私達は、若くて清い

茜琉ぴーたん

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「おはよう、源ちゃん」

「おはよ、さっきも言ったよ」

「何度でもいいじゃん…」

 三叉路で停まって車をやり過ごして、漕ぎ出しながら

「…ねェ、私さ、夏休みに兵庫に行ってみようかと思ってるんだ」

と言えば源ちゃんは

「遠いね…泊まりがけか」

と何故か距離の心配をする。

「うん、遠い……お母さんの…こ、恋人?って言うのかな…見て来ようと思ってるの」

「会って話すの?」

「ううん、見るだけ」

「ふーん……それ、僕も行っちゃダメかな」

並走しながら、源ちゃんは寝癖を直した髪をなびかせて私をチラと見た。

「え、時間かかるよ?」

「分かってるけど…モモちゃんひとりじゃ心配だから」

「いいけど…おじいちゃんが許すかな」

「……直談判するよ、ひとりでは行かせられない」

「あそ…保護者じゃん」

「うん。それでいい」

「ふーん?」

 その時は「観光でもしたいのかな?」などと思っただけで別の話題に変わる。





 この1週間は期末考査の結果が科目ごとに返って来ては一喜一憂、夏期講習のスケジュールも発表となり、7月中に兵庫行きすることに決めた。

 終業式の次の日から祝日が重なり4連休になっているのでそこにして、夏休みとはいえ地方の中規模都市はそれほどの人出も無いのかあっさりと3泊分の宿も予約できた。

 さてうちの祖父母への説明だが、源ちゃんが「珍しいのが手に入ったから」とっちゃん秘蔵の日本酒を小笠原おがさわら家へ持ち込んで交渉してくれたのだ。

 美味い酒に目がない祖父は「まァお前なら信用してるから」と兵庫行きを許可してくれて、「何か土産でも買って来い」とお餞別せんべつも包んでくれた。

 かくして我々は地元の駅から関西・兵庫県は皇路オウジ市へ…乗車率120パーセントの新幹線普通自由席車両にて出発するのだった。
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