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第四章 帰郷編
第64話 ラミュルの診察
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セナの謝罪を受けたパミュルは、表情を全く変えずに淡々とした口調で返事をした。
「全てウォードから聞いたので知ってるわ。そんなことがあったのに、ウォードはアナタを愛してると言ったの。だから私はそのことについて何も言わないわ」
付き合いの長い俺とハリエットには、パミュルが怒ってることに気づいたけど、それを口に出さないのは俺を気遣ってくれたんだね。
「あっ、あぁ……ありがとうございます……」
「私、お兄ちゃんがそんな……」
パミュルの言葉を聞いたセナは泣き崩れ、ラミュルは全く気づかなかったことを悔やむように泣いていた。
「今日は色々とあったから、家族3人でゆっくりと過ごすと良いよ。ちょっとラミュルに相談があったんだけど、日を改めることにするよ」
場の空気を考えると、俺の体調については日を改めて相談しようと思ったので、宿へ戻ろうとするとパミュルは待ったをかけた。
「そんな悠長なことは言ってられないわ。ラミュルさん、ウォードは頻繁に胸の痛みが出て意識を失うことがあるの。あなたにその原因がなにかを調べてもらいたいんだけどいいかしら?」
「判りました。直ぐに診察させてもらいます。お兄ちゃんは私の部屋で詳しく診るから一緒に部屋へきて」
「うん、ありがとう」
パミュルにとっては、俺のことが最優先事項なので、日を改めてような気はなかったみたいだ。そのことを聞いたラミュルは診察をする為に、自分の部屋へと案内してくれた。
部屋へ入ると、ラミュル先生による問診が行われて、色々な質問に答えていった。
「胸の痛みはここ最近なのね。気になるのは護衛の時に受けた胸の傷かな?上着を脱いでベッドに横になってみて」
「うん」
俺が上着を脱ぐと、胸元には刃物で刺された時の傷跡が生々しく残っていた。ラミュルは眉間にシワを寄せながらも、前後両方から傷跡に触れながら触診をする。
「白魔術で胸の状態を確認するのに、私の魔力が体内に流れるから、少し変な感覚を感じるかも知れないけど我慢してね」
「うん、本当に立派な白魔術師になったね」
「ううん、私は落ちこぼれだったの。イナモンナ村でお兄ちゃんを治療した時に、白魔術師として覚醒したから今があるの。じゃあいくよ」
ラミュルの言葉の後に、俺の体内に白魔法が流れ込むと『ピリピリッ』とした感覚が全身を駆け回った。
「はぁ、はあっ……終わったよ。向こうの部屋へ戻っててくれる?診察の結果をまとめから報告をするね」
「うん、ありがとう」
俺はラミュルを残して、みんなが待つ部屋へと戻ったのだった。
§ラミュル視点§
そんな……、お兄ちゃんは生きてることが不思議なほどの重症だった……。
刺し傷は確かに塞がっているけど、心臓の一部に刃物が届いていたみたいで、心筋へのダメージが大き過ぎて、心臓はいつ止まってもおかしくない状況だ。
「お兄ちゃんに死の宣告をすることになるなんて……、こんな辛いことをないわ……」
『すぅ~、はぁ~』
大きく深呼吸をしてから、みんなの待つ部屋へと足を運んだのだった……
「全てウォードから聞いたので知ってるわ。そんなことがあったのに、ウォードはアナタを愛してると言ったの。だから私はそのことについて何も言わないわ」
付き合いの長い俺とハリエットには、パミュルが怒ってることに気づいたけど、それを口に出さないのは俺を気遣ってくれたんだね。
「あっ、あぁ……ありがとうございます……」
「私、お兄ちゃんがそんな……」
パミュルの言葉を聞いたセナは泣き崩れ、ラミュルは全く気づかなかったことを悔やむように泣いていた。
「今日は色々とあったから、家族3人でゆっくりと過ごすと良いよ。ちょっとラミュルに相談があったんだけど、日を改めることにするよ」
場の空気を考えると、俺の体調については日を改めて相談しようと思ったので、宿へ戻ろうとするとパミュルは待ったをかけた。
「そんな悠長なことは言ってられないわ。ラミュルさん、ウォードは頻繁に胸の痛みが出て意識を失うことがあるの。あなたにその原因がなにかを調べてもらいたいんだけどいいかしら?」
「判りました。直ぐに診察させてもらいます。お兄ちゃんは私の部屋で詳しく診るから一緒に部屋へきて」
「うん、ありがとう」
パミュルにとっては、俺のことが最優先事項なので、日を改めてような気はなかったみたいだ。そのことを聞いたラミュルは診察をする為に、自分の部屋へと案内してくれた。
部屋へ入ると、ラミュル先生による問診が行われて、色々な質問に答えていった。
「胸の痛みはここ最近なのね。気になるのは護衛の時に受けた胸の傷かな?上着を脱いでベッドに横になってみて」
「うん」
俺が上着を脱ぐと、胸元には刃物で刺された時の傷跡が生々しく残っていた。ラミュルは眉間にシワを寄せながらも、前後両方から傷跡に触れながら触診をする。
「白魔術で胸の状態を確認するのに、私の魔力が体内に流れるから、少し変な感覚を感じるかも知れないけど我慢してね」
「うん、本当に立派な白魔術師になったね」
「ううん、私は落ちこぼれだったの。イナモンナ村でお兄ちゃんを治療した時に、白魔術師として覚醒したから今があるの。じゃあいくよ」
ラミュルの言葉の後に、俺の体内に白魔法が流れ込むと『ピリピリッ』とした感覚が全身を駆け回った。
「はぁ、はあっ……終わったよ。向こうの部屋へ戻っててくれる?診察の結果をまとめから報告をするね」
「うん、ありがとう」
俺はラミュルを残して、みんなが待つ部屋へと戻ったのだった。
§ラミュル視点§
そんな……、お兄ちゃんは生きてることが不思議なほどの重症だった……。
刺し傷は確かに塞がっているけど、心臓の一部に刃物が届いていたみたいで、心筋へのダメージが大き過ぎて、心臓はいつ止まってもおかしくない状況だ。
「お兄ちゃんに死の宣告をすることになるなんて……、こんな辛いことをないわ……」
『すぅ~、はぁ~』
大きく深呼吸をしてから、みんなの待つ部屋へと足を運んだのだった……
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