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1 光る君の日常
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自分はどうやらエラいウチに生まれてしまったらしい。
物心付いた時から周りの皆が自分の機嫌を伺う環境だったが、用心深く低姿勢で毎日過ごしている。
今日も惟光を伴に、弘徽殿の女御様にご機嫌伺いは欠かさない。
多分コイツが母様を殺したやつだろうなと思いながら。
なんで仇に挨拶って?
もちろん母様の様に殺されないために。
母様は皆がお上やら呼ばわる偉い人の何番目かの奥方で、自分を産んだあと他の奥方連中にいびられて死んだと自分の乳母が言っていた。
弘徽殿の女御様の自分を見る射殺すような目つきからしてコイツが主犯に違いない。
目が笑ってない笑顔がマジで怖い。
惟光はこの乳母の息子で自分の乳兄弟に当たる。
彼がいなかったら目が笑ってない笑顔の大人に囲まれ、1人寂しい孤独に耐えかねていたかも、。。
警戒心や先の事をなあんにも考えてない超ポジティブの愛すべきバカな惟光が傍らに居てくれるお陰で、必要以上に弘微殿方の警戒心を招く事もなくこれまで無事に過ごして来れた。
ちょいちょい周りの世話係が死んだり消えたりしながら未だに無事なのも、自分がめっちゃ警戒してるからだけど、惟光の嘘のない無警戒っぷりでたまたま運良く助かってると思われてる。
お陰であまり手の込んだ事されないってワケ。
サンキューな、バカな惟光!
これからも頼むぜバカな惟光!
「若様、若殿様あー!」
ん? バカな惟光の声が、、。イヤイヤ毎回バカをつけるのもさすがにやめておこうか。
何だかんだ彼のお陰で何とか過ごせているようなものだしな。
自己紹介が遅れた。
自分は光る宮と呼ばれていたが、元服後は父帝から源氏性を賜り今は光源氏の君と称されている。
母様は父帝の一番のお気に入りで桐壺の局を頂く更衣の身分だったが、大納言だった父親が早くに亡くなっていたため後宮内で誰の後見も受けられなかった。
父帝のご寵愛だけを頼りに過ごしていたが、自分が3つの頃、気の病が高じて亡くなった。
今で言ううつ病ってやつ?
そんなになるまで追い込まれたって事ね。
件の乳母によると父帝のお召にもしょっちゅうジャマされて、おいでになる清涼殿までたどり着けない事もあったとか。
賜る局は身分により決められ、更衣である母様には一番遠い場所が割り当てられていたため、他の女御方の局前を通らねばならなかったらしい。
でも廊下にウンコぶちまけてまで邪魔するか普通?
凄い執念だな。
やらされてる樋すましの女官も可哀想だが命令に背くと即殺されるからなあ。
この時代宮中といえどもトイレなどなく、樋と言うおまるの様な容器に用を足していた。
樋は樋すましと呼ばれる専用の係の女官が一回毎に洗う。
他にも夕方明かりを灯す役だとか、朝半蔀を上げる役、御髪を上げる役、料理を取り分ける役、、やたら御役の多い宮中では相当数の女官が後宮でごった返している。
気の弱い優しい母様は、公にしてこの様な弱い立場の女官たちが罰を受けるのをすら恐れ、何事も我慢して自重の日々を送っていた。
後ろ盾の無い宮中暮らしでさぞ苦しい毎日だったろ。
力と権力が無いって、
マジ辛いよな、、
母様が死んだ後、母様の実家でお祖母様に育てられていたが、そのお祖母様も数年後亡くなり、不憫に思った父帝に宮中に引き取られたのだった。
その後の元服するまでの数年間は夢の様だったなあ。
あの母様にそっくりだと皆が言う藤壺の宮様がご入内なさり、初めてお会いしたときの事は今でも忘れられない。
父帝と共に御簾の内に入って間近でお話をしたり絵物語を一緒に読んだっけ。
お側に侍ることができなくなると悟った時は、元服が恨めしかったもんだ。
藤壺の宮様は母様と違って皇家のお血筋で内親王であらせられた。
誰憚ることなくご寵愛を賜り、あの弘微殿の女御すら気を使われる事がお有りだった。
藤壺の宮様はいつもお優しく、お部屋の中は明るい笑いで一杯だった。
自分とお話なさるときの宮様の輝くような瞳。
自分のほうが年齢も近く、、
そう、
私の方が父様より相応しいんだ。
元服後、父帝は後ろ盾の無い自分を案じ、このまま不安定な立場で名ばかりの皇子として過ごすより、臣下に下して朝政に参加させた方が帝位争いでの身の危険も無いと思ったんだろう。
源氏の性を賜る皇勅を出されたのだった。
自分が生まれてすぐの頃にたまたま来日していた高麗人の占い師が、皇籍を外れて臣下になったほうが運も開け、国を左右する大物になるなどと言ったことがあるらしく、それも影響したのかも。
全く、他人事だと思って勝手な事言ってんじゃないよ。
弘微殿あたりから何か掴まされてたんじゃないのか?
これだから占い師ってのは。
でも父様、自分は臣下より皇子のままが良かったなあ。
もしかしたら皇位に付ける可能性があったかもと思っちゃうとね。
まあ皇位はともかく母様みたいにならない為に強い力と権力を手に入れての~んびり過ごすのが夢なんだ。
、、生きてればの話だけど。
あ~あ、今日も無事に過ごせますように。
惟光、いい加減にすぐそこで手を振っている私に気がついてくれ・・・庭石の後にいるわけないだろ。
物心付いた時から周りの皆が自分の機嫌を伺う環境だったが、用心深く低姿勢で毎日過ごしている。
今日も惟光を伴に、弘徽殿の女御様にご機嫌伺いは欠かさない。
多分コイツが母様を殺したやつだろうなと思いながら。
なんで仇に挨拶って?
