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非恋愛もの
191213【星の王子さま】君の代わりに死んだ僕
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それはある星の降る夜。
ふと城のバルコニーに出ると、そこには王子が立っていた。
挨拶をするも王子は振り向かず、手すりの前で空を見上げて佇んでいる。
何をしてるのかと尋ねれば、星を見ていると声がする。
「綺麗ですね」と伝えると、そうだろうかと王子は返した。
「この目に、真実ばかりが見えていると思うかい?」
王子は言う。
「目に見えるすべてのものが、本当に答えであると思うかい?」
王子は問う。
「この綺麗に輝く星たちがどんな姿か、どんな状態かなんて、僕たちは知る由もない」
王子はようやく振り向いた。
「そう思わないか?」
星屑のシャワーを浴びて、王子は不適に笑う。
満点の星空の下で、王子は何を思うのだろう。
それはまるで幻のように。
そう感じた途端、王子は消えた。
ふっと消えた。
いなくなった。
――ああ、そうだった。
一年前の今日、"彼"は亡くなったのだ。
泣き虫だった僕と違ってしっかり者だった彼は
この国でただ一人だけがなれる『王子』になった。
そんな彼と生まれた時からずっと一緒だった僕は、彼が大好きだった。
本来存在しないはずの僕を、いつもそばに置いてくれた。
全く同じ顔の僕を、少しも拒まずにいてくれた。
嬉しかった。
楽しかった。
幸せだった。
それなのに、そんな彼を僕は置いていく。
ずっと並んで隣にいたのに。
僕だけが先に進んでしまう。
君の代わりに僕を殺して。
僕は君を置いていく。
僕はちゃんと星になれているだろうか。
ねえ、兄様――
END
ふと城のバルコニーに出ると、そこには王子が立っていた。
挨拶をするも王子は振り向かず、手すりの前で空を見上げて佇んでいる。
何をしてるのかと尋ねれば、星を見ていると声がする。
「綺麗ですね」と伝えると、そうだろうかと王子は返した。
「この目に、真実ばかりが見えていると思うかい?」
王子は言う。
「目に見えるすべてのものが、本当に答えであると思うかい?」
王子は問う。
「この綺麗に輝く星たちがどんな姿か、どんな状態かなんて、僕たちは知る由もない」
王子はようやく振り向いた。
「そう思わないか?」
星屑のシャワーを浴びて、王子は不適に笑う。
満点の星空の下で、王子は何を思うのだろう。
それはまるで幻のように。
そう感じた途端、王子は消えた。
ふっと消えた。
いなくなった。
――ああ、そうだった。
一年前の今日、"彼"は亡くなったのだ。
泣き虫だった僕と違ってしっかり者だった彼は
この国でただ一人だけがなれる『王子』になった。
そんな彼と生まれた時からずっと一緒だった僕は、彼が大好きだった。
本来存在しないはずの僕を、いつもそばに置いてくれた。
全く同じ顔の僕を、少しも拒まずにいてくれた。
嬉しかった。
楽しかった。
幸せだった。
それなのに、そんな彼を僕は置いていく。
ずっと並んで隣にいたのに。
僕だけが先に進んでしまう。
君の代わりに僕を殺して。
僕は君を置いていく。
僕はちゃんと星になれているだろうか。
ねえ、兄様――
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