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しおりを挟む白銀家に上がらせてもらい、和樹は角田と交わした書類をダイニングテーブルの上に置いた。
真綾は和樹の隣に座り、裏返しのそれに目を凝らす。
「まず…こちらは、向こうの要求を聞いた上で、僕が作成したものです」
和樹はまず、大きな金額の書かれた請求書をめくって見せた。
「……ひゃく…」
真綾父は請求額の大きさに釘付けになる。
真綾もその母も、父の反応につられてそこに注目した。
「詳細はこちらです」
和樹は続けて納品書をめくる。
「…萩原くん待ってくれ、金が絡むなんて聞いてないよ…何、型番か?何の…」
真綾の父は、品名欄に書かれたアルファベットと数字の羅列を睨んだ。
真綾母も訳が分からず、小さく「なんなの…」と繰り返す。
ひとり真綾だけが、それが何を示すのか勘付いて青ざめていた。
「和樹くん、これ…私のバイク…?」
「…そう…そしてこれが明細書です」
和樹は真綾に簡単に返事だけして、対面の父へさらに書類を見せる。
「……あのバイクの…真綾が彼氏から譲ってもらったとは聞いていたが…」
「はい。詰まるところこれが角田の目的、要求でした。かつては自分が所有していたバイクを返せ、もしくは金を払え、と。しかし単純な強請りではなくてですね、要は角田は真綾さんとヨリを戻したくて彷徨いていたそうなんです。なので吹っ掛けて来たんですね。バイクを返せば丸く治まりそうなんですが、交渉は支払う方に傾いてしまって…そこは申し訳ありません」
和樹は正直に、頭を下げた。
「いや、全て萩原くんに任せてしまったこちらも悪いと思ってるんだ」
「…ちなみに僕は代理人という体で話しましたが、僕が真綾さんの恋人だとはバレていないようでした」
「それで良い、バレるとご商売にも営業が出るかもしれない。ご実家にも…申し訳ない、おい、真綾もきちんと…」
父は今にも娘へ雷を落としそうだったが、やはり可愛いのだろう言葉に詰まっていた。
その真綾はふるふる震えて、目を泳がせている。
銀行口座の残高や、現在の給与の何ヶ月分かの算段を付けているのだろうと…和樹は冷静に眺めていた。
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××××××××××
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