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やりすぎファーマーは重ねて提案する

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「今度は最初から秘密兵器出すんだね」
「また襲われてはかなわんからな。先に味見してもらった方がいいだろう」

 主様がアイテムボックスから袋を取りだし、手を入れた。
 抜いた手のひらにはトウモロコシの餌が乗っている。

「おっ、さすがだな。もう来たぞ。匂いでも分かるのかな?」
「…………っ!? ひぃぃうっ!?」

 ガレスヌーも怖いけど、ガレスクックも怖いっ!
 でかくて怖いっ!
 何匹もの真っ白な巨体が地響きを上げて迫ってくる。

「おや、近付いてくると意外と大きいな。確か腰ぐらいだったと思っていたが……」
「だから、それ絶対に違う動物だって! ガレスクックもみんなこんなだから! うわっ、やだっ、いまみんなこっち見たっ!? う、うちは餌じゃないよー……」

 間近で見るとでかい。
 ほんと、でかっ! 主様の倍は背が高い。
 不気味にコッコォ、とか言いながら囲んだ状態で手の上をじぃっと見つめている。目ざといやつは主様が持つ袋をにらんでいる。
 しかも、明らかにこっちを見下した感じ。
 さすがは悪魔の末裔……感じ悪い。

「うわっ――」

 油断していたら羽を一匹に咥えられた。羽はマナでできているから痛みは感じない。でも、とんでもない力で上下に振られる。
 うちは餌も持ってないのに! これが格下いびりですか!?

「フラム!」

 慌てて対応が遅れたうちより先に、主様が動いた。
 クックに飛び込むようにジャンプし、胸のあたりへ。
 そして、拳を引き絞っての――パンチ!

「グゲェッツ!?」

 剣や刃物を跳ね返す分厚い羽毛もなんのその。拳はガレスクックにダメージを与えたようだ。にぶい音とともに巨体が吹き飛んだ。
 吐き出すように、咥えられた羽が外れ、自由になったうちは主様に抱きかかえられて地面に。
 うわっ、これいいかも。
 悪党から救い出されたお姫様みたいじゃん。
 で、鳥はというと――

「…………コケッ」

 あっ…………息絶えた感じです。
 体を起こそうとしてしたところで力尽きちゃったみたい。たぶん何が起こったのかわかんなかっただろうね。
 そういえば最後に目が合っちゃったんだけど……

 ――モロコシを一口食べたかった、って聞こえたような気がした。
 嘘です。

「フラムに悪さをするやつには罰を与えないといかんからな」
「…………ちょぉっと厳しい罰かも……死んじゃったし」

 うん。
 でも主様に殴られたらこうなるよね。クックの胸のあたり、穴空いてるし……

「待たせて済まない。少しばかりイタズラっこを懲らしめてやったんだ」
 
 主様がニコニコと残りのクック集団に歩み寄っていく。
 ほんの少し、全匹が後ろに下がった音がした。
 まさに『死を運ぶ者』が近づいてくるのだ。クックはようやく危険度を理解したのだと思う。
 どのクックも憐れなほどに態度が違う。
 おい、お前先に殺って食い物を取れよ……とか煽りあっていたかのクックは、全匹が直立不動に変わった。
 まるで調教師と獣のような関係だ。
 今なら「了解です! ボス!」って言いながら火の輪でもくぐりそうだ。

「おっ、お前たちは協力的な目をしているな! 俺には分かるぞ。そんなみんなには、秘密兵器の…………トウモロコシだ」

 まあ、都合の良いように勘違いしてる人もいるけど。
 主様は脅迫をしているとは一切思いもしないらしい。
にこにこと、ガレスクックの前に歩いて行っては一つかみ、隣に移って一つかみ。餌を提供している。
 だが、まだ誰も口を出さない。

「よーっし。食べてくれ」
「コォッ」

 返事可愛いっ! 完全に手なずけるとこんな感じなんだ!
 でかくて怖いけど、懐くと可愛い!
 誰もが、主様の合図でトウモロコシをつつき――
 そして……気絶した。

「おやっ? ヌーと一緒でここの草原のやつは気絶する演技がうまいな」
「…………ほんとに気絶してるんじゃない?」

 そんなにうまかったかと言いながら、主様が一番手前のクックの頭をバシバシと叩いている。
 …………大丈夫かな? 気絶したままバウンドしてるんだけど。
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