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45(最終話)
しおりを挟む「え、いや……そりゃあ…そっちはいつも目の前で隠さず作ってたから…驚きとか無くて…」
それ以前に模型がプレゼントって、とも思ったがさすがに言わずに我慢できた。
「これからも精進するよ、模型もアクセサリーも」
「模型…は…自分のために作ったらいいんじゃないかな」
「え?」
「ん?」
ぱちくりと瞬きをする彼の仕草が天然でコミカルで、私は笑わないように唇を噛み込んで堪え乗り切る。
「…試作品はフリマに出したら売れてね、それで資金繰りして一番完成度の高いのをモモちゃん用にしたんだ」
「へェ…いい趣味ができたじゃない、アクセサリー作家じゃん」
「んー…面倒が無い範囲で頑張るよ」
「ねェ、着けて?」
私はバレッタを源ちゃんへ渡し、くるっと背中を向けた。
「どこに?」
「どこでもいいよ、」
「ん………うん、かわいい。色も合ってるよ」
「ほんと?やったァ、ありがとう♡」
振り返ったら源ちゃんはもう私を見ていなくてガッカリしたけど、彼はなんだか口をもごもごしているので注視してみる。
「僕は…ううん、なんでもない」
「なァに?」
「……幸せ……初恋が実って…幸せだよ」
そう言った源ちゃんの横顔がとても大人っぽく頼もしく見えたので、
「……ふふっ、私も!」
と背中に飛び付いたら彼は人形のように横に倒れてしまった。
「え、源ちゃん⁉︎」
「…刺激が強いよ…モモちゃん…ごめん、見ないで」
彼の顔は耳もセーターの首の後ろまでも真っ赤に染まっていて、背中を丸めたその姿は歳より幼く見えて愛おしい。
「早く…大人になりたいね♡」
「くそぅ…憶えてろよ………嘘だよ、耳はやめて、」
転がった源ちゃんにふぅふぅと息を吹き掛けたりくすぐったり、私達はまだしばらくは年齢相応の睦み合いしか許されない。
「あはは♡ここは?どこが弱いのォ?」
「きゃは、あ、やめてへへ…し、仕返ししてもいいの?」
それでもぐっと近くなったこの関係が嬉しくて楽しくて、親に隠れてはこんな遊びをしたり、時には真面目に将来の話をしたりしている。
「やだァ♡」
「くそ、まじで憶えてろよ!」
私達はまだ揃って16歳、一線を越えるのはだいぶん先…楽しみと言えば楽しみだけれど、他にもやる事が多くてあまり待ち遠しいとか渇望したりとかそんなことはない。
でもそれは私側の意見で…数年後、初めてのチャンスが訪れた時に彼は
「マジで辛かったんだ…何回モモちゃんが夢に出て来たか…お母さんが里帰りする前に…今じゃないとチャンスが無い。何があったって責任は取る……僕のものになって、」
と言って恭しくホテルへ誘ってくれたのだけど…それはまだまだ先、自分たちなりに大人になれたかなという頃の話である。
おしまい
*R-18版、準備してます
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