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第四章 帰郷編

第71話 望みが叶った時

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◇◇◇パミュル視点

 セナとの別れを済ませてからは、アナスタシアに勉強を教えに出かけるくらいになり、宿に篭もることが多くなった。気になる体調は平行線で、倒れることはないけど胸の痛みは頻繁にあるようで、ラミュルが言うには残された時間はそう長くないらしい。

 私達は常に1人は宿に残して、輝煌星きこうせいとして簡単な討伐依頼をこなしている。私だけは宿に残る時以外は、討伐ではなくラミュルのもとで心臓の構造を学んでいた。その勉強もようやく終わって、ラミュルの知りうる知識は全て教えてもらい、実際に心臓に変化して確認してもらうと、合格点をもらい上手くいくと言われた。

 いつでもウォードの心臓になれるけど、一つだけ心残りがあるの。ウォードと心体ともに愛し合いたい思いがあって、その望みさえ叶えば思い残すことは全くない。

(私が望めば、ウォードは受け入れてくれるかしら……)

 断られた時の考えると中々言えずにいたけど、残された時間を考えると悠長なことは言ってられないので、宿に残る時に思いきって伝えることにした。

 討伐へ向かうメンバーを見送った後は、ウォードはいつも通りベッドで横になっている。私は意を決して全てを伝える為に部屋に入って行く。

「ねぇ、少し話をしたいんだけど大丈夫?」
「うん、改まらなくてもいつでも話してくれて良いんだよ」
「ふふっ、そうね。じゃあ遠慮なく話すわね」

 私はウォードが居ない世界に興味がないと伝えてから、天賦の変化を使ってウォードの心臓になり、ともに生き続けたいという思いを伝えた。

「そんなことが本当に可能なの?できたとしてもパミュルは……」
「私はラミュルのもとで心臓の構造を学んで、実際に変化して確認をしてもらって、可能だと太鼓判をもらったのよ」
「でも……、パミュルは二度と元の姿に戻れず、こうして触れることもできなくなるんだよ?」

 心臓になることが可能だと伝えると、ウォードは悲しそうな表情をしながら、私の頬に触れてから顔を近づけてキスしてきた。

「そうね。こんな触れ合いはできなくなるわね。それでも、私はウォードに生きて欲しいの。だから私のワガママを許して欲しいの……、ダメかしら?」
「ズルい言い方だよ……、セナを失ったばかりなのに、パミュルまで……」

 私の言葉を聞いた後、ウォードは涙を流して下を向いてしまう、私は胸元に抱き寄せて声をかける。

「私は居なくならないのよ?常に一緒に生きていくの。心臓の鼓動が止まるまで……、ウォード愛してるわ」
「パミュル……」

 私はキスを交わした後、遂にウォードと愛を確かめ合うという望みがかなったのだった。
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