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6…胸を張る
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しおりを挟むボーッと聞き流して、表向きは余裕のある大人ぶって。
数秒が数十分にも感じる不思議な感覚の中、
「美紀さん、着替えて帰りましょ」
朋也くんが私の肩を抱き寄せて試着室へと押し歩く。
「あ、うん」
「もっと反論した方が良いすか?美醜は主観によるんで、そこを議論しても仕方ない感じするんすけど」
「分かるけど、私が言われっぱなしなのに朋也くんが平気ならちょっと悲しいかな…」
「平気ではないっすよ。超絶可愛い格好してるのに、ケチ付けられてめちゃくちゃ怒ってます。口汚く罵っちゃいそうなんで、結構抑えてます」
ぐいぐいと朋也くんは私を試着室へ押し込んで、どさくさに紛れて自分も入りカーテンを閉めた。
「ちょっと、朋也くんは隣でしょ」
「早く脱いで、帰りましょう」
「ちょっ…スタッフさぁん!」
無理に脱がされて破かれても困る、私が叫ぶと衣装係さんがシャッと入って来てくれた。
「堂々とアイツに言い返した方がジブンの評価が上がることは分かってんすよ、でも馬鹿とは話し合いが出来ないんで」
私のドレスが下ろされるのを、朋也くんは興味深そうに眺めてそう言う。
「そ、そんなんでも、一時は好きで交際してたんでしょ…?」
「向こうから告白されまして。OKしたからには好きになろうと努力しましたよ、『馬鹿』は『明るい』とか『口が悪い』のは『ハッキリ意見を言える』とか、良いように捉えて愛せるよう頑張りましたけど…無理でしたね」
「すごい頑張ったんだね…」
するんとインナーも脱がされて、朋也くんもタキシードをするする脱いで裸に近付いていく。
衣装係さんが衣装を受け取って、隣のブースから朋也くんの私服を隙間から渡してくれた。
そうして着替えている間も当然カーテンの向こうには澤條さんがいる訳で、こちらの会話も聞こえていたと思う。
しかしやけに静かで、パートナーさんの声も聞こえない。
「恋人が人道に反することしてたら注意するじゃないすか、ジブンはそうしたいと思ってます。だからアイツを注意するのはジブンじゃなくて彼氏さんっすよ。ジブンがアイツを正してやる義理は無いんすよね」
「確かに」
「これからも空気読まず性格悪い人間として生きて行けば良いんじゃないすかね。前は今ほどアホっぽくなかったと思うんすけど…自己顕示欲と承認欲求がSNSで増長されたんすかね」
「辛辣だねぇ」
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