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しおりを挟む「真綾!ごめんな、呼び出して」
「ううん、私もきちんと話したかったから」
「あの角田って奴、真綾の家は知らないのか?」
「うん、たぶん…寮生活だったし、教えてないから…」
和樹はとりあえず真綾を車に乗せて、人通りの多い街方面へと出る。
まだ真っ暗でもないし、夕食を外で摂っても良いかと考えていた。
「…別れたのって、何年前?」
「えっと…慶司くんが1こ上で、卒業と同時だから…4年…とか?」
「その期間を、真綾と付き合ってるって思い込むのは…不自然だよなぁ」
和樹は角田の非常識さと異質さを示したつもりだったのだが、真綾はそう捉えなかった。
助手席からがばっと乗り出して、
「続いてないから!マジで、終わってるから!嘘じゃない、慶司くんが何か勘違いしてるだけだから‼︎」
と必死に訴える。
「落ち着け、真綾を疑ってるんじゃなくて、話の通じない奴だったら恐いなって思ったんだよ。元々が大人しいタイプじゃないんだろ?」
「めちゃヤンキー」
「うん、俺はケンカはしたことないし、不良は恐い。暴力も恐いし、話し合いで解決できなかった時に真綾が嫌な目に遭うかもしれないのが恐い」
ボコボコにされたり辱めを受けたり、和樹は映画や漫画からのイメージで不良を語る。
さしずめこのストーリーのヒロインである真綾は、和樹を守るために人質になったり敵のボスの女にならされたりするかもしれない。
目の前で和樹が傷付けられたら、真綾はきっと「私がそっちに行くから、和樹くんは助けて」と身を挺してくれるだろう。
和樹のそんな考えを察してか、真綾は大人しくなって席に座り直す。
「…別れたんだよ、連絡先も消したし」
「うん…地元は違うのか?」
「うん。高校は色んな所から集まってたからね、慶司くんはもっと県北の方からだったかな…家は知らない」
「ふーん」
県道を街方面へと走って、かといって目的地がある訳でもないので和樹は途中で道を逸れた。
大きな川沿いの道路に合流して、オレンジから紫に変わって行く夕焼け空を眺め進む。
「真綾、バイクでうちに来ない方が良い。とりあえずの対策はそれだ」
「…分かった、自転車とかにする」
「それもなぁ…あの人、人から聞いた風に言ってたから、うちの近所に昔の仲間がいるのかもしれない。真綾があのバイクに乗ってた、っていうことを知ってる同級生とかが」
ただでさえ大型のバイクを小柄な真綾が乗り回していれば目立つ。
ナンバーも知られていたらすぐに持ち主の特定は可能だろう。
そして実際、バレている。
真綾は恐怖のためか黙り込み、辛そうな顔で
「…私じゃなくて、慶司くんの知り合いかもしれない…私のバイク、慶司くんから譲り受けた物だから」
と呟く。
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