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2023

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 プロポーズから1週間、遼平りょうへいさんは改めてうちを訪ねて、両親に結婚の報告をした。

 お願いではなく、あくまで報告だった。


「遼平くんは、てっきり『娘さんを僕に下さい!』ってするんだと思ってたよ」

宴会で、父はそう言い笑う。

「しようかと思ったんですが、反対されないでしょうから…茶番かなと思いまして」

「自信家だね」

「いえいえ」

 両親は手放しで喜んでくれているし、反対などされるはずもなく。

 体格同様に堂々とした態度は、家族ウケも良く私も誇らしかった。


 遼平さんは先日のあの一件以来、少し強気になった。

 腰の低さは相変わらずだけど、変にへりくだったり過剰にペコペコしたりしない。

 威張るようになったら早いうちに止めようと思っているが、今のところはそんなきざしは見えない。


 来週は遼平さんのご実家へご挨拶に伺う。

 既に面通しもしているから形式上のものだけど、緊張はそれなりだ。


 新居は郊外のマンションを予定している。

 私はバスで通勤できるし、シフトによっては遼平さんの車に便乗させてもらう。

 新しいことがどんどんと決まっていって、楽しみが増える。

 結婚式のことも考えなきゃな、誰を呼ぼうか。

 入社時から私の体型をぶちぶち言っていた専務にも、ここぞとばかりにドレス姿を見せつけたい。


 ちなみになのだが、邑井むらいとはあれから会っていないそうだ。

 まぁ職場が近いというだけだし、互いに避けていればエンカウントしないだろう。

 考え出すとかつては嫌悪感がフラッシュバックしていたそうだが、ハッキリ謝罪させたことで随分と楽になっているとか。

 逆に今では、言いなりになっていた自分への怒りの方が恐怖を上回っているそうで…そこにも遼平さんの成長と自信が見られる。

 ともあれ、あのタイミングで過去を払えたのは偶然にしても非常に良いハプニングだったなぁと、思えるようになった。



つづく
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