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2…胸が躍る

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 3分ほどして、矢向くんがロコモコ丼を片手に戻って来た。

「いただきます」

「…美味しい?」

「美味いっすね、混ぜもんが少なくて肉感が強くて良い」

「そう」

私も、ご飯をちみちみ摘む。


 矢向くんとは会社で二人きりでランチをすることはあまり無い。

 彼が入社したばかりの頃は気を遣って誘うようにしていたが、慣れてからはそれぞれに食事をするようにしていた。

 社食で隣になったら会話はしていたけれど、それは偶然であって意図的ではない。

 今日は特に約束などはしていなかったはず、何を目的に私を探していたのだろう。

 まぁ、うっすら分かってはいるのだが。


「元宮さん、あれから1週間じゃないすか」

矢向くんはハンバーグをモグモグしながら、そう問い掛ける。

「な、にからかな」

「言わせるんすか?元宮さんが酔っ払って胸の小ささをひけらかしてジブンが家まで送った日からですよ」

「他の言い方できない?」

「…ジブンが、元宮さんに告った日、ですよ」


 分かっている、もうあれから1週間だ。

 告白をしたのに答えも貰えず宙ぶらりんなのが嫌で、矢向くんは私と話すタイミングを計っていたのだ。

「1週間、だね」

「そろそろ、返事が欲しいんすけど」

「…矢向くんのこと、嫌いじゃないよ、むしろ好意的に捉えてるんだけど…」

「けど?」

矢向くんは目玉だけこちらを見た。

 無気力そうに見えるがちょっと不機嫌さが窺える。

「なんか、告白されたからってそれで気を良くして付き合うのって、不誠実じゃない?」

「普通そうなんじゃないっすか?嫌なら別れれば良いんだし」

「そう、なのかなぁ」

「お互い惹かれ合ってなら同時に恋に落ちてるんでしょうけど、片想いからだとこれが順当なルートだと思うんすけどね」

「確かに…矢向くんは告白されたら好きになった?」

「そりゃ、誠意に報いる努力くらいはしましたよ…ジブンから告白したのは元宮さんが初めてなんで、新鮮っすね…逆の立場はこんな気分なんすね」

 とりあえず憎くないなら交際してみて、好きになる努力はする、と言っている。

 そして一方的な想いを押し付けるのがこんなに不毛なのかとモヤモヤしているみたいだ。

「それは嬉しいんだけど…矢向くんのことは信頼してるし」

「じゃあ、決定的に受け付けない部分がありますか?俺は元宮さんの胸がどうこうの話も聞いてあげられますよ」

「そういうところだよ」

「……コンプレックスも関係ないって意味なんすけど」


 結局、お昼休憩の間に決着は付かなかった。

 我々は時計を確認してサカサカとロコモコ丼を平らげて、会社に戻るのだった。
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