当時3つだったろう幼子は、美しい姫に成長していた。
右近から母親の死を聞かされ涙を流していたが、ここで右近に巡り会えたのも長谷観音のおかげと、感慨深い再会を果たしたのだった。



持ち金も使い果たし願掛けを最後の望みとしていた豊後介は、すぐにでも瑠璃姫の父親、内大臣直房に取次を望んでいたが、一介の女房右近に手だてがあるはずもない。

とりあえず、と、今は右近の家に留め置いている。

とにかくこの後は私に相談の上で、、。
 右近の適切な処置だった。


そうか、あの夕顔の忘れ形見が、、、。
美しい姫に成長し、無事でいてくれたんだなあ。
と、感慨深い気持ちになった。

紫の上も、よくまあ巡り会えた事だこと、、
と、感心しきりだったが、彼女にもっともな質問をされて我に返った。

して、内大臣直房様は、殿と夕顔様の事をご存知なのですか?
と、、、。

  あっ! そうだったッ!!

そういやあの後何度も言おうとしたけど、夕顔死んじゃってるし、なんて伝えればいいんだ?
とか悩んでるうちに色々あって言いそびれてたんだった!!

マッズイなあ、、。
どーしよ。
しかも今はシカトされてる仲だし、、。


  ・・・しばらく黙ってよっと。


直房に知らせるにしても、地方で養育されていた姫が、万一粗野な田舎娘では取り持つ私もバツが悪い。

素晴らしい姫に仕立て上げて、根回しもしてから感動的な再会をさせよう。
それまでは私の娘と言う事にしておくか。
夕霧は知ったら顔に出そうだから、、、


   ・・・黙ってよっと。

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