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第五章 ウォード覚醒編

第1話 異心同体

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 パミュルと最後の夜を過ごした翌朝、パーティーメンバー全員で最後の朝食を食べる。

 食事中は普段通りの会話をしている雰囲気だったけど、俺とパミュル以外の3人はぎこちないのは、完全に受け止めきれてないからだ。

 そんな食事が終わると、パミュルは改めて3人に声をかける。

「メルローズ、ウォードの心臓の事を知ってからは、かなり気に病んでるみたいだけど、あなたには非はないのよ。私達は護衛の任務を全うしただけ、これから先もハンターとした色々な事が起こるけど、その中の1つだと割りきるのよ」
「でも、護衛を頼まなければ……」
「前を、未来を見て進みなさい」
「はい、パミュルさん、今までありがとうございました」

 メルローズは、パミュルの言葉に返事をしてから号泣した。これからは過去に囚われず前を見て進んでくれるかな?

「サーシャは、私と同じ冷静な性格だから、突っ走るハリエットと考え込むメルローズの様子を見てフォローしてあげて欲しいわね」
「パミュルさんの代わりなんて……でも、頑張ります」
 
 普段は感情はあまり表に出さないサーシャも、この時は号泣していた。

 そして、最後はハリエットに言葉をかけようとすると、パミュルは言葉を詰まらせた。

「ハリエット、あなたは私の家族よ……あなたが居るからこそ、ウォードの心臓になれるの。今までありがとう、ハリエット愛してるわ」
「私も愛してる……」

 2人は抱き合うと、苦楽をともにした家族との別れを惜しんでいた。この様子を見ると俺とパミュルの出した答えが、正しかったのか疑問に思えてしまったそんな時。

「ウォード、そんな顔をしないのよ。今日から私達は生涯をともにするのよ?婚姻なんかよりもずっと強い形で結ばれるんだから、私達以上に固く結ばれることはないの幸せだわ」
「うん……パミュル愛してるよ」

 少し時間を置いてから、みんなでラミュルの家へと向かうと、遂にその時がやってきた。

 ラミュルはいつでも手術を始められる用意をしていたので、家に着くと直ぐに手術室へ向かう。

「お兄ちゃんはこの薬を飲んでベッドに横になって、パミュルさんは私が指示したら心臓に変化をしてくださいね」
「判ったよ」
「えぇ、全てあなたに任せるわ」
「じゃあ、薬が効いて眠りについたら、心臓移植の手術を始めます」

 俺は渡された薬を飲むと、徐々に意識が遠のきやがて眠りに就いた。

 どれだけの時間が経ったのだろう、目覚める前に俺は夢を見てるのか、パミュルが俺に語りかけて来て言葉を交わしていた。

「ウォード、私の心を感じる?」
「これはパミュルの心なの?僕とは別の存在を感じるよ」
「ふふっ、ウォードと繋がった瞬間、私の中にウォードが流れ込んできたのよ。ウォードの身体に2つの心が存在できたのね」
「僕はずっとパミュルを感じれるの?」
「えぇ、私達はどんな時も離れることはないのよ。ウォード愛してるわ」
「あぁ、僕も愛してる。ずっと一緒だよ……」

 俺がパミュルに愛を告げていると、身体が『ドクンッ』と脈打つ感覚を感じると同時に、瞼が開いて意識を取り戻したのだった。
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