光源氏の逆襲

東京ともりん

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27 光る君 喜びと別れ

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絵合わせの会からしばらく後、明石君から嬉しい知らせが届いた。

こちらからは言い出しかねて、尼君におまかせしていたちい姫の件だ。


明石君の方から、ちい姫を二条院で養育願いたいと言ってきたんだ。

尼君の説得が功を奏した、と、思われるが、実は明石君も内々その方が良いとは思っていたらしい。

本人も、父親の入道が大臣家から受領になってしまい、私との身分の違いに悩まされていたからな。

ただ頭では分かっていても、いざ我が子を手放すとなると、なかなか踏ん切りが付かなかったんだろう。
尼君が背中を押してくれて、ようやく決心がついたようだ。


紫の上は大喜びで、早速遊び道具やお相手の女童などを集めて迎える準備に余念がない。

彼女がこの二条院に来たときも、まだ人形遊びをするがんぜない年頃だったものな。

そんな経験もあってか毎日楽しそうに準備に追われているが、
一方で明石君の事を気にかけて、
あちらがどんなに寂しいお気持ちか、、
と、私に大堰へ行くよう促してくれる。

紫の上の良い所はこーゆートコなんだよな~。

ライバルとも言える他の女人にも優しい気持ちを向けられるのは、彼女の素晴らしい資質だ。
自分が一番だという自信の現れでもあるだろう。

まぁ、幼い時からあちこち泊まり歩く私を見ているせいで、こんなものだと刷り込まれてるって見方もあるが、。


  そして、、
 
  待ちに待ったその日

ようやく、ちい姫が二条院にやって来た。

自身で迎えに行き、抱いて連れてきたのだが、
実は車に乗る時に
「母様は?」
と聞かれ、返事に窮してしまったんだ。

明石君が機転を聞かせ、急ぎの用事を済ませて後から参る、と、その場は収まったのだが、、。

こちらに到着し、しばらくは新しい遊び道具に夢中で紫の上と遊んでいたが、眠くなり母恋しくなったのかにわかに泣き出してしまった。

子供を持ったことがない紫の上や女房達ではあやし方も分からずオロオロするばかりで、例の乳母を呼び、どうにか寝かしつけることができた。

可哀想だがこれも姫の為、、
紫の上、頑張って!・・・


しばらくはそんなことが続いていたが、乳母や紫の上の努力のかいあってか、ちい姫も紫の上になつき、機嫌の良い時も増えていった。
良かったなあ、、、。

紫の上、明石君、ありがとう。

    

そういえば、
何だかこの頃、女人達の雰囲気がすこぶる良い。


「ちい姫をこちらで養育できるのは、思慮深い明石君、尼君のおかげ、、」

「ちい姫があちらで大切にして頂けるのは、お優しい紫の上のおかげ、、」

と、紫の上と明石君の間に今までとは違う関係が一脈通じたらしい。

おかげで大堰と二条院を往復する際も双方共に気持ちよく送り出してもらえ、あまり気を使わず過ごせる様になった。

二条院の女人達も、ちい姫を中心に和やかな雰囲気で、皆平和的に楽しく穏やかな毎日を過ごしている。


 ちい姫効果って絶大だな。

 

若かりし頃は葵の上と六条御息所のバトルやら何やらで神経をすり減らしたもんだが、私を含め、皆も大人として次の世代を育む年だ。
こうでなくちゃねっ!



さて、夕霧もつつがなく殿上童を勤めているし、そろそろ次のステップを考えてやらないとな。
今は祖父である太政大臣、祖母の大宮の元に暮らしているが、もう元服も近い。
大学寮に入れても良い頃か。

そんな風に子ども達の事をあれこれ考えつつ、公私共に落ち着いた日を過ごしていたが、しばらく伏してらした姑殿、太政大臣が危篤との知らせが入った。

この時代では御長寿であったがさすがによる年波にて、眠るような最後を迎えられたのだった。

悲しい法要が続く中、今度は藤壺女院様がご病気御危篤との知らせが相次いで届き、急いで参じたのだが、、、

着いて間もないうちに静かに息を引き取られた。

あっと言う間の事だった。

憧れ続けた藤壺様が、
永遠に手の届かぬ彼方へ去ってしまった・・・

しばらくは魂が抜けたようになり、仏間にこもりこのまま出家したいと本心から願ったが、藤壺様と私の密かな御子、冷泉帝の御代の為にも今すぐの出家は許されない。



自身で叱咤激励してやっと朝堂に赴いたのは藤壺様の四十九日も終わった頃だった。

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