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2023
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しおりを挟む食後、遼平さんのお誘いでホテルへと寄ることになった。
彼はここらでも最安値クラスのアパートに住んでおり、とてもじゃないが私を呼べる広さではないそうだ。
お金はあるだろうに何故かと聞けば、「ジムに入り浸ってるから、寝るだけだしもったいない」からなのだとか。
「あずちゃん、邑井さんに…何かされてない?」
「へ?されてないよ…なんか気色悪いから見ないようにしてたし」
「そう…無事に帰れたよな?」
「うん、うちの会社の人たちと一緒だったし、方向は違うんじゃないかな」
ホテルの大きな風呂に浸かって、私たちはそんなことを話した。
遼平さんの胸には、広く青アザが付いている。
邑井は剛力なのだろう、奴に叩かれた痕が痛々しく残っていた。
ちなみに、私の手と膝の怪我も少しお湯が沁みる。
「社名で検索して場所は把握してるんだけど、分団の倉庫があずちゃんの通勤ルートに少し掠ってるんだよね…会わないように、気を付けて」
「心配し過ぎだよ。消防団って他にお仕事してる人が有志でやるんでしょ?」
「まぁね。休日の夕方に火の用心のパトロールしたりね。でも分かんないよ、あずちゃん可愛いから」
「…遼平さんが守ってくれるでしょ?」
可愛げを振り撒いてそう尋ねれば、
「もちろん、全力で!」
と彼は私をお姫さま抱っこで湯船から持ち上げる。
「うわぁ」
「輸送しまーす」
「滑ると危ないよ、遼平さん、」
「今日もこうして抱っこしたけど、あれはドキドキしたなぁ」
「歩けたのに」
「筋力と愛情を顕示したくて」
濡れた体でベッドにダイブして、コロコロと睦み合う。
胸の青アザにそっと触れて、早く治りますようにと念を送った。
「あずちゃん、僕、初めて救助のためにあずちゃんを抱っこして、一層、何と言うか…傍に居たいと思った。こんな所で言うことじゃないと思うんだけど、これがキッカケってどうかとも思うんだけど…」
「うん、」
逆光で表情は読めないけれど、その眼差しはきっと真っ直ぐで揺らぎない。
その頬に触れて、彼の紡ぐ言葉に耳を傾ける。
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