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しおりを挟む「ねェ、それ…いつできるの?」
「もうできるよ。本当…もう、ほら、これ置くだけで完成、モモちゃんが置いてよ!」
10月に私は16歳になったのだが、今源ちゃんが制作しているのはそのプレゼントだそうで…しかしもうひと月以上遅れていた。
私は小さな人形を受け取って、彼の指示通りの位置へと着地させる。
「はい完成!ムラタ皇路本店、小笠原フロア長付き!」
「あ、うん…すごい」
「いやぁ、遅れてごめんね。やっぱり現存の建築物を作るんなら正確にミニチュアにしなきゃ気が済まなくて」
源ちゃんは私の誕生日にこれを贈ろうと考え付いたものの細部を忠実に再現することが難しく、『おかあさん、そちらのムラタの外観を四方からと、間取り図を写真に撮ってもらえませんか』と母宛にメールを送っていた。
その甲斐あってか大きな建物も駐車場も屋根を外したフロアの様子もしっかりと再現できている。
「うん…なんか…うん、ありがとう…部屋に飾るね」
「このフロア長人形も見て、本当の写真を入れ込んでレジンで硬めたんだ、ほら、おかあさんの顔してるでしょ?」
「ん?んー…そう言えば…そう見えるかもォ」
彼は私がコレを喜ぶと思って作ってくれたのだ。
無碍にはできないのでナチュラルなリアクションでほどほどに相手をした。
「(私以外にこんなのあげたら、すぐにフラれちゃうんじゃないかな…)」
「あとね、これも」
そう言って源ちゃんが取り出したのはティッシュで雑に包まれた塊、手のひらに受け取って窺えば彼は
「開けてみて」
と目を細める。
「…なに…わァ!キレイ!」
そこには鮮やかな花弁を数枚のプレートに閉じ込めたバレッタが入っていて、配色バランスといいプレートの重なり方といい、好みにきゅんと刺さってひと目でときめいてしまった。
「良かった」
「え、もしかしてこれも作ったの⁉︎」
「そうだよ、レジンでね。でも難しいね、模倣じゃなくて1から創造するのって」
「…すごォい…上手…かわいい…」
部屋の照明にかざして透かして、その透明感と中に浮く花の細工をまじまじ見つめていると、
「こっちの方が嬉しかった?」
と源ちゃんは真顔で尋ねる。
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