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しおりを挟む「分かった。じゃあ…」
「良いよ、私が行く。店長はちょっとワンオペお願いね」
ビニル手袋をパチンと脱ぎ捨てて、真綾はトントンとステップを降りて行く。
そして先頭から最後尾まで人数を数えて、車内の和樹に向かって大きくマルを作って見せた。
「(不足なし、か)」
和樹がひとりで来ている時は、『残り*食』というカードをヒサシに貼り付けて客に示している。
平日ではそうそう無いが、こうしたイベントでは客数の多さから有り難く完売させてもらえるので対策が必須だった。
なるべく情報が皆に行き渡るようにしたいとは考えていたが、単純に人手があると助かるものだ。
「店長、最後尾のお客さんに看板持ってもらうね?」
戻って来た真綾が、知った風に『本日は完売いたしました』と書かれた棒付きプラカードを持ち出す。
「うん、お願い」
「はーい」
カードを持ってパタパタと駆けて行く真綾、最後尾の客に頭を下げてそれを持ってもらっていた。
「……看板娘じゃん」
焼き上がったハンバーグを白米に載せて、和樹はポツリ漏らす。
「ただいまー、あのお客さんで最後にしてもらうね。確実に足りるところで手を打っとかなきゃねー」
「真綾、接客上手になってる」
「え、そうかな…開店から今までで、ちょっと自信が付いたのかもしれないね…えへへ、受付代わるね、いらっしゃいませー!」
ハイになっているだけかもしれないが、真綾は充分に仕事が出来ている。
モジモジしておらず、ハキハキと、しかも笑顔で対応できている。
あまりに酷ければ雑用を頼もうと思っていたが、精肉店の手伝いでも鍛えてもらっていたようだ。
「(成長だな)」
喜ばしいが、少し寂しい。
和樹は唇を尖らせて、残りのロコモコ丼を作り上げた。
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