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10月・勇者はあどけない
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しおりを挟む10分は走って郊外の高層建てマンションに到着、ここの12階に嘉島の部屋がある。
「わ…ホテルみたい…きれいですね」
「築年数浅いからね…ゆっくりしてよ。…さすがにお腹は空いてないよね?」
「はい。さすがに。お邪魔します」
「ここリビングね…着替えは…お風呂が先か、準備してくるよ」
コートのまま嘉島は風呂場へ向かい、陽菜子は所在なさげにソファーへ座る。
足元のラグがモフモフしていて気持ち良い。
横を見ればキッチンのカウンターにはお酒のボトルが数本、果物と食パンが並んでいる。
テレビ台には大型のテレビ、その横にはアンティークだろうか夜空を凝縮した様な美しい青の天球儀、そして隣には絶えず電動ギアで動く太陽系の模型。
「おっしゃれー……」
天井までぐるりと見渡して陽菜子が呟けばそこに部屋の隅から空気の動く音がして、床を這うロボット掃除機が近付いてきた。
「おぉ…お掃除ロボだ…」
立ち上がりロボの後を追っていると、リビングに家主が戻って来て呆れた様子を見せる。
「…何してんのかねこの子は…。酔いは醒めたろう、さっき買ったの呑む?」
「ありがとうございます、健一さんが呑まれるならご一緒します」
「そう?じゃあ、今日店でも呑んでたやつ。缶だけど」
嘉島は買い出しで選んでいた缶チューハイをグラスに等分して、JKな彼女と乾杯する。
「…さて、眠たくなる前に俺の可愛いギャル子ちゃんを見ておこうか。写真撮っていい?」
「…恥ずかしいですね」
胸ポケットからスマートフォンを取り出しカメラを起動して、まぁまぁと制服陽菜子をアップで1枚とツーショット自撮りを1枚。
そして画面を確認するとソファーに崩れ落ち、男は目元を手で覆った。
「……はーァ、これは…援交だなァ、俺捕まるわ」
「…ですね…」
画面を覗き込んだ陽菜子もそれには同意する。
「店で撮ったのもなかなかだったけどさ、二人きりのは犯罪臭がすごい」
「ですねぇ…」
お疲れ会でも管理職を囲んで撮ったが、そちらはまだ“お店感”があった。
しかし二人きりでソファーをバックにすると、サラリーマンと女子高生のよからぬ事を想像させる仕上がりである。
「学生の時も、こんな感じだったの?」
「髪はもっと伸ばしてましたよ。覚えてないですか?」
「いや、正直“バイトの子”としか。それ良いなぁ。今度見せてよ」
「今ありますよ、撮ったのを転送したやつ」
陽菜子はスマートフォンで過去の写真を見せてやる。
制服姿の陽菜子を含む女子高生三人のプリントシールの写しだ。
「あー、可愛い」
顔立ちは今より少しだけ幼気で、肌艶も元気も一番盛りだった頃…若い陽菜子の更に昔の姿。
「でも覚えてないんだもんなぁ…さみしー」
「ごめんて。でも女子高生の時からそんな目で見てたらそっちの方がヤバイよ。この制服も覚えてないなぁ」
「着替えて行ってましたから」
陽菜子は今着ている制服のスカートを摘む。
「…ほらここ、裾に模様が入ってるでしょう?生徒が短く加工出来ないようにしてあるんです。ジャンバースカートだから腰も巻けません。私立っぽいでしょ」
「!これ、自前かい」
「はい。名前入ってます。今回は買わずに済まそうって」
「はぁ。………なんか、一気にエロく感じてきたね」
嘉島は体勢を起こし、対面に立つ陽菜子をまじまじと上に下にと見つめ出した。
「なんでですか」
「なんでかな。当時の匂いというか、」
そして目元を顰め、ついついスカートの裾を凝視してしまう。
「今のヒナちゃんが着てるっていうのがそそるのかな…」
「…あの、」
陽菜子はたまりかねてスカートの裾を押さえるも、嘉島は
「おいで」
と自身の膝をポンと叩いて、そこに座るよう指示をした。
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