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第六章 国造り編

第97話 顔合わせ③

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 ペイトン侯爵邸を後にして、馬車に乗ってファミリアへ戻る車中で、デボラは意を決したように口を開いた。

「あの、ハルカ様は吸血鬼ヴァンパイアなのですよね?私を手に入れた理由は、【キュリアン派】の拠点を知る為ですか?」

 デボラの口から予想外の言葉が出たので驚いていると、その様子を見たデボラは『しまった』という表情になった。

「私のことを吸血鬼ヴァンパイアと聞いたけど、答えはNOになるかな?」

 そのまま種族名を答えようとしたら、私より先にトラパーネが誇らしげに語りだしたのだった。

「ハルカ様は粘性吸血竜神スライムヴァンドラゴンという唯一無二の存在なのです。そしてその眷属である私は吸血鬼ヴァンピールと言って、吸血鬼ヴァンパイアのように陽射しを恐れる脆弱な種族ではない!」
吸血鬼ヴァンピール?そんな存在を我々ヴァンパイアは知りません」

 私が始祖の吸血鬼ヴァンピールなんだから知らないのは当たり前だ。

「私がルヴァール.ドラクロワを吸収して始祖の吸血鬼ヴァンピールになったから、知らないのは当然じゃないかな?」
「御始祖様を吸収?そんな馬鹿な!ドラゴンドレイクに次ぐ最上位の強さを誇るお方なんです。そんな訳がない!」

 私が吸収したと言うと、デボラは取り乱してそんな訳がないと言い切った。確かに普通の状態で遭遇していれば、軽く負けてたと思うけど運が良かったからね。

「あぁ、ドラゴンにやられて瀕死だったからね、簡単に吸収できたんだよ。あれは本当にラッキーだったな~」
「運も実力のうちです。それに地竜アースドレイクを単独倒されたのですから、既に始祖の吸血鬼ヴァンパイアなどハルカ様の足元にも及びません」
「……」

 私がドラクロワを運良く吸収したと伝えると、トラパーネは運も実力だとか、地竜アースドレイクを単独で倒したとか自慢気に言うと、デボラは驚きのあまり言葉を失った。吸血鬼ヴァンパイアの派閥争いなんて知らないし、仲間の元へ戻りたいなら戻っても良いと思った。

「あなたを購入したのは興味が湧いただけで、なんとか派なんて知らないから大丈夫だよ?仲間の元へ戻りたいなら戻ると良いよ?もし敵対するなら滅ぼすだけだからさ!とりあえず奴隷印は解除するから、後は好きにすれば良いよ〚解除リリース〛!」
「……」

 私が奴隷印を解除して自由の身にすると、またしても言葉を失ったまま何も言えずにいた。その様子を見ていたチルはデボラに言葉をかける。

「ハルカ様は奴隷に落ちた私のことを、人としてファミリアに迎えてくださった。あなたを救い出そうともしない仲間の元へ戻るの?」
「っ……」

 何も言い返せずに黙り込むのだった……。
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