もちろん母様の様に殺されないために。
母様は皆がお上やら呼ばわる偉い人の何番目かの奥方で、自分を産んだあと他の奥方連中にいびられて死んだと自分の乳母が言っていた。
弘徽殿の女御様の自分を見る射殺すような目つきからしてコイツが主犯に違いない。
目が笑ってない笑顔がマジで怖い。
惟光はこの乳母の息子で自分の乳兄弟に当たる。
彼がいなかったら目が笑ってない笑顔の大人に囲まれ、1人寂しい孤独に耐えかねていたかも、。。
警戒心や先の事をなあんにも考えてない超ポジティブの愛すべきバカな惟光が傍らに居てくれるお陰で、必要以上に弘微殿方の警戒心を招く事もなくこれまで無事に過ごして来れた。
ちょいちょい周りの世話係が死んだり消えたりしながら未だに無事なのも、自分がめっちゃ警戒してるからだけど、惟光の嘘のない無警戒っぷりでたまたま運良く助かってると思われてる。
お陰であまり手の込んだ事されないってワケ。
サンキューな、バカな惟光!
これからも頼むぜバカな惟光!
「若様、若殿様あー!」
ん? バカな惟光の声が、、。イヤイヤ毎回バカをつけるのもさすがにやめておこうか。
何だかんだ彼のお陰で何とか過ごせているようなものだしな。
自己紹介が遅れた。
自分は光る宮と呼ばれていたが、元服後は父帝から源氏性を賜り今は光源氏の君と称されている。
母様は父帝の一番のお気に入りで桐壺の局を頂く更衣の身分だったが、大納言だった父親が早くに亡くなっていたため後宮内で誰の後見も受けられなかった。
父帝のご寵愛だけを頼りに過ごしていたが、自分が3つの頃、気の病が高じて亡くなった。
今で言ううつ病ってやつ?
そんなになるまで追い込まれたって事ね。
件の乳母によると父帝のお召にもしょっちゅうジャマされて、おいでになる清涼殿までたどり着けない事もあったとか。
賜る局は身分により決められ、更衣である母様には一番遠い場所が割り当てられていたため、他の女御方の局前を通らねばならなかったらしい。
でも廊下にウンコぶちまけてまで邪魔するか普通?
凄い執念だな。
やらされてる樋すましの女官も可哀想だが命令に背くと即殺されるからなあ。
この時代宮中といえどもトイレなどなく、樋と言うおまるの様な容器に用を足していた。
樋は樋すましと呼ばれる専用の係の女官が一回毎に洗う。
他にも夕方明かりを灯す役だとか、朝半蔀を上げる役、御髪を上げる役、料理を取り分ける役、、やたら御役の多い宮中では相当数の女官が後宮でごった返している。
気の弱い優しい母様は、公にしてこの様な弱い立場の女官たちが罰を受けるのをすら恐れ、何事も我慢して自重の日々を送っていた。
後ろ盾の無い宮中暮らしでさぞ苦しい毎日だったろ。
力と権力が無いって、
マジ辛いよな、、
母様が死んだ後、母様の実家でお祖母様に育てられていたが、そのお祖母様も数年後亡くなり、不憫に思った父帝に宮中に引き取られたのだった。
その後の元服するまでの数年間は夢の様だったなあ。
あの母様にそっくりだと皆が言う藤壺の宮様がご入内なさり、初めてお会いしたときの事は今でも忘れられない。
父帝と共に御簾の内に入って間近でお話をしたり絵物語を一緒に読んだっけ。
お側に侍ることができなくなると悟った時は、元服が恨めしかったもんだ。
藤壺の宮様は母様と違って皇家のお血筋で内親王であらせられた。
誰憚ることなくご寵愛を賜り、あの弘微殿の女御すら気を使われる事がお有りだった。
藤壺の宮様はいつもお優しく、お部屋の中は明るい笑いで一杯だった。
自分とお話なさるときの宮様の輝くような瞳。
自分のほうが年齢も近く、、
そう、
私の方が父様より相応しいんだ。
元服後、父帝は後ろ盾の無い自分を案じ、このまま不安定な立場で名ばかりの皇子として過ごすより、臣下に下して朝政に参加させた方が帝位争いでの身の危険も無いと思ったんだろう。
源氏の性を賜る皇勅を出されたのだった。
自分が生まれてすぐの頃にたまたま来日していた高麗人の占い師が、皇籍を外れて臣下になったほうが運も開け、国を左右する大物になるなどと言ったことがあるらしく、それも影響したのかも。
全く、他人事だと思って勝手な事言ってんじゃないよ。
弘微殿あたりから何か掴まされてたんじゃないのか?
これだから占い師ってのは。
でも父様、自分は臣下より皇子のままが良かったなあ。
もしかしたら皇位に付ける可能性があったかもと思っちゃうとね。
まあ皇位はともかく母様みたいにならない為に強い力と権力を手に入れての~んびり過ごすのが夢なんだ。
、、生きてればの話だけど。
あ~あ、今日も無事に過ごせますように。
惟光、いい加減にすぐそこで手を振っている私に気がついてくれ・・・庭石の後にいるわけないだろ。
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