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第三章 未知なる世界へ

第84話 気難しい錬金術師

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 俺は意を決して店の中へと入っていく。

「こんにちは」

 店内へ入るが誰も居なかった……なのでもう一度声を掛けてみた。

「こんにちはー!」
「うるせーぞ!」
「良かった。留守じゃなかったんですね」
「あん?ここはガキの来る所じゃねーよ。帰りやがれ!」
「ちょっと失礼じゃないですか?少しはウォードの言葉に耳を傾けても良いんじゃないですか?」
「うるせぇ、とっとと弟を連れて帰りやがれ!」

 いきなり『帰れ』と言われて、ハリエットガキが文句を言ったけど無愛想な顔のまま、『帰れ』と言ってきた。本当に気難しい人なんだなと思ったけど、簡単に引き下がる訳にもいかないので、取り敢えず俺が作った劣化版の魔法鞄マジックバッグと、魔法地図マジックマップを見てもらえないか話しかけてみる。

「僕は錬金術で魔法鞄マジックバッグ魔法地図マジックマップを作ったんですが、見てもらえませんか?」

 少し眉間にシワを寄せたアストンは、『フンッ』と鼻で笑ってから返事をした。俺が子供だから遊び半分で作った物を、冷やかし程度で持って来たと思ってるんだろう思った。

「錬金術を舐めるなよ!理論を理解するだけでも数年必要なんだ。お前みたいなガキがアイテムを作れる訳がないだろう!錬金術を冒涜するな帰れ!」

 俺のアイテムを見る事もなく、自分の思い込みで帰れと言うアストンに、腕は一流かも知れないけど錬金術師としては三流だと思った。

「子供だから?そんな事が理由で、どんな物かも確認せずに帰れと言うんですか?僕が錬金術師なら必ず確認しますけどね。例え未熟な者が作ったアイテムでも、そこに自分では思い付かないアイデアが含まれてるかも知れない。アドバイスする事で、素晴らしい錬金術師へと育つかも知れないって思うから。あなたは僕の思う素晴らしい錬金術師ではなかったようですね」
「なんだと?この職人街でも俺ほどの腕を持つ者はそうは居ないんだぞ!」
「僕は作るだけが錬金術師とは思ってません。素晴らしい技術を後進へ伝える事も、錬金術師の仕事だと思ってます。なのでアストンさんを素晴らしい錬金術師とは思えません」
「なっ……」

 俺の思う素晴らしい錬金術師像を伝えると、アストンは反論できずに黙り込んだ後に、何かを思い出したのか?懐かしそうな顔をしながら口を開いた。

「まさかこんな小僧の言葉で、師匠に言われた俺の欠点を指摘されるとはな……出せ、お前の作ったアイテムを見てやるよ」
「良いですか?未熟なガキが作った物ですよ?」
「あぁ、俺が悪かった。師匠から自分の技術だけを追求するのが錬金術師ではないと、何度も言われてたのを思い出したよ」

 完全に穏やかな表情へと変わったアストンへ、俺の魔力にしか反応しない劣化版だと伝えてから、魔法鞄マジックバッグ魔法地図マジックマップを見せたのだった。
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