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しおりを挟む「大丈夫か?その…さっきの電車の女子のこととか」
ティッシュを箱ごと取り、春翔の横へ置く。
「…情けないよ、胸を張って神のこと彼氏だって言いたかった…でも無理だった。人目は気になるんだ、やっぱり…」
「春翔、情けなくないって。そんなもんだって。恋愛の趣向をひけらかす必要なんか無い。普通はそんな機会ないんだから」
異性愛者だって、「私は異性が好きだ」と声高に宣言する機会など無いだろう。
同性愛者だって同じだ。
自分の恋愛対象が何だって誰だって、大々的にアピールする必要は無い。
あんな好戦的な女に本当のことを言っても茶化されるだけだろうし、捻じ曲げた噂を流されかねない。
それに男子校におかしな偏見を持っていたし、幸いにも周りの目は絡まれた俺たちに同情的だったように思う。
「それもだし、早いし…恥ずかしい、せっかく神がシてくれたのに…」
「良いじゃん、気持ち良く出来たってことなんだし」
春翔の股間を、皮に気を付けつつちゃちゃっと拭いてやる。
しょんぼり感のあるソレは、今の春翔のテンションと似ているなと思った。
「でも…ごめん、なんか変な方向に頭が回って…色々と思い出しちゃって…」
「色々?」
春翔は座り込んだまま、ベッドを指差す。
振り返るも異常は無し、重ねて春翔は
「右の引き出し」
とベッド下収納に何かあることを示してくれた。
膝立ちで移動してそこを開けば、厚みのある大判の本が2冊収められている。
小学校と中学校の、卒業アルバムだった。
「…見て良いの?」
「うん」
春翔は局部をモロ出しにしたまま、動かずにいる。
俺は上の中学のアルバムをケースから外し、固い表紙を開く。
校歌と校舎の航空写真があって、教員一覧があって。
3年1組から順に生徒の顔写真が並ぶ。
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