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14.village girl-ⅱ

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最早今の状態の彼に、ただの人型では相手にならない。
一刀で二体三体をまとめて叩き斬り、まともに得物を打ち合わせる事なく斬り刻んでいく。表情は浮かんではいないものの、その斬撃には鬼気迫るものがあった。

少女の周囲には天井から剥がれ落ちる七色に輝きを変える石の群れを従え微笑む。

五十程いた群れも瞬く間に斬り倒し、最後の五体を闇色の刃で叩き伏せ、少女へと向かう。

「やっぱり強いね。でもわたしも強いんだよ、ふふ」
くるりとドレスの裾を翻しながら回り、周囲の発光石が列を為し複数の黒檀のような色合いの盾を象る。更には少女の手にも何か構成している。

彼の進路を塞ぐようにプレートのような盾が立ちはだかる。それらを剣で叩き、蹴って除けるが直ぐに起き上がり戦列に加わり、彼も思うように進めなくなる。
その盾の向こう側、右手に何か武器を作り出した少女が歪んだ笑みを浮かべながら、真っ直ぐに彼へと向けて手を伸ばす。

「バイバイ」
カチリと歯車が噛み合うような音がやけに大きく部屋内に響くと、一筋の細い紫色の光線が瞬く間にして伸び、彼の右肩を貫く。

「すごいね、反応できるんだ」
少女の笑い声と軽快な音が混じり、先程の光線が連射される。
彼は後退しつつ辛うじて光線を見切る。

漆黒の盾が分解されていき、再び発光石の列へと変化し少女の周囲を円となり回転する。
彼は静かに瞳を閉じ、そして開く。白目は墨を垂らしたように黒に染まり、瞳孔が銀色の輝きを放つ。

少女は空いた左手にも同様の武器を構築し、くるくると弄ぶ。
「ふうん、何かあるのだろうけどわたしには分からないな。やっぱりもう少し君と長く居た姿にするべきだったかな」
まあいいや、と呟き両手の得物を構える。
彼も剣を握り直し足を踏み出す。

特異な形状の二丁の光線銃が、闇色の軌跡を放つ。
先程の倍の速度で乱発される光弾を彼は冷静に打ち払い躱していく。
数発が同時に命中する軌道であったとしても剣の振り方や身の引き方で見事に躱しきっている。
それでいながら闇の嵐の中を突き進んでいる。

少女の顔から微笑が消えた。
より光線の密度が増す。しかし彼はものともせず斬り進む。

少女の周囲に浮遊していた発光石が変異を始めていた。
複数の石が結合し、黒の人型へと形を変えていく。

またあの黒の群れが出現する……そう思われたが、少し様子が違う。

これまでは老若男女様々な体型の人間のシルエットに、眉間に光る石を埋め込み、そしてシンプルな形状の得物を持つ。シルエットは角ばった裸体に近いもので、髪型や体型などの違いは多少あれど、ほぼほぼ画一的なものだった。

だが、今生み出されている人型は違う。
漆黒に包まれている点は変わらないものの、明確に衣服や鎧が構築されている。そして細部までディテールされ、顔の輪郭や凹凸すらも作り込まれていく。そしてそれぞれが豪奢な武器を備えていた。
人型の数は二十体を越えている。

それから少女は連射を止め、手にした双銃を解体する。

「ふう、ちょっと疲れちゃったからこれでいいかな」
双銃の欠片達から生み出されたのは、片刃剣を構えた剣士の姿。
そう、先程戦ったあの老剣士の影だった。

先頭に立つ数人の戦士達の中には重騎士の姿が。軍勢の中心には神官の女、老剣士の隣にはあの赤髪の槍使い。そして最後尾には魔女の姿も含まれている。
そのどれもが下の階で会った時とは違い、顔まで漆黒の彫像のようになっていた。
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