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1…胸に手を置く
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しおりを挟む単なる知的好奇心じゃなかったの、不思議な子だけどそれだけではなかったみたいだ。
「好きでもない女の胸を見たがる変な子だと思ってたよ」
「なら元宮さんは好きでもない男に胸の話する変な女性ってことっすか」
「…お酒も入ってたしぃ」
そこはお互いさまだろう、酔った感覚が残る矢向くんはバツが悪そうに背筋を正した。
そして
「ジブンは、元宮さんのこと、好きっすよ。こんな距離の詰め方するのは想定外でしたけど、仲良くなりたいとは思ってました」
と何故だろう拗ねたみたいな顔をする。
たぶん、ここまでして私がピンと来てないのがムカつくのかもしれない。
「そう…いや、矢向くんって人に興味無さそうだし」
「好きなことにしか興味無いんすよ。まぁ、仲良くなるキッカケは、何だって良かったんすよ…莉子さんにもバレてたし」
「そうなの?」
「ジブン、元宮さんのことよく見てたんで。だから今日も近くに座らせてくれたんす」
「アイツめ…」
送らせたのも莉子の策略か。
私が内心で矢向くんのことをめちゃめちゃ嫌ってたらどうしていたんだ。
「一応、『婦女暴行だけはしないで』って言われてるんで」
「当たり前だよ!」
「合意の上なら良いとは言われましたけど、双方酔ってるから合意とか分かんないですしね…ジブンとしては、元宮さんの部屋と私服見れたから充分っすね」
「変態みたいなこと言わないでよ」
もう私たちの思考からアルコールは抜けている。
合意か非合意かはっきり主張できる。
もし、このまま彼がその体を私の上に被せて来たら。
切ない顔でお願いされたら。
私は拒めるだろうか。
「元宮さん、ジブンのこと、前向きに考えてもらえないすか」
「……うん…」
「嫌いじゃないっすよね?」
「うん、それは。ごめんね、色々と驚いちゃって…あのさ、ど、どこがそんな好みなのかね?」
「…狭いコミュニティで仲良くなって、ってやつですよ。入社当時から良くしてもらってますし、顔の作りも好みっすね。笑顔が特に良い。驚いた時に目がまん丸になるのとか、愕然とした時に口半開きなのも」
「褒め殺しヤメテー…なに、ご褒美とかあげないよ⁉︎」
「充分っすよ。家の匂いとか雰囲気、すっぴんも見たし…さすがにいきなり全部知るのはキャパオーバーというか、勿体無いんで自粛しますけど」
「はぁ、」
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