私達は、若くて清い

茜琉ぴーたん

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「ふう」

私は宿題を済ませてから家着へと着替えた。

 今の身長は165センチ、祖父も祖母も高めだから遺伝の力でいずれは172センチの母を追い越すかもしれない。

「ん」

 クラスの男子が指摘した母の胸…Hカップの爆乳はもはや危険物で、体を使う学校行事では人目を集めて恥ずかしいこともあった。

 幸いというか私はそこまで発達してないけれど、もう今のブラジャーがキツくなってきたのでそろそろ新調しなければならない。

 私もいずれこの体で男の人を受け入れる日が来るのかな、漫画やドラマくらいはたしなむので全く憧れないと言えば嘘になる。

 ただ今の私が同年代の男子と、というのは生理的に無理だし想像しなくても気持ちが悪くなる。


「あ、源ちゃん」

 カーテンを開けた窓の外には隣家・新島宅のバルコニーが見えて、宿題を終えたのだろう源ちゃんが青いレジャーシートを敷いてその上に模型と塗料をコトンと置いた。

 屋根の無いバルコニーの奥は源ちゃんの部屋があって、その窓からたまに勉強する彼が見えたりする。

「源ちゃん、そこで塗ったら壁に掛かっちゃわない?」

「ん、そうかな」

「風向きによってはついちゃうよ」

「でも部屋でやると臭いんだよな」

「ふーん…」

 3メートルほどの間隔で交わされる何でもない会話、昔からこの心地よい空間は私の支えになっている。





 母が兵庫に転勤になった時に「ついて来ない?」と聞かれたが、私は「地元が楽だから」と断った。

 祖父も祖母もいるし本当にそう思ったのがひとつ、ついて行けば母に負担がかかるのではないかと思ったのがひとつ。

 私が憶えている限り、母は何度か恋人を作り家に連れて来た事がある。

 どの人もオラついたライオンみたいなワイルド系の男の人で、私を見て嫌な顔をした人もいたし無視した人もいた。

 私が小学校高学年くらいになるとそれはぱったり無くなって、母に「彼氏いるの?」と聞いても曖昧にはぐらかされるばかりだった。

 まだまだ女性として輝ける年齢、私が居ては恋愛もさせてあげられない…そんな想いも生意気に持ち、私は母をひとり兵庫へ送り出したのだ。


「…あのさぁ、モモちゃん」

「ん、なに?」

「…いや、何でもない」

「変なの…ねェそれ、何の模型?」

「僕の部屋」

「変なの」


 私は源ちゃんの作業が終わるまで見届けて、祖父の帰宅に合わせて夕飯の準備に取り掛かった。
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