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しおりを挟む角田がどの程度の悪党なのか把握してなかったので、和樹は真綾の反応から「そんなに暴力的なの?」と不安になった。
働いているなら今の地位は捨てたくないだろうしと考えたのだが、甘かったかもと若干日和る。
「…もし手を出されたら、即通報だ。場所も時間もこっちが指定すれば良い。俺から連絡しとくから」
「和樹くん、ごめんなさい、何年も前のことで、迷惑、掛けじゃっで…」
「良いよ、俺もな、変なアドレナリン出てんだ」
「あどれなりん?」
「可愛い真綾を守りたくて、ヒーローになった気分で気持ちが上がってんだ。カッコつけさせてくれ」
「…和樹くんん………ん?」
ハグしようと身を乗り出した真綾の肩を、和樹は優しく掴んで拒絶する。
クライマックスに向けての盛り上がりラブシーンになりそうだが、懸念を吐き出してしまわねば和樹は落ち着かなかったのだ。
「真綾、クセなんだろうけど、あいつのことずっとくん付けで呼んでんのも腹立ってるから」
自分など『あいつ』呼びになっているというのに、大事そうに敬称をつける真綾が気に食わなかった。
大した意味が無いことは分かっているが、小さなことでも真綾から角田への好意の痕跡を消してしまいたい。
「あ、そっか、ごめん…」
「良いよ、言ったらモヤモヤも無くなったし」
「もう名前呼ばない。だから…あの、ハグしたい…」
「うん」
和樹は手を離し、改めて真綾の柔らかい体を受け止めた。
角田ともこんな風に触れ合ってたのだろう、もっと激しかったかもしれない。
和樹はどうしても消えない真綾の中の元カレを苦々しく思う。
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