男性向けフリー台本集

テーマ：別れ 雪女の妻と病弱な夫の話

「旦那様、どうされました？。」



「外は相変わらずの猛吹雪ですよ。しばらくは外に出られそうにありませんね。旦那様も早くお眠りください。この寒さではお体にさわってしまいます。ただでさせここ数日お体を崩しておいでなんですから。」



「そういえばわたくしと出会ったあの日もこんな寒い吹雪の日でしたか。あれから長い時間が経ちましたね…」



「わたくしがあの日のことを忘れるはずないではありませんか。旦那様に命を助けられたあの日を…」



「あの時はわたくし、本当に死んだのかと思いましたよ。なにせ雪山に一人残されたんですから。」



「そこに旦那様が救助に来てくれて…そのまま一緒に暮らし始めたんですよね。」



「しょうがないじゃありませんか。それとも旦那様は身寄りのない可愛い女性を一人村の中に放りだす男でしたの？」



「…相変わらずお優しいですね。それでこそわたくしの旦那様です。」



「…フフフ、顔を赤くして可愛いですね。それではそろそろお眠りになりますか？」



「？どうしました。そんな難しいお顔をして…」



「ある妖怪のお話…ですか？妖怪なんてそんなの…おとぎ話のたぐいでは？」



「雪女…それって雪山に出る美しい女性の話ですよね？愛した男性を殺すとかいう…」



「それで？旦那様はその雪女に会ったことがあると…そうおっしゃりたいわけですか？」



「…なぜその話をしたのです。その話をしなければ…わたしは最後まであなたといられた。あなたと最後まで共に…」



「知ってます。あなたの命はもう長くはないことは、今まで長い時を共に過ごしましたから。それでも…それでもわたしは…あなたのそばに…あなたの命尽きるときまで…あなたの横で…最後まで過ごしたかった！！」



「死ぬ前に君に命を奪ってほしかった？私はあなたの命を奪いたくなかったのに…最後まであなたはわがままなんですね？」



「…山の掟によりあなたの命をもらいます。最後に言うことはありますか？」



「…わかりました。あなたらしいですね。それではお命を…すでに亡くなっていますか。」



「…最後の命すらわたしに奪わせてくれないなんて…最後の言葉が綺麗なんて…本当に…わがままで勝手な人。」



「あなたの体は、あなたが生まれ変わるまで、わたしが氷漬けにしてそばにおかせていただきますね。とわの時を超えてまた会いましょう。愛しています。私の…旦那様。」