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「……何で?」

「転生なんて信じるほど純じゃないんだ…カシャが俺と寝たこと無いって、そりゃ調べ不足だ」

「あ、の」

「何が目的だ、何で、いや、どうやって俺とカシャのことを調べた、」


 俺は最初から彼女のことを『カシャ』と呼んじゃいない。

 それは照れるとかそんな意味合いではない。

 彼女は人間であって人間の人格を持っていて、死んだアイツとは別物だと断定していたからだ。


 ホテルに向かう前の会話の時点で、コイツの虚言は明らかだった。

 俺はカシャの機嫌次第で遊ばれてはいたが、「一度も一緒に寝たことが無い」は俺が仕掛けたブラフであった。


「聞け、カシャはなぁ、俺が失恋して落ち込んだ日、慰めるみたいに一緒に寝てくれたんだよ、1回だけな、んな印象深い1回を憶えてない訳ないだろッ」

「あの、」

「あとな、俺に兄貴はいない、カシャなら分かることだろ」

「そうなんだ…名前に『二』が付いてるから、次男かと思っちゃった」

「親父の気まぐれだよ」

「そっかぁ…残念」


 そもそもが転生なんて信じられないのに、首輪なんて物的証拠を見せられてつい悲しみが込み上がったから受け入れてやったんだ。

 彼女が真正のヤバいやつなら暗く人気ひとけの少ない高架上で下手に動けなかった。

 ストーカーに刺されて翌朝まで発見されないなんて悲し過ぎるし。

 せめて話だけ聞いてやって解散しようと思ったのに、財布を盗られ予定外のホテルインになってしまった。

 こうなれば俺もいよいよ腹を括る。

 ことの真相だけでも聞き出してから刺されてやろうじゃないか。


「んで、お前はなに、どこで名前を調べた、あ?お前、何もんだよッ」

「あのッ、ご、ごめんなさいっ!」

ひどい緊張状態なのか、ぶわっと彼女のひたいに腕に汗が滲む。

 形勢は逆転したがこれでは俺がまるっきり悪者だ。

 敵意は無いのか、それでは正当防衛にもならないしこの密室ではやはり男は分が悪い。


「落ち着け、暴力はしないから…水飲むか?」

「うん…」

 俺は彼女の腕を離して起き上がり、小さな冷蔵庫から『Free』とラベルの貼られたミネラルウォーターをほいと渡した。
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